バリューチェーンにおけるすべてのステークホルダーが持続的な生活を送れるよう、リーダーシップを発揮し、真の「世界一の水産会社」をめざします

マルハニチロの存在意義、パーパスとは

社長に就任してから1年5ヵ月が経ちましたが、この期間は、まさにコロナ禍への対応に日々格闘する期間でした。それゆえ、当社を長く存続させるためにはいかにすべきかを考えてきましたが、その中で改めてマルハニチロの存在意義(パーパス)とは何かを考える機会が増えたと感じています。人は生きるために食糧が必要です。そして、食糧の中でも、たんぱく質は欠かすことのできない栄養素です。私たちは140年にわたり、世界中の人々に安定的に水産物という高たんぱくな食糧を提供してきました。まさにこの世界中の人々に水産物を安定的にお届けすることこそが私たちの存在意義であり、使命ではないかと考えています。

存在意義を考える上で忘れてはいけない点は、企業とは経済価値だけではないということです。そして、企業価値を評価するのは誰かという視点も忘れてはなりません。自らではなく他者が評価するのです。つまり、企業価値を向上させることはステークホルダーの期待に応えることです。ステークホルダーからの支持を得て、いかに企業価値を高めていくべきかを今まで以上に意識するようになりました。

高い収益性や健全な財務体質という経済価値がもっとも重要な基盤であり、経済価値の確保を実現しないことにはその他の取組みにも挑戦できません。この事実を理解した上で、環境価値・社会価値も同じ目線で考えていかないと、企業としての存在意義が薄れていくのではないかと感じています。この点は、投資家の皆さまをはじめとしたステークホルダーの方々との対話からも実感しています。

当社は、140年間にわたり海洋資源をはじめとした自然の恵みで生きてきた企業です。環境価値を重視することは、私たちの生活の糧というべき事業収益そのものに直結するため、それを重視した経営を実践することは当然です。この点も私たちの存在意義だと考えています。

さまざまな場面で「世界一の水産会社」と呼ばれることがありますが、これはおそらく売上高のみを指しているのだと思います。しかし、私たち自身は「世界一の水産会社」とはいかなる存在なのかを、今一度振り返って考える必要があります。地球環境や海洋資源の枯渇にも配慮し、どのような観点から見ても世界一で、かつ売上高もトップとなった時に、真の「世界一の水産会社」と胸を張れると思います。そのような存在に早く達しなければならないと考えています。

持続的成長に向けたリスクと機会

今後の持続的成長を見据えた際、リスクであり機会となりうる点は、人材と技術だと考えています。この両者は、戦略や進め方によって大きな差が生じるからです。毎回、社内の研究所や自社内教育頼みでは、先行する競合他社に追いつくことは不可能です。逆に考えれば、人材や技術において、他社対比で優位に立つことができれば、あらゆるチャンス(機会)を獲得できる可能性が高まるということです。国内においても優れた人材は1社にとどまる時代ではなくなっています。新しい知を受け入れることを可能とする人事体制や制度などを構築し、伝統を継承しつつ外部からの優れた人材が新たに参画しやすい環境を整えていきます。

また「Withコロナ」時代の行動を制限される中においては、健康に留意することは非常に重要です。欧米では、魚=健康食とつながりますが、日本では魚離れの傾向があり、水産物自体の価値を健康の基軸で改めて日本国内向けに訴求する必要性を感じています。そのチャレンジこそが私たちの水産物調達力を生かすことにもつながると考えています。

サステナビリティ経営に向けて

海とともに生きてきた私たちにとって、サステナビリティと経営の統合は当然のことであり、切り離すことのできない関係です。もちろん、環境価値と社会価値を高めるためには短期的にはコストが発生します。違法操業を行わない漁業者との取引、従業員の健康に配慮した労働環境の構築など、短期的なコスト側面だけを鑑みれば経済価値の棄損になりえます。しかし、中長期視点で考えれば、違った景色が見えてきます。資源管理された水産物しか扱っていないという事実は、現在の社会の流れからするとひとつの価値となりえます。

また、フードロスに関して言えば、現在の食品の生産量の10数%はロスに回っているという現実があります。よって、仮にコストが発生したとしても、フードロスを起こさないような商品形態や流通手段を仕組みとして組み立てることができれば、それが価値になり、経済価値と環境価値・社会価値の両立、すなわちサステナビリティと経営の統合が実現できるのだと考えています。海洋プラスチックの問題についても同様です。微細なプラスチックの粒子が魚の内臓に入っていたら、魚の価値とは何なのかということになります。社会の変化は今までとは全く異なるものに変化しつつあります。

サステナビリティと経営を統合するサステナビリティ経営については、戦略面からもアプローチを進めています。現在、次期中期経営計画の策定を進めていますが、並行して重点課題(マテリアリティ)の見直しにも着手しています。現中期経営計画策定時は、中期経営計画を策定した後にサステナビリティ中期経営計画に着手しましたが、今回は、サステナビリティと経営戦略を計画策定段階から並行して検討しています。それぞれの戦略のつながりはもちろん、経営陣における認識のずれを生じさせない意味でも、効果的なプロセスだと考えています。

サステナビリティと経営戦略の統合を実現する上で阻害要因となりえる事項は社内の理解不足などとよく言われていますが、実際はデフレという現実も大きいのではないかと考えています。本当に価値あるものを、価値があると、バリューチェーンに関与するすべてのステークホルダーが認識を共有し、適正な価格をもって取引し、バリューチェ-ンの最上流にいる事業者が適正な利益を受け取る。名実共に「世界一の水産会社」となるために、水産物に携わるすべてのステークホルダーが持続的な生活を送っていけるよう、リーダーシップを発揮していきたいと考えています。これからもマルハニチログループにどうぞご期待ください。引き続き、ご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

2021年9月
マルハニチロ株式会社
代表取締役社長
池見 賢

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