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私たちマルハニチロは創業140年を超える会社です。中期経営計画「海といのちの未来をつくるMNV 2024」の2年目となる2023年度はMNEV※の着実な向上が図られ、順調に進捗していると評価しています。しかしながら、世界的な市場の著しい変化が続いており、厳しい環境下を乗り切る組織力をいかに確立していくかは引き続き、大きな課題です。単に数値上の目標を達成するだけでなく、企業変革を遂行し、次の時代も生き残ることができる、新たな挑戦をする心を備えたマルハニチログループに生まれ変わらなければなりません。

2023年度はこれまでの当社グループのサステナビリティ戦略に関する活動が少しずつ社外に評価されるようになり、消費者志向経営優良事例表彰「内閣府特命担当大臣表彰」、食品ロス削減推進表彰「消費者庁長官賞」などを受賞しました。選定理由にはAI技術の活用やDX推進、クロマグロ完全養殖やサーモンの陸上養殖等の技術開発、フードロス対策などがそれぞれに挙げられていましたが、私としては、当社グループが変革しつつある姿を外部の方々から認めていただけたものだと感じています。当社グループのめざすところは、社会の変化に合わせて、経済的価値だけでなく、環境や人的資本に対する価値、社会に対する価値をつくっていける企業であり、そのような企業でなければ、今後はお客さまから選んでいただけないでしょう。短期的には、経済価値と社会価値、環境価値は一致しないことがあります。新しい漁業・養殖技術の導入には開発コストがかかりますし、再生可能エネルギーへの切り替えもコスト増につながります。しかしながら、これからの世の中でマルハニチログループがお客さまや株式市場から選ばれるには、当社グループを取り巻く世界の環境をより長期的な視点で捉え、明確化した2027年長期経営ビジョンの実現が必要不可欠だと私は思っています。

当社グループが特定した9つのマテリアリティの中でも「生物多様性と生態系の保全」(KGI2030年のありたい姿:取扱水産資源について、資源枯渇リスクがないことを確認している)、「安全・安心の食の提供」(KGI2030年のありたい姿:人々が安心できる食を世界中の食卓に提供している)、のふたつは当社の事業継続に直接、影響し、提供する社会価値に大きく関連していると認識し、継続して力を注いでいます。地球温暖化によって水産資源の枯渇リスクは年々、高まっています。現状では、北米、北欧、オセアニアなど、先進的な資源管理を行ってきた国々では、資源の継続性が担保され、水産業も伸びています。一方、日本では、ある部分は国の管理、あるいは地域の自主管理など管理母体が分断され、データに基づいた科学的根拠にもとづく資源管理が実現しておらず、そこが大変大きな課題だと感じています。私たちは、世界水産大手8社で構成されるSeaBOS(シーボス)に参画し、水産会社と科学者が一緒に議論をすることで、科学者と企業間でのギャップを認めた上でアライアンスを組み、参加各社が自国での取組みを推進し、発信するミッションに取り組んでいます。我が国の資源管理は世界各国と比べて遅れており、今まで以上に日本政府や漁協、大手水産会社など、多くのステークホルダーを巻き込んで「日本の水産資源管理はこれで良いのか」と議論を投げかけながら、引き続き、積極的にSeaBOS における対話に参加していきます。国内の流通においても、サンマやイカ、アジなど大衆魚といわれる魚種の供給が著しく減少しており、気候変動による資源リスクも高まっていることを実感します。日本が科学的根拠にもとづく資源管理を早期に実現できるよう働きかけを強化していきたいと考えています。

マルハニチログループのブランドステートメント「海といのちの未来をつくる」に掲げたとおり、地球の健康と人々の健康に両輪で取り組むために挑戦していくことが次の時代に向けた当社グループの在り方において最重要テーマであると認識しております。ステークホルダーの皆さまには、マルハニチログループの未来に大きなご期待をいただきたいと思います。

2024年9月
マルハニチロ株式会社
代表取締役社長
池見 賢

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