マルハニチログループではイノベーション創出に向けた知的資本戦略の実践に向けて、その中心となる知的財産委員会を設置し、経営戦略に即した適切な出願・活用戦略、ブランド保護を含めた活動を展開しています。

イノベーション創出に向けた戦略的な研究開発の実践

マルハニチログループは創業以来、水産資源を事業の核の1つとして事業展開をしてまいりました。しかしながら、天然の水産資源は枯渇の一途をたどっており、継続的な水産資源の提供は当社グループの使命であると認識しています。

この課題に対応するべくイノベーションを加速していくため、当社グループでは水産資源分野を中心に研究開発費を増額してきました。研究開発の成果として、養殖や水産加工に関する技術を中心に開発を進めています。当社グループでは単に水産資源の継続的な提供だけでなく、競合他社と差別化したより付加価値の高い養殖魚として、じゃばらマグロ、機能性表示カンパチ、くちどけのよいブリなどを開発してきました。利益水準を高めつつ、水産資源を保全するために、高付加価値化は重要な観点であると認識しています。

分野別の研究開発費の推移(マルハニチログループ)
品質教育研修の全体像

近年、養殖現場では人件費の高騰、人財確保も重要な課題となっています。AI 活用も含めた養殖現場の自動化・効率化を推進することで、作業者の負担軽減とともにコスト低減に注力しています。水産加工技術としては、希少商品であるやわらエビの代替品開発などユニークな取組みも進めています。単に水産物を販売するだけでなく、より高い付加価値を生み出す水産加工技術力が当社の強みです。

技術開発にあたっては、必要に応じて社外との連携と技術の内製化を使い分けることで、技術開発のスピード確保と社内における技術の蓄積の両立をめざしています。

代表的なイノベーション

技術 概要
じゃばらマグロ 和歌山県北山村特産品のじゃばらを配合した飼料により、鮮やかな身色を保持できる養殖マグロを育成する技術。北山村のふるさと納税返礼品に採用
くちどけのよいブリ 松坂牛やイベリコ豚と同じ脂肪酸が多く含有する、風味劣化を生じにくく、くちどけのよい養殖ブリを育成する技術
魚病治療薬 養殖ブリにおいて商品価値を著しく下げるベコ病の治療薬を林兼産業(株)、東京大学との共同で開発
尾数計測装置 AIを用いた画像解析により養殖魚の尾数を正確に計測する装置を(株)シンコムと共同で開発
防鳥生け簀 給餌の邪魔をする鳥の接近を阻害する養殖マグロ用大型生け簀を開発
魚体測定方法 魚を解体することなく腹部の厚さを測定する技術を開発
やわらエビ代替品 希少商品として流通している、殻ごと食べることができる脱皮直後のエビの代替品に関する技術

知的財産の蓄積

開発した技術に関しては特許出願を行い、権利化により事業実施の継続性担保と競合他社との優位性確保に努めています。2017 年度との比較で、保有特許数が養殖関連については7 倍に、その他水産関連でも約1.5 倍に増加し、これに伴い特許価値を示すパテントスコア※も大きく増加しました。

今後は技術開発、権利化の流れを冷凍食品やファインケミカルといった他分野にも広げていくことが重要です。また、特許権だけでなく、戦略的な商標権の取得といったブランドの観点も含めた知財ミックスへの移行も今後の課題と認識しています。

マルハニチロ(株)保有特許の件数とパテントスコアの推移(2017年度と2021年度の比較)
マルハニチロ(株)保有特許の件数とパテントスコアの推移(2017年度と2021年度の比較)

※パテントスコア:(株)パテント・リザルトが提供する特許の注目度の指標であり、出願人の権利化意欲、先行技術としての審査官の認知度、競合他社からの注目度から算出される。

知的財産保護体制の整備

開発した技術を保護するため、当社グループでは知的財産保護体制の整備を進めています。2018 年度に経営企画部内に専門組織として知財グループを新設し、その後も継続的な増員により体制強化を図ってきました。専門人財の育成にも力を入れており、知財グループのうち弁理士または知的財産管理技能士1級を有する者の比率は2022 年度末で50%となっています。

知的財産の社内浸透とインセンティブ強化

全社的な知的財産に係る意識・知識浸透の取組みとして知的財産研修会を毎年実施しています。当初は事業部門、研究開発部門を中心としていましたが、2021 年度以降はウェビナー形式での開催を本格的に推進したことで、グループ企業や地方拠点の担当者の受講も増加して受講者の幅も大きく広がり、2018 年度の143 名から2021年度、2022年度はそれぞれ633名、873名(延べ)へと段階的に増加しています。また、2021 年度からは人事部主催の新入社員研修の一環として基礎研修も開始しており、配属部門にかかわらず知的財産の重要性を浸透する取組みも推進しています。

また、特許出願の際に支給している発明報奨金について2 度にわたって増額改定しました。これにより、発明者1人あたりの報奨支給額が継続的に増加するとともに、新規の出願数も増えていることから、インセンティブ強化に有効に機能していると考えています。

知的財産研修会の受講者数の推移
知的財産研修会の受講者数の推移
発明者1人あたりの報奨支給額の推移
発明者1人あたりの報奨支給額の推移

ブランド戦略に沿った商標の活用

当社では特許権やノウハウはもとより、ブランド強化に関する取組にあわせてブランドの育成に必要となる商標権による保護活用も推進しています。

当社グループを示す「 MARUHA NICHIRO GROUP」については、当社グループ企業で使用を推進し、使用態様はガイドラインを定めて統一した発信をすることで当社グループのブランド強化を推進し、事業活動への支援を図っています。

ブランド戦略に沿った商標の活用

2007年の経営統合から10年を契機にブランディングプロジェクトを開始し、ブランドステートメント「海といのちの未来をつくる」を設定しました。こちらについては商標登録(登録第6002772号)し、保護が必要となる各国でも出願・登録を進めました。ブランディングプロジェクトの内容が評価され、INTERBRAND社の主催するJapan Branding Awards 2021で受賞されました。
マルハニチロ – Japan Branding Awards | インターブランドジャパン (interbrandjapan.com)

一般社団法人日本フードアナリスト協会が主催する「第67回ジャパン・フード・セレクション」において、最高評価である「グランプリ」を受賞した冷凍食品「五目あんかけ焼そば」「極旨!ももから揚げ」で使用している『新中華街』も登録商標(登録第5961425号)として保護をしています。

冷凍食品「五目あんかけ焼そば」「極旨!ももから揚げ」

『新中華街』シリーズのなかでも「横浜あんかけラーメン」については、当社が当該商標を使用した結果、「横浜あんかけラーメン」が広く知られていると認められ(商標法第3条第2項)、登録された商標です(登録第5610708号 ) 。

「横浜あんかけラーメン」

商品に関することのみではなく、サステナビリティ戦略の一環として行っているクリーンアップ活動「Make Sea Happy!」についても、他社とコラボレーションすることを考慮し、商標として登録(登録第6339716号)しております。

㈱ヤヨイサンフーズ
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