健康価値創造と持続可能性に貢献する食の提供
基本的な考え方
本物・安心・健康な「食」の提供を通じて、人々の豊かなくらしに貢献することはマルハニチログループの理念です。この理念の実現には、消費者の健康価値向上へ貢献し、社会課題・環境課題に配慮した持続可能な「食」を消費者に安定的に提供し続けることが必要不可欠だと考えています。マルハニチログループは、健康価値創造と持続可能性に貢献する「食」を提供し続けることで、お客さまの豊かなくらしに貢献していきます。
マネジメント体制
マルハニチロにとっての、「健康価値創造に貢献する食」、「持続可能性に貢献する食」についての定義・基準を策定し、グループ内に浸透、取扱いを推進するため、2022年度に健康価値創造と持続可能性に貢献する食の提供プロジェクト(以下、「健プロ」)が発足しました。「健プロ」はプロジェクトオーナーをマーケティング担当役員、プロジェクトリーダーをマーケティング部 部長が担い、メンバーとして7つのユニットの企画担当者(漁業・北米・水産商事・加工食品・ファインケミカル・食材流通)と、消費者志向推進部、中央研究所、開発部が参加し、事務局をサステナビリティ戦略部とマーケティング部が務めています。
2024年度からは健プロの活動を評価いただく社外有識者として夫馬 賢治氏と津金 昌一郎氏を迎え、定期的なフィードバックをいただいています。

前中期経営計画(2022年度~2024年度)結果
マテリアリティ | 健康価値創造と持続可能性に貢献する食の提供 | ||
---|---|---|---|
KGI(2030年のありたい姿) | 健康価値創造と持続可能性に貢献する食品トップ企業としてブランドを確立している | ||
KPI | 健康価値創造と持続可能性に貢献する製品基準確立と2030年度目標の設定(マルハニチロ(株)) | 健康価値創造と持続可能性に貢献する企業という社外評価方法構築(マルハニチロ(株)) | |
ターゲット | 目標年 | 2024 | 2024 |
目標値 | - | - | |
前中期経営計画の自己評価と課題 | 進捗結果コメント | 製品基準の確立と20230年度目標の設定が予定通り完了 | 社外評価にはESG評価を活用することが決定 |
自己評価※ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | |
責任部署 | 健康価値創造と持続可能性に貢献する食の推進プロジェクト |
※★★★★★︓2030年度KPI達成済み、★★★★☆︓2030年度のKPI達成に向けて先⾏して進捗
★★★☆☆︓2024年度KPI達成済み或いは2030年度KPI達成に向けて計画通り進捗、★★☆☆☆︓KPI達成に向けて遅れ気味
中期経営計画(2025年度~2027年度)KGI・KPI
マテリアリティ | 健康価値創造と持続可能性に貢献する食の提供 | ||
---|---|---|---|
KGI(2030年のありたい姿) | 健康価値創造と持続可能性に貢献する食品トップ企業としてブランドを確立している | ||
KPI | 各製品基準を満たす製品売上⽐率 (マルハニチロ(株)) |
健康価値創造・持続可能性が含まれるESG評価 (マルハニチロ(株)) |
|
ターゲット | 2027年度目標 | ー | ー |
2030年度目標 | 適切な食塩摂取基準合致製品65%以上、 適切なたんぱく質摂取基準合致製品45%以上、 良質な脂質摂取基準合致製品20%以上、 GSSIで認証された水産認証製品(サステナブルシーフード)15%以上 | ESG評価の向上 | |
責任部署 | 健康価値創造と持続可能性に貢献する食の推進プロジェクト |
マルハニチロの取組み
健康価値創造と持続可能性に貢献するプロジェクトの目指す姿

健康価値創造に貢献する栄養
主な取組み
マルハニチロ(株)は以下の取組み方針で健康価値創造に貢献する栄養の提供を推進します。
- 消費者のニーズに合った適切な形状、かつ入手可能な価格の商品の多様なチャネルでの提供を通じて、栄養価の高い食事の機会を提供します。
- 消費者が製品に含まれる栄養情報を入手しやすいよう、わかりやすい法的義務栄養情報表示はもちろん、追加の情報開示も行います。
- 発信される全ての情報は科学的な根拠に基づくものとし、マーケティングコミュニケーションが正確な商品特性に基づくものとなるようにします。
- 設定する自社基準などは外部の基準(可能な限り公的な基準)に準拠したものとなるようにします。
- 日本における健康課題と関係の深い栄養課題(以下の4つ)について、栄養などに関する自社基準を設定します。自社基準を満たす製品の売上比率目標を設定し、販売を拡大することで課題解決に貢献します。
マルハニチロが重要視する栄養課題
- 適切な塩分摂取(過剰な塩分摂取とならないよう、製品の分量や表示を含めた提供方法を検討します)
- 適切なたんぱく質摂取
- 良質な脂質摂取
- 栄養格差改善につながる食(介護食)の提供
KPI設定の考え方・基準・進捗状況
日本政府が主催する「東京栄養サミット2021」のアジェンダで、当社が「食関連産業のイノベーションの推進」、「個人の栄養に関する行動変容の促進」の2つのアクションプランへ賛同したことをふまえ、「適切なたんぱく質摂取」、「適切な食塩摂取」、「良質な脂質摂取」、「通常の食事が困難な方への栄養摂取(栄養格差改善)」の4つを評価項目としました。
当社製品は既に健康価値を生み出している製品が多くあること、現状の貢献度を改めて認識したうえで、KPIは全体売上に占める対象製品の割合を増やすことを目的に対象製品売上比率としました。売上比率をKPIとすることで、事業活動を通した経済価値と社会価値創造が連動することも考慮しています。
基準 | 2030年度KPI | |
---|---|---|
適切な食塩摂取 | 1食あたり3g 未満、または100kcal あたり0.46g未満※1 | 対象加工食品のうち基準を満たす製品売上比率65%以上 |
適切なたんぱく質摂取 | 100kcalあたり4.1g以上、または100gあたり8.1g以上※2 | 対象加工食品のうち基準を満たす製品売上比率45%以上 |
良質な脂質摂取 | 1 食あたり350mg以上、または1g あたり1mg以上※3 | 対象加工食品のうち基準を満たす製品売上比率20%以上 |
栄養格差改善 | 咀嚼・嚥下困難な人への栄養摂取を支援する食品の普及 | 対象製品の販売金額を2022年度比190%以上 |
- ※1 スマートミール基準の“ ちゃんと”に基づき設定した自社基準
- ※2 消費者庁表示基準の“ 含まれる”に基づき設定した自社基準
- ※3 厚生労働省2020年食事摂取基準n-3系不飽和脂肪酸摂取目安量に基づき魚由来n-3系不飽和脂肪酸の摂取目標を設定した自社基準
2024年度の実績値と2030年度目標

具体的な取組み
従業員が進捗状況を常に確認できるダッシュボードを作成しました。また、社外への健康・栄養情報発信を目的として、2025年4月にオウンドメディア“Oishiine!!" (おいしいね!!)のリニューアルを行いました。“Oishiine!!"では「健康はおいしい。」をコンセプトに、お客様との双方向コミュニケーションを通じて、当社の取組みを伝えていきます。2024年7月には当社が参画する厚生労働省「健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ(詳しくは厚生労働省「健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ」への参画へ)」へ「適切な食塩摂取」を主題とした行動目標、評価指標を提出しました。今後は全体マーケティング戦略に基づき、健康価値創造製品の取扱拡大を進めていきます。

産学官など連携の取組み
厚生労働省「健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ」への参画
2023年1月、厚生労働省「健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ」へ参画しました。本イニシアチブは、産学官などの連携・協働により、誰もが自然に健康になれる食環境づくりを展開するものです。参画事業者はSMART形式※の行動目標と評価指標の設定が求められ、より効果的な方策を、参画事業者同士で検討・協働することが可能です。イニシアチブが掲げる栄養課題の1つである「食塩の過剰摂取」の改善に向けた行動目標と評価指標の設定は、当社が考える「健康価値創造に貢献する食」の方針と一致しています。当社も参画を通じて、日本人の食生活の中で、特に食塩摂取に関する行動変容を促していきます。
※SMART形式:Specific(具体的に)、Measurable(測定可能な)、Achievable(達成可能)、Relevant(適切な)、Time-bound(時間制約がある)の5つの要素を含んだ目標設定の指標
有識者メッセージ

教授
津金 昌一郎
プロフィール
医師、医学博士。前・医薬基盤・健康・栄養研究所理事兼国立健康・栄養研究所長。元・国立がん研究センター社会と健康研究センター長。
「持続可能で健康的な食」の提供は、人類の未来に不可欠な課題であり、食品企業も積極的に取り組むべき社会的責任です。欧米では、肥満や虚血性心疾患が深刻な健康課題で、エネルギーや飽和脂肪酸の制限などが重点対策です。一方、日本では、やせや脳卒中が主な健康課題で、低いエネルギー・たんぱく質摂取や和食ゆえの塩分過多などが影響しています。また、虚血性心疾患死亡率が国際的に低いことには、魚介由来の不飽和脂肪酸が摂れていたことにも起因し、近年の魚食離れが懸念されます。これら背景の中、マルハニチロが取り組む減塩、適切なたんぱく質、良質な脂質、栄養格差改善の4つの取り組みは、わが国の健康課題に即したもので、健康寿命延伸に資する社会貢献と考えます。
持続可能性に配慮した食
主な取り組み
世界人口の増加に伴い、食糧供給システムによる環境負荷は増加し続けています。マルハニチロ㈱は持続可能な漁業及び養殖業により生産された認証水産物の売上比率を高めることで環境課題解決に寄与します。
KPI設定の考え方・基準・進捗状況
世界で流通している水産物には、天然水産資源の枯渇、養殖による環境破壊、IUU 漁業への関与など多くのリスクがあると考えられています。リスクへの対策に加え、今回、“持続可能性に配慮した食” の価値提供として、GSSI で承認された国際的な認証を取得した持続可能な漁業および養殖業により生産された水産物を、KPIを定めて積極的な取扱いを推進することとしました。健康価値創造と同様に全体売上に占める認証製品の売上比率をKPIとして、取組みを推進します。

持続可能な認証製品の評価項目
基準 | 2030年度KPI | |
---|---|---|
持続可能な認証製品売上比率 |
GSSI認証水産物※4 |
水産製品・水産物を含む全製品の持続可能な認証製品売上比率15%以上 |
※4 Global Sustainable Seafood Initiative で承認された認証水産物(MSC認証、ASC認証、BAP認証、MEL認証等がある)
2024年度の実績値と2030年度目標

具体的な取組み
当社は事業活動を通してお客さまに持続可能な水産物を取扱う意義をしっかりと伝えていくとともに、一般社会に広く伝達し、啓蒙していくことが必要と考え、新聞・雑誌などへの記事掲載や講演会での講演などに積極的に取り組んでいます。2024年8月開催の「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー2024」では持続可能な認証商品「サステナブルシーフード」についての展示のほかに、当社社員とMSC ジャパンにより対談形式のセミナーを実施し、さらに翌年2025年8月開催の「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー2025」でもサステナブルシーフードの展示に加えて、当社社員とBAP認証を運営するグローバルシーフードアライアンス(GSA:Global Seafood Alliance)による対談形式のセミナーを実施し、水産業界が現状抱える課題について討議しています。2025年8月からはサステナブルシーフードの専用カタログの配布を開始し、より多くのお客さまへサステナブルシーフードについての情報発信が可能となりました。今後も様々な情報発信を通じて、サステナブルシーフード市場の拡大に努めていきます。
サステナブルシーフード専用カタログ
https://www.maruha-nichiro.co.jp/products/ebook/100/

サステナブルシーフードパネル

有識者メッセージ

代表取締役CEO
夫馬 賢治
プロフィール
ESG分野で複数の企業の社外取締役やアドバイザー委員の就任。環境省、農林水産省、厚生労働省、経済産業省等の委員も歴任。書籍や講演も多数。
マルハニチロが掲げている「健康価値創造と持続可能性に貢献する食の提供」は、水産関連セクターにとって極めてマテリアルなテーマと言えます。2024年に設定された2030年度目標は、2025年度には人事評価制度に組み込まれるとともに、従業員に進捗状況を常に可視化するためのダッシュボードも開発されました。これらの開示から、マネジメントの着実な進化が伺えます。世界的に、健康的な魚食の需要が高まるともに、環境変化や乱獲による不漁問題も深刻化しています。大手流通事業者として、持続可能な魚食のあり方を、国内外の水産事業者と消費者に提唱していっていただくことを期待しています。それが御社の事業の持続可能性と企業価値を高めることにつながっていくと思っています。