基本的な考え方

海をルーツに140余年の歴史を持つマルハニチログループは、かけがえのない自然の恵みとその生命力に支えられて成長を続けてきました。

世界の人口増加と新興国の経済発展などによって、魚食需要は今後も増加することが確実です。需要への対応と水産資源の保全という要求に応えるため、事業活動を通じて持続可能な海洋環境の保全に貢献していきます。

2030年のありたい姿(KGI)と達成目標(KPI)

新中期経営戦略「海といのちの未来をつくる MNV 2024」の策定に伴い、2022年3月28日付で新たな9つの重要課題(マテリアリティ)に見直し、各マテリアリティについて2030年のありたい姿(KGI)と達成目標(KPI)を策定しました。2022年度からは策定した目標に取り組み、2030年のありたい姿をめざしていきます。

マテリアリティ 生物多様性と生態系の保全
KGI(2030年のありたい姿) 取扱い水産資源について、資源枯渇リスクがないことを確認している
KPI 取扱水産物の資源状態確認率(グループ全体) 生物多様性リスク評価実施(国内グループ) 養殖場の認証レベル管理の実施(国内グループ)
ターゲット 目標年 2030 2024 2024
目標値 100%
2023年度
進捗
進捗結果と
コメント
取扱水産物の資源状態確認率81.8% TNFDフレームワークに基づく生物多様性リスク評価の実施中 養殖場の自主管理基準に基づきグループ内養殖場の管理実施中
自己評価 ★★★☆☆ ★★★☆☆ ★★★☆☆
責任部署 マルハニチロ(株)経営企画部
サステナビリティ推進グループ

責任者メッセージ

マルハニチロ(株)経営企画部 サステナビリティ推進グループ長、水産資源推進室長 佐藤雄介
マルハニチロ(株)経営企画部
サステナビリティ推進グループ長、水産資源推進室長
佐藤雄介

世界中で漁獲・養殖される水産物を中心とした自然の恵みに支えられてきた当社グループにとって、生物多様性と生態系の保全は最も重要な社会・環境問題です。2030年のありたい姿である“取扱水産資源について、資源枯渇リスクがないことを確認している”状態とするために、水産資源調査による天然水産物の資源状態の確認に加え、2023年度より養殖場の認証レベル管理、TNFDフレームワークに基づく分析を開始しました。養殖場の認証レベル管理を実践することで、マグロ等認証規格のない魚種の養殖場においても環境や生物多様性保全に配慮した養殖事業の実現につながりますし、TNFDフレームワークに基づいて依存度・影響度を分析することにより、気付きづらいリスクや機会の発見にもつながると考えています。
当社グループの取組みはまだまだ道半ばです。2030年のありたい姿を実現できるよう、現在の取組みを継続実施していきます。

マルハニチロの取組み

第2回水産資源調査の実施

2019年から水産資源調査を開始し、2021年度の1年間に当社グループ外から調達した原料、製品を対象に第2回水産資源調査を実施しました。事業活動において取り扱う水産物の資源状態を把握した上で、課題を認識し、改善に向けた取組みを進めることが生物多様性と生態系の保全に通じるとの考えの下、今後も同調査を継続的に実施し、2030年のありたい姿の実現をめざします。

第2回水産資源調査

調査目的
  1. 当社グループの取扱水産物の全体像把握(魚種、エリア、数量など)
  2. 取扱天然水産物の資源状態・管理状態の評価
  3. KGI達成に向けて、課題の抽出と対策の検討
調査方法
実施年度 第1回(2020年度) 第2回(2022年度)
対象年度 2019年度 2021年度※1
調査対象 グループ48社
(国内31、海外17)
グループ42社
(国内25、海外17)
分析主体/
参照データ
SFP※2/FishSource※3 SFP/FishSource
評価方法 当社独自の基準 ODP※4手法の基準
評価基準 資源状態に心配なし
 FishSourceの5つのスコアが平均6以上
 かつ、スコア4が6以上

資源状態に心配あり
 FishSourceの5つのスコアが平均6未満
 または、スコア4が6未満

データ不十分
 FishSourceの5つのスコアに欠損があり
 評価ができない場合
Well managed(優れた管理がなされている)
 FishSourceの5つのスコアがすべて8以上

Managed(一定レベルの管理がなされている)
 FishSourceの5つのスコアがすべて6以上

Needs improvement(改善を要する)
 FishSourceの5つのスコアに6未満がある場合

Not scored(評価不可)
 FishSourceの5つのスコアに欠損があり
 評価ができない場合
  • ※1国内と一部海外は2021年4月~2022年3月、その他海外は2021年1月~12月
  • ※2持続可能な漁業のためのパートナーシップ。FishSource※3を管理する米国のNPO。正式名称はSustainable Fisheries Partnership
  • ※3各国行政機関の水産資源情報をもとに開発された国際的な水産資源に関するデータベース
  • ※4Ocean Disclosure Project。SFPにより運営される、水産物調達の透明性を高めることを目的とした情報開示プラットフォーム
調査結果
水産物全体
当社グループ全体の水産物取扱状況

当社グループ全体の2021年度の取扱実績は、原魚換算で約170万トンとなり、前回調査結果の176万トンに対して6万トンの減少となりました。これは2021年の世界の漁業・養殖水産物生産量の約0.8%に相当し、取扱魚種は学名で天然魚337種、養殖魚83種におよびました。一方、分類不可は飼料原料由来を中心に約12万トンとなり、前回調査時の14万トンから改善はされたものの、依然大きな課題と認識しています。

天然水産物

天然水産物の資源状態/管理状態を評価するため、SFPのODP手法にもとづいた分析を行いました。その結果、マルハニチログループの取扱天然水産物の内、44%にあたる約60万トンが「Well managed(優れた管理がなされている)」と評価され、このうちの大半がスケソウダラを中心とした、MSCなど持続可能であるとして認証された漁業で漁獲されたものであることがわかりました。また、27%にあたる約37万トンが「Managed(一定レベルの管理がなされている)」と評価されました。
一方で、15%にあたる約20万トンが「Needs improvement(改善を要する)」、14%にあたる約19万トンがデータ不足のため「Not scored(評価不可)」と評価され、改善が必要な課題と認識しています。

「Needs improvement(改善を要する)」の天然水産物
「Not scored(評価不可)」の天然水産物

「Needs improvement」においては、上位5魚種で53%を占めました。データ不十分で「Not scored」に分類されたイトヨリダイやタチウオなどの魚種については、取扱水産物のより詳細な漁獲海域や漁法などの情報を入手し、実態の正確な把握に努めていきます。

絶滅危惧種

今回の調査の結果、取扱天然水産物の一部に、IUCN(国際自然保護連合)で定められた絶滅危惧種(EN)に該当する魚種が含まれていることを確認しました。科学的知見にもとづく漁業管理ルールにのっとり漁獲されている魚種は引き続き状況を注視しつつ取扱いを継続し、それ以外の魚種については取扱いの見直しを検討していきます。

絶滅危惧種の取扱い(2023年6月時点※1)
Red List 評価 魚種 学名 重量(t) 調達国 備考
EN※2
(絶滅危惧種)
ミナミマグロ Thunnus maccoyii 732 日本、ニュージーランド、韓国、台湾 資源回復計画あり
EN
(絶滅危惧種)
アオザメ Isurus oxyrinchus 575 中国 副産物の有効利用の観点もあるため、取扱いについては段階的に検討
EN
(絶滅危惧種)
チヒロアカウオ Sebastes fasciatus 71 ノルウェー、米国、オーランド諸国、日本 取扱い見直しを検討
  • ※1SFPの評価結果入手時期、実際の取扱は2021年度
  • ※2IUCN( 国際自然保護連合 )のカテゴリーEndangered ( EN )
2030年のありたい姿の実現に向けて

2030年のありたい姿である「取扱水産物の資源状態を確認している」には、抽出した課題の改善が必要不可欠です。第1回、第2回の調査で明らかになった課題に対し、2023年度から2024年度にかけて、マルハニチロ㈱の事業部署やグループ会社に対して個別に評価結果のフィードバックを行っています。各組織において調達する水産物の課題を認識した上でサプライヤー様と共有をいただくことがまずは重要であると考えています。2025年度には第3回目となる調査の実施を予定しています。定期的に調査を実施し、課題の抽出と改善をくり返していくことで2030年のありたい姿を実現していきます。定期的な調査実施、課題の抽出と改善をくり返し、2030年のありたい姿を実現していきます。

生物多様性リスク評価実施

マルハニチログループは自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が2023年9月に公開したフレームワークに基づき、事業と自然との関わりを評価しました。詳しくはTNFDページをご覧ください。

TNFD提言に基づく開示

養殖場の認証レベル管理の実施

餌を確認する様子
餌を確認する様子

マテリアリティ「生物多様性と生態系の保全」を当社グループの養殖事業において実践するため、2022年マルハニチロMarine熊野事業所とマルハニチロAQUA桜島事業所においてASCブリ・スギ基準と比較したギャップ調査を実施しました。その調査結果をもとに2023年度当社独自の自主管理基準を策定、4漁場の監査を実施し、基準への適合度を確認、課題を抽出しました。2024年度には残りの9漁場の監査を実施し養殖ユニット全漁場の監査を完了する予定です。これらの監査結果をもとに継続的に改善を実施することにより、環境負荷を低減した持続可能な養殖を実践していきます。

北米・スケトウダラ資源へのアクセス強化

マルハニチログループは、持続可能な水産物調達力のさらなる強化のため、2022年2月、米国・Icicle(アイスクル)社よりスケトウダラの加工施設および漁船9隻を譲り受け、北米ベーリング海におけるスケトウダラ資源へのアクセスをより一層強化しました。
漁獲枠のように天然水産資源に関与できる権益は、世界的に限られたもので、新たな取得には 相当な困難が伴います。今回のアクセスシェアの追加により、ベーリング海という大きな海域で、スケトウダラという潤沢な資源量を持ち、かつサステナブルな魚種へのアクセスが強化されることになります。ベーリング海のスケトウダラの漁獲枠において一般枠(原住民に与えられる漁獲枠を除く、一般に企業が利用できる漁獲枠)全体では約27%のシェアを得ることに加え、仮に2019年当時の第1回水産資源調査時点を前提とすると、持続可能であるとして認証された漁業で獲られた水産物は約82万トンから約88万トンの増加に相当します。
加えて、スケトウダラは他のたんぱく質と比較して、気候変動に配慮したたんぱく質であることが報告されています。サステナブルなたんぱく質として、人口増加、健康志向などの面から、世界的に需要は堅調ですが、フィーレやすりみなどさまざまな形態でより一般消費者の上に応えることが可能になります。

加工施設「Northern Victer(ノーザンビクター)号」

詳細はこちらをご確認ください。

持続可能な漁業・養殖認証 (MSC・ASC) 取得水産物の取扱い

マルハニチログループでは、MSC・ASC認証の水産物の取扱を積極的に進めています。MSC「海のエコラベル」を当社ライセンスにより表示をした家庭用冷凍食品などの市販用製品の2023年度の取扱数量は約1,700トンとなり、2022年度の約2,010トンより減少しました。また、ASCラベルを当社ライセンスにより表示をした製品については、2023年(期間:1月1日~12月31日)は取扱がありませんでした。一方、当社は市販用製品以外にも、業務用の製品でも多様な販売チャネルを持っています。持続可能な漁業・養殖業を実現するためには、市販用製品以外にも、裾野の広い業務用製品において、いかにMSC・ASC認証の水産物をお客さまに提供できるかが重要になると考えています。MSC「海のエコラベル」やASCラベルを表示した市販用製品の積極的な取扱いとともに、業務用製品を取り扱う取引先向けにも認証漁業・養殖業により生産された水産物の取扱いの推進を通して業界への啓発に取り組んでいきます。

MSC「海のエコラベル」を表示した
市販用製品の取扱数量の推移
MSC「海のエコラベル」を表示した市販用製品の取扱数量の推移
(注)対象はマルハニチロ(株)
ASCラベルを表示した
市販用製品の取扱数量の推移
ASCラベルを表示した市販用製品の取扱数量の推移
(注)対象はマルハニチロ(株)

カンパチ、ブリにおける持続可能な養殖認証(ASC認証)取得の取組み

(株)マルハニチロAQUA久根津漁場は、2019年7月にカンパチの養殖において世界初となるASC認証を取得し、2020年5月から本格出荷を開始しました。また、(株)マルハニチロAQUA上浦漁場ではブリの養殖において2018年4月にASC認証を取得しており、2019年2月から本格出荷を開始しました。引き続き、水揚げ→活魚輸送→マルハニチロの指定委託工場でのフィレ加工→量販店での販売という一貫したバリューチェーンにてお客さまの元へお届けしていきます。

養殖カンパチ
養殖カンパチ
マルハニチロAQUA久根津漁場
マルハニチロAQUA久根津漁場

※2022年4月1日(金)、増養殖事業を営むグループ6社を統合し、2つの会社に集約、(株)マルハニチロAQUA、(株)マルハニチロMarineが発足しました。(株)マルハニチロAQUA(本社:鹿児島県鹿児島市)は、九州地方の(株)桜島養魚、(有)奄美養魚、(株)アクアファーム、(有)玄海養魚の4社を統合、(株)マルハニチロMarine(本社:和歌山県串本町)は、紀州地方の(株)串本マリンファーム、(有)熊野養魚の2社を統合しました。

その他の取組み

持続可能な養殖事業に関する取組み
「魚類」細胞培養技術の確立に向けた共同研究

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