沿岸沿いに来遊してくるサケマスを建て網(たてあみ)というワナを仕掛けておいて、漁獲するのが、定置漁業です。
その理由として、第一に綱やロープがアラミンなどの化繊(かせん)が使われるようになり、非常に耐久性が強くなったこと。第二に網を水中に建てるのに水中カメラを用いたり、潜水夫を使って場所を設定する事ができるようになったことがあげられます。
定置網一カ統(ワンセット)で18万尾以上捕れる場所もあれば、3000尾に満たない網もあるなど、場所によって大差がありますが、場所を科学的に選定できるようになり、定置漁業が安定してきました。 |
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定置網の遠景
揚網の準備
揚網開始
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揚網 |
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サケ定置は沿岸漁民が手軽に営むわけにはいきません。一カ統の定置網を設置するには、人件費を含めると、数千万円~約2億円近くにものぼるからです。また、網おこしに使う「起こし船」、番屋(ばんや)の新築など、莫大な設備投資をかけなければならず、しかも、シケで網が流失すれば元も子もなくなり、大きな被害を受けることになります。 |
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この網は、いわゆる落網方式の浮き定置網ですから、あまり潮流の速い漁場には不向きです。潮流は、下り潮で0.6カイリ/時以下、上り潮で0.3カイリ/時以下の潮流条件の漁場であれば漁獲効果も大きくなります。すなわち、サケが比較的上層を、遅い潮流にのって回遊するときに最適です。 |
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サケ落網の平面図および側面図 |
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サケ落網の構造 |
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この底建て網は北海道斜里海域で最も普通に見られる標準型の網型です。この底建網は潮流に対してかなりの抵抗力があり、水深の深いところでも、網の規模をそれほど大幅に拡大することなく敷設できますので、小人数で3階網を交互に操業することもでき、効率を高めることができます。上り潮、下り潮ともサケがほぼ同じ程度、通過するところでは、この網型のように左右対象の網が合理的です。 |
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標準型底建網の平面図および側面図 |
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標準型底建網の構造 |
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この網型は両落しではなく、普通底建網と呼称されているものを改良したものです。下り潮で1.5カイリ/時、上り潮で1.0カイリ/時が魚群入網の限界流速で、非常に速い潮に、この網の機能が発揮します。しかし、網の高さはかなり低下するので、網に当ったサケ群が沈むことを期待できないと、その機能の発揮は困難です。結論として、この網は急潮にもっとも強い合理的な網型といえます。 |
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片袋式底建網の平面図および側面図 |
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片袋式底建網の構造 |
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定置網は、固定され、群集で沿岸にやってくる魚を大量に捕獲するための漁具ですから、網の規模も大きく、それ相当の作業員を必要としてきました。
また、魚群の性質をたくみに利用し、無理なく誘導し、入網させる方法ですが、入網量にたいする漁獲量の割合が小さい点が難点です。
したがって定置網漁業は、対象魚群の来遊量がおおきければ、漁獲される絶対量もそれ相当に大きいのですが、資源の変動や漁場環境の変化、その他の理由によって、上記の条件に変化すると、直ちに網規模の過大から労働効率の低下を招くことになります。
水産庁が、定置網の技術開発支援に取り組んでから、20年近くが経過しましたが、遠洋漁業の生産量の落ち込みが激しい中、沿岸漁業は見直され、管理型漁業の推進に伴い、その重要性が増してきています。中でも定置網漁業は沿岸の基幹漁業として脚光を浴びる状況にあります。将来の定置網を考える検討材料として、今まで実施された主な技術開発を以下にご紹介します。 |
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●チェーンロボ揚網装置の開発(昭和59~60年) |
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人手を使わずチェーンにより揚げ網を巻き取る装置がチェーンロボですが、網とチェーンの相性が悪く、実用化されませんでした。 |
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●空気(エアー)揚げ網の開発(昭和61~63年) |
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揚げ網作業を無人化するために、タイヤのゴム浮き袋を網の下に敷き、開上から空気を送り、網を揚げる方法。8ヶ所の漁場で採用されました。 |
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●網口遮断と魚群量情報の伝送装置の開発(平成元年~2年) |
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定置網内へ入った魚群量を超音波で調べ、情報を基地へ伝送。量を確認の後、海上からの操作で端口を遮断する方法ですが、これは繰り返しがうまくいかず、実用化は見送られました。 |
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●網口魚群監視装置と気泡幕による魚群の追い込み装置の開発(平成3~5年) |
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定置網内へ入った魚群量を超音波で調べ、情報を基地へ伝送。網の底に気泡(エアー)官を敷き、海上から空気を送り込むことにより、水中に気泡幕を作り、この幕を移動させることにより魚群を集約する方法。しかし、技術的に精度が悪く実用できませんでした。 |
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年 |
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サケ類
単位:t |
マス類
単位:t |
合計
単位:t |
平成5年(1993) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
43,707
112,524
17,048 |
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537
* |
*
113,061
* |
平成6年(1994) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
31,278
132,694
19,397 |
*
3,383
* |
*
136,077
* |
平成7年(1995) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
42,581
160,460
17,516 |
*
1,107
* |
*
161,567
* |
平成8年(1996) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
60,830
158,044
33,840 |
*
3,744
* |
*
161,788
* |
平成9年(1997) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
46,812
152,754
29,968 |
*
324
* |
*
153,078
* |
平成10年(1998) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
30,521
123,580
31,859 |
*
2,932
* |
*
126,512
* |
平成11年(1999) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
22,028
118,421
13,074 |
*
542
* |
*
118,963
* |
平成12年(2000) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
21,031
100,731
11,751 |
*
2,138
* |
*
102,869
* |
平成13年(2001) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
25,899
154,239
14,127 |
*
391
* |
*
154,630
* |
平成14年(2002) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
26,365
148,467
17,555 |
*
1,034
* |
*
149,501
* |
平成15年(2003) |
大型定置網
さけ定置網
小型定置網 |
27,789
201,581
24,081 |
1,067
499
17,150 |
28,856
202,081
41,231 |
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資料:平成15年 漁業・養殖業生産統計年報より
(*はデータなしです) |
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引用文献:「日本のサケ」市川健夫著 NHKブックス昭和52年8月発行
「定置網技術総覧」 西山作蔵監修 日本海洋センター 平成14年9月発行
「平成15年 漁業・養殖業生産統計年報」農林水産省統計部 平成17年10月発行 |
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