SALMON MUSEUM サーモンミュージアム

日本のダム魚道
川にすむ魚のほとんどは、日常的に川をのぼったりくだったりして生活しています。なかにはサケのように、一生をかけて海と川の上流とを往復する魚(通し回遊魚)もいます。こうした魚たちにとって、堰(せき)やダムなどは大きな障害物です。この障害物に特別な水路や装置を設けて、魚が自由に移動できる魚の通り道を「魚道(ぎょどう)」といいます。
北海道 二風谷(にぶたに)ダムの魚道を遡上するサケ
二風谷(にぶたに)ダムの階段式魚道
日本には、サケが生まれた川に回帰し、生まれた場所へ遡上する川がたくさんありましたが、戦後いたるところで、サケの遡上を拒む堰(せき)やダムが建設されてきました。 発電用ダム、多目的ダム、砂防堰堤(さぼうえんてい)、取水堰堤(しゅすいえんてい)など、経済高度成長期に作られたものは、ほとんどが産業や治水が目的でした。
北海道 様似(さまに)ダムと階段式魚道
既設ダムに魚道を新設。延長288m、落差22mの階段式(一部管路式)の魚道。アメマス、サクラマス、サケなどを対象。魚道の途中に魚が見られるような窓があります。
北海道 二風谷(にぶたに)ダムと階段式魚道
二風谷の沙流川(さるがわ)は、サケ・カラフトマス・シシャモ等の遡上する自然豊かな河川。ダム上流に産卵場所を持ち、海へ下りまた遡上するサクラマスの資源保護を主な目的に、階段式魚道を設置。ダム湖の水位変動に合わせてゲート(水路)が上下に動く構造で、国直轄ダムでは初めて採用。
サケは水の量が多い川の場合、その跳躍力で2~3メートル高の堰堤を越えていきますが、川の水量が少ないと50センチメートルでも超えられない場合があります。
大きなダムには発電会社が魚道(魚梯ぎょてい)を設けていますが、段差が高すぎたり、また流水が少ないために、その機能を十分果たしていないものが多くあります。
ダムが建設されると川岸域の植物性プランクトン、さらに動物性プランクトンが大幅に減少するのでサケ稚魚が育成する環境を悪化させます。
なぜ、日本の多くのダムは、アメリカに見られるようにサケが十分遡上できる構造をもった魚道を、もっと採用しなかったのか?
昭和の日本においては、やはりサケ資源の保存よりも、経済第一の開発が優先され、その結果、ダムは漁民に対する漁業権の補償と引き換えに建設され、サケ資源を減少させました。
現在は、出来るだけ自然環境に配慮する方向に考え方が変わり、ダム建設による魚類生息環境への影響の軽減や、既設ダムによって失われた環境を回復することを目的とした魚道の設置が全国に進められています。
以下に(財)ダム水源地環境整備センターの資料より、近年、魚道が設置された主なダムをご紹介します。
魚道が設置されている主なダムの位置図
財団法人ダム水源環境整備センター「ダム魚道の技術」より
主なダム魚道の設置状況
*ダム形式凡例・・・G:重力式コンクリートダム、GF:重力式コンクリートダム・フィルダム複合ダム、GA:重力式アーチダム
*目的凡例・・・F:洪水調節・防災、N:不特定用水・河川維持用水、A:かんがい用水、W:上水道用水、I:工業用水、P:発電
(※マークは現在魚道として使用されていません)
財団法人ダム水源環境整備センター「ダム魚道の技術」より
参考・引用文献:「ダム魚道の技術」財団法人ダム水源環境整備センター発行
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