SALMON MUSEUM サーモンミュージアム

北アメリカの魚道
ここにご紹介する北アメリカの魚道は、中村俊六氏(豊橋技術科学大学名誉教授)がみずから取材、撮影され、著書「魚道のはなし」(財団法人リバーフロント整備センター編集)にまとめた内容から、抜粋させていただいたものです。
カナダ西海岸の魚道
HELL'S GATE FISHWAYS ヒルズ・ゲイト,フレーザー川・カナダ
フレーザー川の魚道(魚道は二段構えになっている。増水の時は、上の段の魚道が使われる)
カナダの西海岸にはバーチカルスロット式魚道が多い。特にフレーザー川の下流の峡谷であるヘルズ・ゲート(地獄門)は、バーチカルスロット式魚道発祥の地として名高く、いくつかのバーチカルスロット式魚道がところ狭しと並んでいる。
これらの魚道は年間30メートルを越す水位変化と、ベニサケなど数種類のサケの遡上に対処している。最近、渇水時の流量が長期的減少傾向にあり、より低い位置に新しい魚道が新設されたり計画されたりしている。
左上の写真は全体の状況を模式的に描いた看板である(あまり正確ではないし、新しい魚道は描かれていない)。
右上の写真は1897年当時の、魚道もケーブルカーもない頃のヘルズ・ゲート。
左下の写真は渇水時(ほぼ最低水位時。それでも流量は約300トン/秒)のヘルズ・ゲート。
左岸側の水辺に、最近できた低水位用のバーチカルスロット式魚道2つとバッフル魚道が見える。
右下の写真は右岸側の高水位魚道出口。高水位用の魚道は、いずれもこんな風にちょっとしたビルサイズ。
ヘイズゲイトのバーチカルスロット式魚道(カナダ・フレーザー川)向こう側が高水時用ダブルスロット、手前が低水時用シングルスロット。(撮影:Per B. Saxvik)

バーチカルスロット式魚道
スロットを抜ける流速はプールの水位ではなくプール間の水位差のみで決まる。
したがって、水位が変化すると流況が激変する階段式魚道とは異なり、流速や流況が水位変化の影響をほとんど受けない。

アメリカ西海岸の魚道
BONNEVILLE DAM FISHWAY ボンネヴィルダム魚道,コロンビア川・USA
ノルウェーの魚道
ボンネヴィルダム
ボンネヴィルダムに設けてある魚道のひとつ(比較的古い、初期のもの)
ボンネヴィルダムに設けてある魚道のひとつ(比較的新しいもの、典型的なアイスハーバー型)
この地域では、コロンビア川が代表的で、いくつかのダムに大規模な魚道が付けられている。コロンビア川の支川やシアトルよりも北のほかの川にも工夫を凝らした魚道が少なくない。いずれの魚道も主対象魚はサケ類。
左上の写真は、コロンビア川の支流、ヤキマ川にあるハイブリッド魚道。
左下の写真はコロンビア川ボンネビルダムの右岸側のアイスハーバー型魚道。
下の写真はカナダとの国境近くの小河川中に設けられたカルバート式魚道である。
アイスハーバー型階段式魚道
ハイブリッドな階段式魚道の概要図(左右)
左右いずれも、河川水位が低いときには「階段式魚道」(プールタイプ魚道)として機能するが、増水して水位が上昇すると「デニール式魚道」(ストリーミングタイプ魚道)に変身する。
ハイブリッド魚道
JOHN DAY DAM FISHWAY ジョンディダム魚道,コロンビア川・USA
ジョンディダム魚道全景
ジョンデイダムのアイスハーバー型魚道(両側は比較的急流だが中央は穏やか)
魚道をのぼる魚が見えるように計教室のとなりにガラス張りの窓が設けてある(こうした観察窓は、コロンビア川の他のダムのほとんどの魚道にも設けられている)
北アメリカ東海岸の魚道
カナダにしろアメリカにしろ、北アメリカ東海岸にいくと、歴史が古く、魚も大西洋種であるため、趣がヨーロッパに似てくる。
アメリカ・コネチカット州コネチカット川のホリヨークダムのエレベーター式魚道 。
カナダ東端ノバスコシアの全面越流型の階段式魚道。全面越流型であるが不規則な形をした岩盤河道を魚道にしているためにセイシュ(横波)が起きにくくなっている。
(写真左)カナダ東端ノバスコシアのバーチカルスロット式魚道。

(写真右)カナダ東端ノバスコシアの部分越流型の階段式魚道。パイプで送られてきた呼び水が入り口プールで合流している。
参考・引用文献:「魚道のはなし」中村俊六著、財団法人リバーフロント整備センター編集1997年5月30日第3刷発行
「日本の水産 鮭」 監修:富山哲夫 社団法人全日本水産写真資料協会 後援:日魯漁業株式会社(現マルハニチロホールディングス) 昭和47年2月1日発行
ページTOPへ