鮭と環境


故郷の海岸や河口に帰ってくるサケ
サケ・マスはもちろん、魚類は山影のある海岸や森林のつくる木陰を好みます。そして森林は風波を防ぎ、水温を安定させ、水を清く保ち、また、魚の餌になる昆虫やプランクトンを繁殖させるなど、さまざまな機能をもっています。昔から日本の海岸には魚の環境を守る森林、「魚つき林」が人々の手によって管理されてきました。ここではその代表的な「魚つき林」をご紹介いたします。

新潟県村上市を流れる三面川(みおもてがわ)の河口に「サケを呼ぶ森」と呼ばれている「魚つき保安林」(総面積は、2.42ヘクタール)があります。
この森は、江戸時代から「サケを呼ぶ森」として人々に親しまれ、村上藩はこの森を大切に保存していました。
この森は、江戸時代から「サケを呼ぶ森」として人々に親しまれ、村上藩はこの森を大切に保存していました。

三面川の河口の魚つき保安林「サケを呼ぶ森」
三面川は、村上藩の下級武士である青砥武平治(あおとぶへいじ)の創意工夫によって、日本で最初にサケの増殖法「種川の制」が確立した川です。この増殖法は、年々サケの回帰率を大いに高め、サケの豊漁で村上藩の財政をたいへん豊かにしました。

サケのありがたさと、サケの習性を知りぬいていた村上藩は、「サケを呼ぶ森」に山奉行を置き、森を管理し、やみくもに木を切らせず、森を大切にしてきたのです。この先人達の深い洞察に敬意を払わざるを得ません。
1911年(明治44)にこの森は「魚つき保安林」として指定され、現在も続いています。保安林は、樹木の伐採や損傷、土石の採取、樹根の採掘が禁止。やもおえず伐採した跡地には人工植栽が義務づけられています。
「多岐神社」・・・この三面川河口の「サケを呼ぶ森」には、古くから漁を営む人々に厚く信仰されてきた「多岐神社」が祀られています。
「多岐神社」・・・この三面川河口の「サケを呼ぶ森」には、古くから漁を営む人々に厚く信仰されてきた「多岐神社」が祀られています。

タブの大木が多い魚つき保安林

古くから漁を営む人々に厚く信仰されてきた
「多岐神社」

新潟県内で最初の森林ボランティアとして、「さけの森林(もり)づくり」が、2000年(平成12年)10月29日から朝日村と村上市において始まりました。
三面川流域を「さけの森林(もり)」として整備・保全を促進し、毎年、ブナを植えて、三面川がいつまでも鮭の川として後生に引き継ぐことを目的としています。
三面川流域を「さけの森林(もり)」として整備・保全を促進し、毎年、ブナを植えて、三面川がいつまでも鮭の川として後生に引き継ぐことを目的としています。

2007年(平成19)、ブナの植栽を終えて



北海道には、国有林、民有林合わせて30,315ha(ヘクタール)の森林が、魚つき保安林に指定されています。所有形態別には道有林が21,950ha(72%)と最も多く、国有林は3,875ha(13%)、その他民有林が4,490ha(15%)となっています。(平成16年現在)
サケ・マスは森林から落下する昆虫や川の中の水生昆虫を餌として食べるので、魚つき林の存在価値はきわめて大きいとされています。ロシアでは、森林面積率が大きいほどカラフトマスの稚魚生産率が高いことが報告されてもいます。
また、森林は多量の水を保持する水源涵養林(すいげんかんようりん)としての役割が大きく、森林は降雨や降雪を落葉が堆積した林内にとどめて、徐々に流出させ、流量が安定していることは、流出する土砂量を少なくします。さらに森林の保温・放冷作用は、河川の水温に反映してサケ・マスの生活環境を良好にしています。
冷水性のサケ・マスは、水量が豊富で、水質が清浄でないと成長しません。北海道に限らず、河川や海洋の環境を保存することは、サケ資源の増殖のみではなく、私たち人間の生活環境の維持にもつながっています。
北海道における魚つき保安林の指定の歴史は古く、現存するものでは森林法が制定された明治30年に小樽、積丹半島の国有海岸林が「魚つき」に編入されたものが最初です。
その後、大正時代には、根室市の風蓮湖(ふうれんこ)周辺の民有林が編入され、昭和28年には国有林、民有林合わせて約2万9千haの魚つき保安林が沿岸部に配備されました。
その後、昭和63年に北海道漁協婦人部連絡協議会(現:北海道漁協女性部連絡協議会)がはじめたのが「お魚殖やす植樹運動」です。
「百年かけて百年前の自然の浜を」を合言葉に、浜の母さんたちが山に向って一斉に動きだしました。既に20年くらいの取組みとなりましたが、平成16年度までに浜の母さんたちにより植えられた苗木は、約67万本に達しています。
「森と川と海はひとつ」、「森は海の恋人」などのキャッチフレーズとともに全国的に環境保全の意識が高まっていく状況を背景に、北海道では新たに魚つき保安林の指定が進んでいきました。
おもだったところでは、平成6年にえりも砂漠の緑化復元を成功させた国有林。11年には道南の福島町沿岸部の道有林。13年にはサロマ湖周辺の森林が、新たに魚つき保安林に指定されました。
そして平成13年には、魚つき保安林の指定区域が沿岸部森林だけでなく、内陸河川周辺の森林に拡大されたことにより、15年度に内陸の保護水面等の周辺森林を2万3千ha新たに指定した結果、現状の約3万haの魚つき保安林の配備となりました。
サケ・マスは森林から落下する昆虫や川の中の水生昆虫を餌として食べるので、魚つき林の存在価値はきわめて大きいとされています。ロシアでは、森林面積率が大きいほどカラフトマスの稚魚生産率が高いことが報告されてもいます。
また、森林は多量の水を保持する水源涵養林(すいげんかんようりん)としての役割が大きく、森林は降雨や降雪を落葉が堆積した林内にとどめて、徐々に流出させ、流量が安定していることは、流出する土砂量を少なくします。さらに森林の保温・放冷作用は、河川の水温に反映してサケ・マスの生活環境を良好にしています。
冷水性のサケ・マスは、水量が豊富で、水質が清浄でないと成長しません。北海道に限らず、河川や海洋の環境を保存することは、サケ資源の増殖のみではなく、私たち人間の生活環境の維持にもつながっています。
北海道における魚つき保安林の指定の歴史は古く、現存するものでは森林法が制定された明治30年に小樽、積丹半島の国有海岸林が「魚つき」に編入されたものが最初です。
その後、大正時代には、根室市の風蓮湖(ふうれんこ)周辺の民有林が編入され、昭和28年には国有林、民有林合わせて約2万9千haの魚つき保安林が沿岸部に配備されました。
その後、昭和63年に北海道漁協婦人部連絡協議会(現:北海道漁協女性部連絡協議会)がはじめたのが「お魚殖やす植樹運動」です。
「百年かけて百年前の自然の浜を」を合言葉に、浜の母さんたちが山に向って一斉に動きだしました。既に20年くらいの取組みとなりましたが、平成16年度までに浜の母さんたちにより植えられた苗木は、約67万本に達しています。
「森と川と海はひとつ」、「森は海の恋人」などのキャッチフレーズとともに全国的に環境保全の意識が高まっていく状況を背景に、北海道では新たに魚つき保安林の指定が進んでいきました。
おもだったところでは、平成6年にえりも砂漠の緑化復元を成功させた国有林。11年には道南の福島町沿岸部の道有林。13年にはサロマ湖周辺の森林が、新たに魚つき保安林に指定されました。
そして平成13年には、魚つき保安林の指定区域が沿岸部森林だけでなく、内陸河川周辺の森林に拡大されたことにより、15年度に内陸の保護水面等の周辺森林を2万3千ha新たに指定した結果、現状の約3万haの魚つき保安林の配備となりました。
市町村別・所有形態別魚つき保安林一覧 (H19年度現況) | |||||
---|---|---|---|---|---|
支庁 | 市町村名 | 字名 | 地図 番号 |
指定面積(ha) | 指定年月日 |
渡島 支庁 |
函館市 | 紅葉山町 | 1 | 3,093 | H16.3.16 |
原木町 | 2 | 26 | T10.11.12 | ||
丸山町 | 3 | 329 | H16.2.20 | ||
日浦町 | 4 | 36 | T10.11.12 | ||
5 | 0 | T11.5.16 | |||
6 | 19 | T11.5.16 | |||
女那川町 | 7 | 26 | T10.11.12 | ||
銚子町 | 8 | 43 | T10.11.12 | ||
岩戸町 | 9 | 26 | T10.11.12 | ||
川汲町 | 10 | 420 | H15.7.29 | ||
古部町 | 11 | 87 | T10.11.17 | ||
松前郡松前町 | 原口 | 12 | 7 | T10.10.29 | |
高野 | 13 | 4,452 | H16.3.12 | ||
松前郡福島町 | 岩部 | 14 | 324 | H11.10.19 | |
茅部郡鹿部町 | 大岩 | 15 | 60 | T10.11.12 | |
檜山 支庁 |
桧山郡上ノ国町 | 館野 | 16 | 17 | T10.11.16 |
早川 | 17 | 5,824 | H16.2.24 | ||
後志 支庁 |
小樽市 | 18 | 34 | M30.7.6 | |
19 | 63 | S35.12.9 | |||
寿都郡寿都町 | 磯谷町横間 | 20 | 2 | T11.5.16 | |
積丹郡積丹町 | 21 | 532 | M30.7.6 | ||
古平郡古平町 | 22 | 75 | M30.7.6 | ||
余市郡余市町 | 23 | 130 | M30.7.6 | ||
石狩 支庁 |
石狩市 | 24 | 6 | T12.7.6 | |
上川支庁 | 空知郡南富良野町 | 東鹿越 | 25 | 289 | H16.3.23 |
留萌 支庁 |
増毛郡増毛町 | 署寒沢 | 26 | 3,462 | H19.10.23 |
宗谷 支庁 |
枝幸郡枝幸町 | 27 | 16 | T1.11.20 | |
28 | 70 | T1.11.20 | |||
利尻郡利尻富士町 | 29 | 38 | T11.1.8 | ||
30 | 19 | T11.1.8 | |||
31 | 1 | S8.3.21 | |||
網走 支庁 |
網走郡津別町 | 最上 | 32 | 2,036 | H16.3.19 |
斜里郡斜里町 | 真鯉 | 33 | 62 | H15.10.10 | |
常呂郡佐呂間町 | 34 | 27 | S10.11.5 | ||
35 | 266 | H14.1.24 | |||
浜佐呂間 | 36 | 5 | H13.11.30 | ||
37 | 2 | H14.1.24 | |||
常呂郡常呂町 | 38 | 311 | M44.11.1 | ||
39 | 207 | H14.1.24 | |||
栄浦 | 40 | 6 | H13.11.8 | ||
41 | 75 | H13.11.30 | |||
紋別郡湧別町 | 42 | 488 | H14.1.24 | ||
計呂地 | 43 | 51 | H13.11.30 | ||
胆振 支庁 |
虻田郡虻田町 | 清水 | 44 | 13 | T10.9.13 |
虻田郡豊浦町 | 45 | 92 | T10.9.18 | ||
日高 支庁 |
様似郡様似町 | 旭 | 46 | 2,230 | H16.3.23 |
幌泉郡えりも町 | 47 | 414 | H6.8.8 | ||
えりも岬 | 48 | 9 | H15.2.28 | ||
近浦 | 49 | 625 | H16.3.23 | ||
歌別 | 50 | 570 | H16.1.27 | ||
十勝 支庁 |
広尾郡大樹町 | 生花 | 51 | 199 | H16.2.24 |
釧路 支庁 |
釧路郡釧路町 | 52 | 464 | T11.4.8 | |
根室 支庁 |
根室市 | 53 | 74 | T3.12.4 | |
54 | 319 | T6.7.7 | |||
東梅 | 55 | 21 | T2.6.12 | ||
春国岱 | 56 | 291 | H11.10.19 | ||
川口 | 57 | 0 | T11.2.15 | ||
58 | 104 | T11.2.15 | |||
初田牛 | 59 | 159 | T11.2.15 | ||
湖南 | 60 | 412 | T11.2.15 | ||
野付郡別海町 | 61 | 229 | T3.12.11 | ||
走古丹 | 62 | 1 | S55.10.11 | ||
床丹 | 63 | 1,578 | H16.2.24 | ||
尾岱沼 | 64 | 549 | H16.3.23 | ||
奥行 | 65 | 593 | T11.2.15 | ||
上春別 | 66 | 484 | H16.3.23 | ||
本別海 | 67 | 61 | S10.11.5 | ||
標津郡中標津町 | 俵橋 | 68 | 117 | H12.11.10 | |
目梨郡羅臼町 | 峯浜町 | 69 | 36 | T11.1.22 | |
幌萌町 | 70 | 1 | T11.1.22 | ||
71 | 114 | T11.1.22 | |||
春日町 | 72 | 15 | T11.1.22 | ||
麻布町 | 73 | 64 | T11.1.22 | ||
八木浜町 | 74 | 27 | T11.1.22 | ||
75 | 341 | H6.10.7 | |||
知昭町 | 76 | 29 | T11.1.22 | ||
松法町 | 77 | 17 | T11.1.22 | ||
知昭町 | 78 | 153 | T11.1.22 | ||
海岸町 | 79 | 88 | T11.1.22 | ||
岬町 | 80 | 153 | T11.1.22 | ||
北浜 | 81 | 67 | T11.1.22 | ||
合 計 | 33,775 |
※各保安林の面積は四捨五入表示しているため、合計面積と一致しない |
<北海道水産林務治山課保安林グループより提供> |
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えりも岬周辺の魚つき保安林(国有林)地図番号47番:北海道水産林務部提供

サロマ湖周辺の魚つき保安林(国有林)地図番号36番:北海道水産林務部提供
参考・引用文献
新潟県村上市三面川の魚つき保安林一連の写真提供:イヨボヤ会館、
「三面川の鮭」横川 健著 朝日新聞社 2005年2月28日発行
「日本のサケ」市川建夫著 NHKブックス 昭和52年8月発行
「しんりんほぜん」No.60 北海道水産林務部 平成18年4月3日発行
新潟県村上市三面川の魚つき保安林一連の写真提供:イヨボヤ会館、
「三面川の鮭」横川 健著 朝日新聞社 2005年2月28日発行
「日本のサケ」市川建夫著 NHKブックス 昭和52年8月発行
「しんりんほぜん」No.60 北海道水産林務部 平成18年4月3日発行
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