SALMON MUSEUM サーモンミュージアム

近代~現代のサケ漁
北洋サケマス漁業の展開2昭和20年(1945)~現在
北海道を基地とする流し網漁業
1)以南流し網漁業(中型流し網漁業)サケマスの流し網漁業は、戦前北千島を根拠地にして発展しました。
北海道における流し網漁業は、昭和初期から始められたが極零細なもので、サケマス漁業の主体は定置漁業でした。
ところが戦後、昭和22年ごろから、道東の釧路、根室を中心にサケマス、カニの中小の缶詰工場が設けられ、サケマス漁業の市場が拡大されたこと、昭和24年から缶詰製品の輸出が再開されたこと、北海道道東のサケマス資源が豊かであったことがあって、サケマス流し網漁業者が急増していきました。昭和26年その漁船は857隻におよび、流し網漁業が定置漁業を圧倒するようになりました。

また、船団は6月下旬から7月中旬にかけて、シロサケ、カラフトマスの群れを追って、ベーリング海のオリュートル岬あたりまで移動します。そして、漁期末にはカムチャッカ半島東南沖においてギンザケを漁獲するのが恒例になっていました。

出港前の流し網漁船(昭和46年ごろ)
サケマス流し網漁業は、釧路、花咲(根室市)、厚岸、歯舞(根室市)などを根拠地として営まれています。
中型船の大半は北海道のものですが、岩手、宮城、福島、富山などに船籍があるものも少なくありません。
流し網の漁獲物は冷蔵と塩蔵と冷凍に加工されて市場に出まわります。根拠地には缶詰業者が多く冷蔵物は多く缶詰の原料に向けられています。

漁場に向う流し網漁船(昭和46年ごろ)

大漁の重みで沈みそうになりながら帰還する漁船(昭和46年ごろ)
荒波の中で操業がつづく(昭和46年ごろ)
中型サケ・マス流網漁業・・・・中型船 60~70トンが主体(乗組員16人)
中型サケ・マス流網漁業は、旧母船式漁業から転換した基地式の中型船サケ・マス流し網漁業と、従来の太平洋に出漁する中型船サケ・マス流網漁業とがあります。
流し網の解説

昭和41年6月、台風4号は道東海域にいた鮭鱒漁船5隻を沈め、余波の高いうねりの中を、第18恵比寿丸(82トン、20人乗り)は北緯48度、東経168度の漁場を目指した。
釧路を出て6日目、気温5度、水温6度、ダーク・グリーンの海で投網を開始する。船尾から2,3ノットで大きなコロを利用して網を入れ、浮きを投げ込み、延々と浪間にアバ(浮き)が見え隠れする。


流し網の巻揚げがはじまる
最後に標識灯を点けて放し、これを目印に夜半から揚げ網作業が開始される。

「サア、行くぞ」ボースン(フランス語で「甲板長」)の合図で、ゴムのカッパに身を固めた乗組員がデッキに勢ぞろいし、ライトが煌々と灯されると、サケマス相手に戦いがはじまる。
網を手繰り錘(てぐりおもり)のある方は網揚機(あみあげき)に捲(ま)かせ、アバの方は手揚げする。
北海の夜明けは一段と冷えるが、寒さは忽(たちま)ち滴る汗に代わり、 「来たぞ!」ライトに躍る銀鱗が目に入るたびに、興奮と歓声が湧き上がり、この快感と感動は海の男にしか占有できない法悦(ほうえつ)である。
魚体を痛めないように慎重に外し、裁割(さいかつ)する者、網を船尾に積み上げて整理する者、。おのおのが分担して、一連の流れ作業が続く。
やや出っ腹のギンザケ、全体に太目のマスノスケ、スマートさを絵に描いたようなベニザケ、どれもが魚屋の店頭に陳列してある魚や、狭い水族館で輪になって泳ぐ魚族とは、全然、別種の生物に見えて、肌の色艶と目の光沢が断然異なり、大洋で生を享(う)け、躍動感に溢れた海の女神のプレゼントである。
引用文献: 「水産世界」平成18年6月号 北洋の覇者「畠山耕治漁労長伝」第8回 郡 義典著 農林経済研究所発行
(2)太平洋小型流し網漁業
中型流し網漁業」に対して、小型船による北海道近海を漁場とするサケマス漁業を「太平洋小型流し網漁業」と呼んでいます。
これは7トン以下の零細船で、数は多く、昭和50年に1120隻にも達しています。海洋で索餌回遊し、卵をまだ持たない若いサケであるトキシラズは、この漁業によってとられています。
 
漁師でしか味わえない法悦(ほうえつ)がある
●小型サケ・マス漁業・・・・・・小型船10トン未満(乗組員7人)19トン(乗組員9人)
小型サケ・マス漁業は、太平洋の日本200海里内を操業する以西船と太平洋の東経154度以東を操業する以東船があります。
(3)太平洋延縄(はえなわ)漁業
太平洋延縄漁業は、昭和27年から北緯25度以南の北洋で認められていました。
当時はカムチャッカ西岸・樺太・沿海州に向うカラフトマス、シロサケを主として、1万トンくらいの漁獲がありました。この漁法は枝縄が切れて、鉤(カギ)のはずれる欠陥があり、昭和47年からは4隻に1隻の割で、中型流し網漁業に転換しています。
●平成17年(2005)サケマス操業水域図(提供:株式会社 全鮭連)
●平成18年(2006)サケマス操業水域図(提供:株式会社 全鮭連)
引用文献:「日本のサケ」市川健夫著 NHKブックス昭和52年8月発行 「水産世界」平成18年6月号 北洋の覇者「畠山耕治漁労長伝」第8回 郡 義典著 農林経済研究所発行
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