SALMON MUSEUM サーモンミュージアム

サケの学習室

  • 北海道 標津町立薫別小中学校
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  • 標津町立薫別小中学校の環境学習
環境学習・研究レポート「アメマスは薫別川に生息しているか?」
今年2011年、富士五湖の西湖で、絶滅したと思われていた「クニマス」(サケ科)が偶然発見されたことがマスコミで大きく取り上げられ、話題となりました。
サケ科の魚類は川、海の両方にまたがって生息する種ですから地球環境の変化にいつも影響されながら生活し、進化してきたと考えられています。この不思議なサケ科の仲間にアメマス(サケ科イワナ属)という種がいます。
2010年11月9日に北海道の薫別小中の中学生4人が、知床半島ではほとんど見ることができないアメマスを薫別川で捕獲したことを発表。町生涯学習センターで開かれた中学生実践発表大会で、その研究成果を報告しました。(研究レポート添付)
この研究について、北海道大学名誉教授の石城謙吉先生から「自然界の生存競争の仕組みを解明する仕事は、皆さんがやっているような地道な調査と、それにこめる大きな夢からはじまります。薫別中の研究がこれからも長く続けられる事を期待します」と、声援のお手紙をいただきました。
同校では2008年度から総合学習の時間を使い、月に一度のペースで子どもたちが川に繰り出しアメマスを探してきました。8月に一匹目を捕獲。過去2年間、アメマスを捕らえることができなかったけれど、この年は目撃・捕獲情報が5件もありました。そのことで、子どもたちは猛暑で水温が高かったことがその原因ではないかと推測しました。また、地域の方々から「昔はよく見た」という証言をえたことから、薫別川に砂防ダムが作られたことで環境が変わりアメマスが激減したのではないか、とも考察しました。 環境の変化と生物の生態変化を、地道に観察し続けてた薫別小中の研究レポートをサーモンミュージアムでは敬意をもって掲載させていただきました。
私たちの今年度のテーマは「アメマスは薫別川に生息しているか。」です。(研究レポート2010年11月発表)

捕獲されたアメマス
薫別川にはアメマスが生息していないと言われていました。
しかし、4年前、先輩たちがアメマスを捕獲しました。また、昨年は海で地引き網の体験をしたときにアメマスを捕獲することができました。

捕獲されたアメマス
これらのことから私たちはアメマスが薫別川に生息していると考えました。「生息している」の条件は、アメマスが生殖して、稚魚が成長することと考えています。
昨年の調査から
昨年の調査から、アメマスにとって生息しやすい環境の条件は、水深や水温のほか、川が蛇行していて魚の隠れ家がたくさんある環境であり、改修されていない支流や上流とうことが考えられました。
アドバイス
さらに歯舞中学校の教頭先生をされている野呂先生や、サーモン科学館の学芸員の市村さんに電話で取材をしました。
その中で支流と本流どちらで調査したらいいかを聞いてみると、野呂先生は安全面のことから支流をすすめてくれました。市村さんは越冬と繁殖の2つのタイプがいるという理由で支流と本流の両方で調査の目的が変わることを教えてくれました。そこで、私たちは時期も考慮して支流を調査することにしました。また、地域の人に、アドバイスをもらいアメマスがいそうな場所を聞いて調査地を設定しました。
調査の途上乳薫橋より下流の本流で地域の方がアメマスを捕獲したので、私たちも調査地をアメマスが捕獲された地点に変えて調査を続行しました。
調査方法・内容
次に調査方法内容についてです。使った道具は竿や網、カメラ、温度計、箱メガネ、メジャーです。
調査方法は、箱メガネで川の中を見て、網と竿を使って魚を捕獲し種類を記録しました。また、メジャーを使って、魚の大きさをしらべました。調査地の気温、水温を計測しました。さらに、今年は地域の方々にこの薫別川には、アメマスは生息しているのかということとアメマスの捕獲方法をインタビューしました。
次に、結果です。5月18日、6月16日には支流を調査しました。5月18日にはヤマメ、オショロコマ、トミヨ、イトヨ、ウキゴリを捕獲しました。6月16日には、ヤマメ、オショロコマ、イワナ、トゲウオ、ウキゴリを捕獲しました。
8月25日、9月29日、10月、6、7日には本流で調査を行いました。8月25日にはカラフトマス、ヤマメ、ウキゴリを捕獲・発見できました。9月29日にはヤマメとオショロコマを捕獲しました。10月6日にはヤマメが捕獲できて、翌日の10月7日にヤマメ、オショロコマ、カジカを捕獲、発見をしました。
今回のアメマスの調査では、自分たちの力でアメマスを捕獲することができませんでした。ですが、地域の人がアメマスを5匹捕獲していました。
捕獲された5匹のアメマスのうち、3匹が学校に提供されました。その3匹は、1匹目は、8月17日にメス固体で体長33センチメートル。
2匹目は、9月10日に体長31センチメートル。3匹目は、9月24日に、メスかわかりませんが、体長32センチメートルが捕獲されました。
その他にわかったことは、改修していない場所には魚の数も種類も多くいたこと。去年と比べて釣れた時期の水温が高かったこと、水温が低くなると魚がへったことがわかりました。
考察
次に考察です。
今回の調査から、3つの考察をたてました。
①アメマスが増えたときの環境の変化
②なぜ今年捕獲できたか
③薫別川の環境
の3つです。
アメマスが増えたときの環境の変化
まず一つ目の、アメマスが増えたときの環境変化についてです。調査から、アメマスとオショロコマ、ヤマメが同じ自然環境で生息していることがわかりました。
このことから、①アメマスが今後増えることによって、魚の種類が増え、自然が豊かになるケースと、②オショロコマが、アメマスとすみわけることによりオショロコマが追いやられてしまい、オショロコマにとってすみにくくなるケースの二つが考えられます。
なぜ今年捕獲できたか(2010年)
次に二つ目のなぜ今年捕獲できたかについての考察です。今まではアメマスを捕獲することができませんでしたが、今年(2010年)は5匹のアメマスが捕獲できました。

この夏は、異常気象で例年より温度が高い日々が続きました。8月17日に捕獲された個体は成熟していないのにもかかわらず、越冬には早すぎる個体でした。
これらの異常から気象の影響で今回捕獲できた可能性があります。
このことから、その年の水温や気温が高いとアメマスが増えて、逆に水温や気温が低いとアメマスが減るかもしれないという可能性が考えられます。
薫別川の環境
最後に3つ目の薫別川の環境の変化についての考察です。北海道大学名誉教授の石城謙吉先生が過去に薫別川の調査を行っています。
その調査では、薫別川にアメマスはいないとされています。しかし、地域の人たちは、昔はよく釣れていたと教えてくれました。
また、30~40年ほど前から最近までアメマスを見ていなかったと言っていました。
私たちは、アメマスがいなくなったのは環境の変化か、乱獲の可能性だと考えました。

はじめからアメマスはいないという石城先生の考えとは異なり、なんらかの環境の変化で、数が、激減しながらもひっそりとアメマスはすんでいたのではないかと考えました。そこで、地域の方がよく釣れたと言っている時期と石城先生の調査の間に、ダムや護岸ブロックの建設が行われなかったかどうか調査しました。
その結果、石城先生の調査に工事の影響はないことがわかりました。ですが、工事の影響で環境が悪化し、サケが年々減ってきたことに関係があるか調査する価値があるかもしれません。
また、薫別川と同じくアメマスが生息していないとされていた古多糠川で今年、成熟したアメマスのメス固体が捕獲されました。このことから古多糠川も薫別川と同じく、昔からアメマスは生息していて、何らかの環境の変化で数が減ったのではないかと考えました。
そして今年、増えたアメマスの一匹が捕獲できたと考えました。
※僕たちのこの研究レポート「アメマスは薫別川に生息しているか。」は、2010年11月5日の北海道新聞に取り上げられました。
感想
・地域の人に、薫別川には、アメマスが生息しているかを聞いて、わかりやすくおしえてくれたので、総合の調査に役立った。

・地域の方々に、協力してもらったり、いろんな事を教えてもらってうれしかった。

・今回、調査してみてアメマスがふえることで、これから川の環境がよくも、悪くもなるからアメマスがとれて、素直によろこべなかった。
この研究にたいして北海道大学名誉教授の石城先生からコメントをいただきました。

「今、北海道ではオショロコマの分布地域は限られ、オショロコマが上流から下流までを独占しているのは知床とその周辺の河川だけですが、薫別川の河口付近にアメマスが見られるだけでなく、上流部にも河川型として住んでいるとすると、薫別川は知床周辺でのアメマスによるオショロコマへの圧迫の最前線と言えるかもしれません。

むろんそれは何千年も何万年もかかるドラマですが、そういう自然界の生存競争の仕組みを解明する仕事は、皆さんがやっているような地道な調査と、それにこめる大きな夢から始まります。」
標津町立薫別小中学校
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