独立行政法人 製品評価技術基盤機構との共同研究
食中毒原因菌であるセレウス菌(Bacillus cereus)
迅速かつ精密な識別・同定法を確立

マルハニチロ株式会社【本社所在地:東京都江東区、代表取締役社長:伊藤滋】は、独立行政法人製品評価技術基盤機構【所在地:東京都渋谷区、理事長 辰巳 敬】と共同で、近年注目を浴びているマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)を用い、食中毒原因菌であるセレウス菌(Bacillus cereus)の迅速かつ精密な識別・同定(菌種特定)法を確立しました。

食品の微生物管理において、食品中の腐敗菌や食中毒原因菌を迅速に識別・同定できる技術は、極めて重要です。しかしながら、食中毒原因菌の一種であり下痢・嘔吐毒を産生する Bacillus cereus種とその近縁種は類似性が高く、従来の同定法では、それら菌種の迅速かつ精密な識別・同定は困難でした。そこで、B. cereus 種とその近縁種(計11種)に特異的な7つのタンパク質(リボソームタンパク質;L33, L30, L29, S18, L31, S20, L22)を全ゲノム情報から見出し、操作が簡便なMALDI-TOF MSを用いてその7つのタンパク質をバイオマーカーとして検出することにより、迅速かつ精度良く B. cereus 種を識別・同定する新たな方法を開発しました。

今回確立した方法では、寒天培地上のコロニー(菌の集団)から検出結果を得るまでにかかる時間は数分で、極めて迅速に菌種の識別・同定を行えます。様々な食品製造現場において、品質管理や工程の微生物安全管理に幅広く利用可能であり、食の安全に貢献できる手法と考えています。

この成果の詳細は、平成30年3月15日~18日に学校法人 名城大学(愛知県名古屋市)で開催される日本農芸化学会2018年度大会( http://www.jsbba.or.jp/2018/ )で発表される予定です。

【用語の説明】

◆MALDI-TOF MS
MALDIとはマトリックス支援レーザー脱離イオン化法のことで、TOF MSとは飛行時間型質量分析法のことである.MALDI-TOF MSはこれら両者を組み合わせたものであり、高いイオン化法によって得られた物質(生体高分子)の質量をより広範囲に決定することができる分析手法である。

◆Bacillus cereus
本菌は、土壌、空気及び河川水等の自然環境をはじめ、農産物、水産物及び畜産物などの食料、飼料等に広く分布している細菌である。10~50℃の温度域で増殖(最適増殖温度28~35℃)するが、7℃以下の低温で増殖する菌株も存在する。また、高温(90℃で60分以上の加熱)でも抵抗性を持つ胞子を持つ。本菌は嘔吐毒及び下痢を引き起こす毒素を産生し、これらが食中毒の発症に関与することが知られている。

◆リボソーム
あらゆる生物の細胞内に存在する構造であり、タンパク質合成の場として機能する小顆粒で、タンパク質とRNAからなる。核でつくられたmRNA(メッセンジャーRNA)の遺伝情報に基づき、その遺伝情報を読み取ってタンパク質へと変換する機構である翻訳が行われる。

◆ゲノム
一つの生物がもつ全遺伝子(遺伝情報)をいう。

◆バイオマーカー
生物学的指標のことであり、生体内の生物学的変化を定量的に把握するため、生体情報を数値化・定量化したもの。例えば、血糖値やコレステロール値などは、生活習慣病の指標として代表的なバイオマーカーである。

以上

ニュースリリース

報道各位からの取材に関する窓口
マルハニチロ株式会社 広報IR部
Tel 03-6833-0826 Fax 03-6833-0506
メール koho@maruha-nichiro.co.jp

本件の技術に関する窓口
独立行政法人 製品評価技術基盤機構
バイオテクノロジーセンター
産業連携推進課 担当 川崎・赤坂
Tel 0438-20-5764 Fax 0438-20-5582
メール bio-sangyo-inquiry@nite.go.jp

ページ上部へ