SALMON MUSEUM サーモンミュージアム


バンクーバー島にはキングサーモン、シルバーサーモン、レッドサーモン、
チャムサーモン、ピンクサーモンの5種類が季節毎に遡上する。
We Love SalmonFishing!!
世界の釣り事情 カナダ編vol.1 トラウトアンドキング海外釣り専門旅行会社 夷谷元宏
バンクーバー島のサーモンフィッシング
釣り1日目の1匹目の釣果に顔がほころぶ。40センチオーバーのブラウントラウト。
太平洋を隔てて日本の対岸にあるカナダの大都市バンクーバーは、私達にはメジャーな海外旅行先として非常に馴染み深い。そのバンクーバーの目と鼻の先にバンクーバー島がある。バンクーバー島はバンクーバーからジョージア海峡を隔て数十キロの近さで、その島の中にもビクトリアなどの都市があるものの、島の大部分はいまだに美しい自然が残されている。起伏のある森林を縫って川が蛇行して流れ、入り組んだ海岸線の湾に注いでいる。地図を見ると川は毛細血管のように島中を網羅している。その大小の川には私達釣り人が目の色を変えて追いかけるサーモンが遡上する。
ルアーフィッシャーマンのカップルが釣り上げたいいサイズのカットスロート。
太平洋にはキングサーモン、シルバーサーモン、レッドサーモン、チャムサーモン、ピンクサーモンの5種類がいて、バンクーバー島にはそのすべてが季節毎に遡上する。そしてニジマスの降海型であるスティールヘッドやニジマスの近種であるカットスロートも降海したものが遡上する。もともと川にはニジマス、ブラウントラウト、カットスロートなどの陸封型の鱒達が生息していて、水中は年間を通して豊かな生命感で溢れている。サーモンの遡上が安定していて、野生の鱒がこれほど多い地域は世界でも珍しく、ここは地球上でも自然が太古のままに残されていて、生態系のバランスが保たれた数少ない場所であるといえる。美しい大自然に囲まれて、美しい野生の魚達を釣り上げたい。まさにここはそんな釣り人達にとってのパラダイスである。
川に立ち込んで、狙う相手と対等になってフライキャストを繰り返す。派手なフライラインが綺麗な軌跡を描く。
フィッシングツアー海外釣り専門旅行会社のトラウトアンドキングでは、毎年、様々な季節に様々なサーモンや鱒達を狙って、ここ、バンクーバー島を訪れている。季節毎のターゲットをあげると、 年間を通してスティールヘッド、カットスロート、ブラウントラウト、レインボートラウトが住む。9月~10月にはサーモンのなかでも最大サイズのキングサーモンが遡上する。キングサーモンと聞くと釣りをされない方でも名前くらいはご存知かと思われるが、その特大サイズの魚を釣り上げることはすべての釣り人の憧れである。同じ時期、湖を上流に持つ川にはレッドサーモンが遡上する。このレッドサーモンは、鮭鱒のなかでも最も美味しい魚であるとされていて、食用目的の釣り人にたいへん人気がある。10月~11月にはシルバーサーモンが遡上する。このシルバーサーモンは大型で引きが強く、泳ぎが速く、スポーツフィッシャーマンに人気がある。
雨の合間に現れた虹を背景に大物チャムサーモンとファイト。
チャムサーモン、ピンクサーモンは北海道に遡上するシロザケ、カラフトマスで、私たちにはお馴染みである。
今回の旅は、渇水気味の夏の川から一転、秋雨によって水量が増え、遡上したサーモンの活性が上がり、様々なトラウトも狙うことができる、最高の季節に最高のコンディションの魚たちを狙って、秋も深まった11月中旬にバンクーバー島を訪れた。果たして、そこにパラダイスはあったのだろうか。

日本から約8時間の空の旅でバンクーバーへ向かい、小さなプロペラ機に乗り換えてほんの30分で曇天のナナイモ空港に降り立った我々を、敏腕フィッシングガイドのケンジーが出迎えてくれた。挨拶もそこそこにいちばん気になっていた釣りの状況を聞いてみると、先週雨がだいぶ降って今週は水位が下がり始める時なので状況は最高だろうと言うことだ。サーモンとトラウトのパラダイスにベストコンディションで挑めるなんてなんたる幸せ。当然、ロッジへの車中は釣りの話しで盛り上がった。途中の町で数日分のビールやワインを仕入れ、ケンジー所有の美しいロッジに着いた。そこでくつろぐ間もなく荷をほどき、釣りの準備にとりかかった。翌日からの釣りに大きな期待を抱いて。
水面で暴れるスティールヘッドを慎重にネットですくおうとするフィッシングガイド。
いよいよ釣り開始、ロッジのすぐ前のカウチンリバーからボートで下った。目的は、今ちょうど遡上が多いらしいチャムサーモンと、遡上が始まったばかりのシルバーサーモン、それに居付きの大物ブラウントラウトだ。今日のメンバーは私を含め3人で、それらの魚をフライフィッシングで狙う。朝から小雨が降っていて、まだ水量が多いが、前日のガイドからの、「最高のコンディションになるだろう」との言葉にすっかり舞い上がってしまい、天候のことなど全く気にせずに夢中になった。両岸を森に囲まれ、蛇行しながら浅くなったり深くなったりする流れは、水位は高いものの澄んでいて水中がよく見えた。ボートから川の流れの緩やかな場所を見ると、結構な数のサーモンが上流に頭を向けて泳いでいるのを見ることができた。

いよいよ釣り開始、ロッジのすぐ前のカウチンリバーからボートで下った。目的は、今ちょうど遡上が多いらしいチャムサーモンと、遡上が始まったばかりのシルバーサーモン、それに居付きの大物ブラウントラウトだ。今日のメンバーは私を含め3人で、それらの魚をフライフィッシングで狙う。朝から小雨が降っていて、まだ水量が多いが、前日のガイドからの、「最高のコンディションになるだろう」との言葉にすっかり舞い上がってしまい、天候のことなど全く気にせずに夢中になった。両岸を森に囲まれ、蛇行しながら浅くなったり深くなったりする流れは、水位は高いものの澄んでいて水中がよく見えた。ボートから川の流れの緩やかな場所を見ると、結構な数のサーモンが上流に頭を向けて泳いでいるのを見ることができた。
小型ながらやっと出会えた念願のスティールヘッド。
食ったのか、それとも底の岩に引っかかったのか。竿をゆっくり立てて聞きアワセをしてみると、水面にささるラインがゆっくりと左右に動き出した。間違いない、もういちどきっちり竿をしゃくってしっかりと針を口に掛けると、魚は浅い瀬から淵に一気に逃げ込み、リールからラインを高速で引き出して行く。フライロッドは限界まで曲がり、支える腕が筋肉痛になるような強烈なファイトを味わうことができた。その魚のほとんどは、巨大なチャムサーモンであった。エサを食べないサーモンは、目の前に流れてきたフライを、食欲ではなく、興味や威嚇のために咥えるのだ。ブラウントラウトも何度か釣れてきたが、このもともと川に住んでいる魚は食欲旺盛で果敢にフライを追ってひったくって行くので、竿に伝わるアタリは明確で面白い。今回釣れた魚のサイズは50センチ弱であったが、60センチを超えるような魚もこの川には居るらしい。倒木の脇や流れの遅い深場などで、何度か巨大なシルバーサーモンを見かけたが、この日はフライを食わすことができなかった。

このターゲットは後日に期待しよう。1日目としては十分な釣果が得られた。別の川に行ったルアーフィッシングのチームはいいサイズのカットスロートをはじめ、様々な魚種をキャッチしたそうだ。しかし気になることがひとつ、一日中降ったり止んだりした小雨は、帰る頃にはもう小雨ではなくなっていて、夜には強い雨がロッジの屋根をバタバタと叩いた。これから雨が止んで水位が落ちて魚が最も釣れだすはずなのに、自然相手の釣りにはよくあることだ、状況を受け入れて翌日からも思いっきり楽しもう、と思い聞かせてもやっぱり心配ではあった。
雨の中でキャストを繰り返してやっと抱きしめることができた巨大シルバーサーモン。
そして朝が明けると、強く降り続いた雨は止んでいて胸を撫で下ろした。ガイドの提案で、この日はニチナットリバーにスティールヘッドを狙いに行った。スティールヘッドは、ニジマスが鮭と同じように海に下り、成長して遡上した種で、川に上った後でも鮭と違ってよくエサを食べるらしい。遡上数は少なく、狙っても簡単には釣れてはくれない。また、姿かたちも美しくカッコいい魚であるために、釣り人達の憧れのターゲットとなっている。今日はそんな夢の魚とご対面となるだろうか。ダートロードを1時間も揺られて着いた川原は水量が多く少し濁っているが、なんとか釣りはできるようだ。心配していた川原をすべてさらうような濁流ではなくてひと安心。早速フライを流し始めた。魚が付いていそうな流れを丁寧に流すもアタリはない。そこでルアーフィッシングで参加の釣り人が同じ流れにピンク色の派手なワームを流すと、すぐに何度かアタリがあり、とうとう針掛かりにも成功、川を疾走する生命感あふれるファイトの末にスティールヘッドを手にすることができた。サイズは大きくはなかったが貴重な一匹である。釣り人とガイドが寄り添ってその希少なスティールヘッドと記念撮影をした後、リリースされた魚は元気に元の流れに帰って行った。この後もフライフィッシャーマンが待望の一匹をキャッチした。この日の釣果はこの2匹のみとなったが、夢のターゲットを真剣に狙うことができただけに充実した1日となった。
2匹目にかかった魚は鼻が曲がってイカツい顔のオスであった。強烈なファイトを労ってやさしくリリース。
その翌日、また期待は裏切られ雨となった。しかも突風を伴って激しく降っている。釣りのできそうな川を探してガイドと車で山や谷を走り回ったが、どの川も濁流となっていてなかなか竿が出せない。やっとのことで、ここで釣ろうという川が決まった。流れは速くなっているが濁りは幾分か少ない。快適な車から寒くて雨に打たれる外に出るのは億劫で、できることならこのまま温かい車のなかでまどろんでいたかったがそうはいかない。気合を入れて釣りの支度をして橋のたもとから川に入った。しかし流れはゴーゴーと大きな岩にぶつかり白く泡立ち渦を巻いている。こんなところで釣りになるのだろうかと思っていたら、この下流に流れが緩くなる大きな淵があってシルバーサーモンがたくさん溜まっているはずだとケンジーに教えられた。我々単純な釣り人はそんな言葉を聞いたらすぐに舞い上がってしまう。

ケンジーの先導で、濡れて滑る落ち葉が重なり、越えたり潜ったりに骨が折れる大きな倒木が重なる歩き辛い森の中をどれくらい行軍しただろうか、突然、狭い渓谷から一気に川幅が広がり、深く、流れが緩くなって、フルキャストをしても届かないような巨大な淵が目の前に現れた。いかにも魚が溜まっていそうなプールだ。水面をよく見ていると、何匹もの巨大な魚体が水面に背中を出している。また単純な釣り人はこんなシーンを見てしまうと冷たい雨や辛い山道の行軍などは一気に忘れてしまい、目の前の魚に夢中になってしまう。早速、焦りながら3人の釣り人どうしが邪魔にならないように離れ離れになってフライキャスティングをはじめた。ここでは対岸まで距離があるため、できるだけロングキャストができると有利だ。流れが緩いため、フライは流さずにラインを手繰ってフライを泳がせて魚を誘う。そこで、最も長い竿で遠くにフライを飛ばすことができた釣り人に待望のアタリが来た。

竿の先では巨体が暴れて大きな淵中を泳ぎまわっている。ラインを引き出されたり巻いたりの攻防を繰り返してやっとガイドのネットに納まったのは、狙い通り巨大なシルバーサーモン、体に婚姻色が現れたメスであった。その魚をやさしくリリースしてすぐ後に、また同じ釣り人が大物を掛けた。強烈な抵抗を見せて竿を根元から曲げながら上がってきた魚は、婚姻色で体が真っ赤になって、鼻が飛び出してイカツく曲がった立派なオスであった。雨ニモマケズ一心に竿を振って至高のターゲットを抱きかかえることができた。温かいロッジに帰ってケンジーの奥さんがつくる夕食とワインが冷えた体に染み渡った。
釣りの後は快適なロッジで心からくつろいだ。ガイドの奥さんの手料理は絶品。
そしていよいよ最終日、この日はまた夢のスティールヘッドに挑戦しようということになり、全員でニチナットリバーに向かった。水位も落ち着いていて状況もいいようだ、ガイド達も今日は必ずいい結果が出ると期待した。しかし、3人のフライマンと1人のルアーマンがキャスティングを繰り返し、日暮れまでがんばったのだが、結局何事も起こらなかった。

この4日間で我々の今回の釣り旅は終了した。天候や釣果はなかなか予想や期待どおりにはいかないが、その面が逆に自然相手の遊びでは面白いところでもある。自然を敬い、人の手ではコントロールできない状況を受け入れ、そのなかに自分自身を浸して野生の住人達を追いかけることに夢中になることができる釣りは、便利極まりない普段の生活では得ることができない様々な大切なことを教えてくれる。一度こんなすばらしい場所ですばらしい釣りの体験をしたら、これからもずっと続けて行きたいと、熱狂的な釣り師だけでなく、初めて釣竿を握った方々も思うはずだ。地球規模で環境の激変が危惧されている昨今では、これからもそんな私達の相手をしてくれるサーモン達が、遥かベーリング海峡の旅を無事に終えて、毎年同じように川に帰ってきてくれることを願うばかりだ。
夷谷元宏 プロフィール
Ebisudani Motohiro
1996年-97年ニュージーランドに1年間フライフィッシング目的で滞在し、各地を探釣する。釣行記を雑誌に投稿。
1998年帰国後、ニュージーランドソルトウォーターフライフィッシング国際トーナメントに日本チームとして出場。以降3年連続出場。
同年トラウトアンドキングフィッシングツアーを立ち上げ、ニュージーランドヘ釣り人を案内。以降、他のデスティネーションにも自ら足を伸ばし、ニュージーランドだけでなく、アメリカ、カナダ、オーストラリア、メキシコ、コスタリカ他各地へ送客。現在に至る。
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