鮭と食
大正時代に北海道石狩川のサケ漁師たちが、新鮮なサケに薄塩をあてただけの長期保存を目的としない塩引きサケを試作し「新巻」のネーミングで売り出したところ大評判をとり、この爆発的な人気から、「塩引き」という「塩引き」はいっせいに名前を「新巻」として販売されるようになったといわれています。
また、昭和5年頃に日魯漁業株式会社(現マルハニチロホールディングス)が函館の料亭から頼まれ、カムチャッカの漁場で獲れたサケを薄塩にした塩引きをつくったところ好評をうけ、「日魯新巻鮭」として大量に生産し、全国に販売したのが始まりとする説もあります。
塩引きとはサケにかぎらず、魚類を塩漬けにする方法であり、またその魚を意味しましたが、単に「塩引き」というとサケをさすようになっています。ですから「新巻」も「山漬け」もおおきくは塩引きというジャンルに入ります。
なお、「新巻」ネーミングのヒントには「藁巻きサケ」(わらまきサケ)があったのではないかという説があります。
※「藁巻きサケ」とは塩引きサケを藁(わら)ツトに包み、風通しのいい高い所に一匹づつ吊るして干したものです。藁ツトは通気性がよく、ハエを寄せ付けつけず、風味を熟成させる作用があり、「山漬け」の原型とも言われている古来からの加工法です。
新巻は、現在、消費者の減塩志向と生産者の工程の簡便さから、「箱漬け」(「箱切り」ともいう)という簡易型散塩漬けの加工方法が用いられています。貯蔵性は冷凍に依存しています。製造加工方法は各製造業者によって若干ことなりますが、ここでは一般的な新巻の製法をご紹介します。(「北の水産加工事典」北日本海洋センターより)
主として秋サケが用いられ、銀毛の新鮮で外観の良いものを原料としています。
まずエラを完全に除去し、次に肛門から心臓の位置まで開腹して精卵を取り出します。次いでメフン(腎臓)を頭部側からかき取ります。メフンは酵素活性が強いので、残着していると外観と品質を損ねるため、完全に取り去ることが大事です。
腹腔内をブラシ等用いて内臓片や薄皮が残らないように点検して流水中で充分に洗浄し、体表面の粘質物も洗い落とします。とくに、ヒレや頭部の粘質物を洗い流してから水切りをします。
まず箱の底に食塩をふり、腹腔部と頭腔部に少量の食塩を散布して箱に寝かせ、魚体表面に合塩をふりかけます。さらに食塩を散布して魚体を重ね、合塩をして二層に並べます。用塩量は魚体重量20kg(5~9尾)あたり約7%前後となるようにします。
蔵前とも呼ばれ、通常は2~4時間放置して一部食塩の浸透をはかってから凍結しますが、食塩を散布してから直ちに凍結することもあります。
この解凍は消費地の店頭でなされます。常温に放置すると時間とともに解凍が進み、並行して食塩は魚体の表面から浸透します。施塩量が少ないため、魚体表面と皮下部分に若干浸透する程度で精肉の大部分と魚体中心部にはほとんど浸透しません。
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