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2016年11月01日

【産業技術総合研究所との共同研究】 
DHAやEPAの摂取は朝が効果的
魚油による脂質代謝改善効果が摂取時刻によって異なることをマウスで発見

マルハニチロ株式会社【本社所在地:東京都江東区、代表取締役社長:伊藤滋】(以下「マルハニチロ」という)は、国立研究開発法人 産業技術総合研究所【所在地:茨城県つくば市梅園、理事長:中鉢 良治】(以下「産総研」という)と共同で、魚油の摂取による脂質代謝改善効果が、摂取時刻によって異なることを、マウスを使った実験により明らかにしました。

今回、DHAやEPAなどの機能性成分を含む魚油を、マウスに朝食あるいは夕食とともに摂取させたところ、朝食時の魚油が、果糖の過剰摂取によって引き起こされる脂質代謝異常を、より効率的に改善することが分かりました。また、朝食時の魚油の摂取が、夕食時の魚油の摂取よりも、血中のDHAやEPA濃度を高める効果があることも確認できました。この成果は、時間栄養学の成果の積極的な実践による予防医学分野への貢献が期待されます。なお、この成果の詳細は、平成28年11月12~13日に国立大学法人 名古屋大学(愛知県名古屋市)で開催される第23回日本時間生物学会で発表される予定です。

   は【用語の説明】参照

産総研リリースページ
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2016/pr20161101/pr20161101.html

【 ポイント 】

  • 魚油の摂取による脂質代謝の改善効果が、摂取する時刻によって異なることを、マウス実験で発見
  • 朝食時の魚油の摂取は、血中のDHA・EPA濃度を高める
  • 時間栄養学の予防医学分野への貢献に期待
魚油の摂取による血液中と肝臓中の中性脂肪の低減効果(1日の平均値)

魚油の摂取による血液中と肝臓中の中性脂肪の低減効果(1日の平均値)

【開発の社会的背景】

睡眠や深部体温、血圧、糖代謝や脂質代謝など、ほとんどの生理機能には日内リズムがあり、体内時計によって制御されています。近年、疾患の発症や症状、薬物代謝などの日内リズムに着目し、投薬時刻の工夫が行われています。
最近では、食品成分のさまざまな機能性についても、摂取時刻との関連性が指摘されるようになり、疾患の予防や改善をめざした至適摂取時刻に関する時間栄養学的な研究が注目されるようになってきました。

【研究の経緯】

産総研は、体内時計に関する研究開発を行い、生体リズムを利用した時間栄養学の成果を実践することによる健康長寿社会の実現をめざし、食を中心とした生活習慣による積極的な生体リズムの制御や、食品成分の機能性と至適摂取時刻との関係の基礎研究に取り組んでこられました。
これまでに、魚油に含まれるDHAやEPAの心血管障害の抑制効果や抗アレルギー効果、脳機能向上効果、脂質代謝改善効果などの多様な機能性が報告されており、サプリメントや医薬品の有効成分として使用されています。一方、魚油の摂取時刻と機能性との関連性についてはこれまで全く不明でした。DHA研究に長年取り組み、缶詰やフィッシュソーセージなどのDHA関連商品を数多く生み出しているマルハニチロは、2013年より産総研と共同で、魚油の摂取時刻と機能性の関連性についての研究を行ってまいりました。

【研究の内容】

体内時計は、睡眠覚醒や深部体温、血圧、免疫機能、脂質代謝などのさまざまな生理機能の日内リズムを制御しており、薬物の代謝や食物の消化・吸収にも日内リズムが認められます。今回は、マウスを明期12時間・暗期12時間の明暗環境下にて飼育し、脂質代謝の改善効果が期待される魚油について、摂取時刻による機能性の違いを評価しました。マウスを、【魚油を含まない果糖過剰食を与えたコントロール群】と、【夜行性のマウスにとって朝食となる活動開始時間帯を中心に12時間だけ4%の魚油を含む果糖過剰食を与え、残りの12時間は魚油を含まない果糖過剰食を与えた朝摂取群】、【夕食となる活動終了時間帯を中心に12時間だけ4%の魚油を含む果糖過剰食を与え、残りの12時間は魚油を含まない果糖過剰食を与えた夕摂取群】の3群に分け、いずれの群のマウスも自由摂食として2週間の飼育を行いました。その後、血液と肝臓を採取し、脂質の蓄積を調べました。
1日あたりの魚油の摂取量は、朝摂取群と夕摂取群との間に有意な差は認められませんでしたが、血液中と肝臓中の中性脂肪の量は、コントロール群に比べて朝摂取群だけに有意な低減効果がありました。(図1)。
また、魚油の摂取による中性脂肪低減効果は、魚油に含まれるDHAやEPAによると考えられているため、これらの脂肪酸の血液中の濃度を測定しました(図2)。その結果、夕摂取群でもこれらの脂肪酸の増加が確認されましたが、朝摂取群の血中濃度は夕摂取群よりも有意に増加していました。
これらの結果は、朝の魚油の摂取は、DHAやEPAの血中濃度を高め、脂質代謝を改善することを示しています。

図1 魚油の朝摂取による血液中及び肝臓中中性脂肪の低減効果(1日の平均値)

図1) 魚油の朝摂取による血液中及び肝臓中中性脂肪の低減効果(1日の平均値)

図2 魚油の摂取による血液中DHAとEPA濃度の増加(1日の平均値)

図2) 魚油の摂取による血液中DHAとEPA濃度の増加(1日の平均値)

【今後の予定】

今後は、魚油に含まれるDHAやEPAなどの機能性成分の吸収や中性脂肪の低減効果が時刻依存性をしめす分子メカニズムを明らかにするとともに、ヒトについても魚油の至適摂取時刻に関する実証を進める予定です。

【本件問い合わせ先】

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 生物時計研究グループ
研究グループ長 大石 勝隆
〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 中央第6
TEL:029-861-6680 FAX:029-861-6053
E-mail:k-ooishi@aist.go.jp

以 上

報道各位からのお問い合わせ先
マルハニチロ株式会社 広報IR部
Tel 03-6833-0826 Fax 03-6833-0506
Email : koho@maruha-nichiro.co.jp

資料【用語の説明】

◆果糖
清涼飲料水や菓子類などに含まれる糖の一種。脂肪肝や肥満、高血圧、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の原因であると考えられており、先進諸国において大きな社会問題となっている。

◆時間栄養学
「何をどのくらい食べるか」という従来の栄養学に、「いつ食べるか」という新たな視点を加えて、食餌のリズムと食の機能性との関係について研究する新しい学術分野。食の機能性を高めるための至適摂取時刻や、食を利用した睡眠や体内時計の積極的な制御などに関する研究が注目されている。

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