マルハニチロ
高血圧を予防するために

無理なく続けられるDASH食の開発

さまざまな合併症の引き金となる高血圧は、食塩摂取量が多い日本人にとって非常に身近な疾患の一つです。
高血圧の予防には減塩食が一般的ですが、濃い味付けに慣れている人にとっては、減塩食へのハードルが高いのが現状です。
そこでマルハニチロでは、日本人にとって馴染みのある味付けで、楽しみながら無理なく続けられるよう、
「日本人向けDASH食」の開発を行い、その効果を検証しました。

減塩への高いハードル

高血圧の原因は、ストレスや喫煙、肥満など様々ありますが、日々の食生活における塩分の取りすぎも大きな原因の一つです。日本高血圧学会では、1日の食塩摂取量を6 g未満とすることを推奨していますが、もともと塩分摂取量が多い日本人にとって、この目標値を達成することは容易ではありません。

さらに、マルハニチロがお客さまを対象に実施したアンケート(1)では、減塩に対するイメージとして、「減塩した食品はおいしくないと思う」に対して「当てはまる」と回答された方が3割以上で、おいしくない、価格が高いといったイメージから、減塩食の実行・継続には高いハードルがあることが分かりました。

減塩への高いハードル

塩分の排出を促す食事 DASH食

DASH食とは、1990年代にアメリカで提唱された、高血圧予防・改善を目的とした食事方法で、その特徴は大きく2つあります。

  • ミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム)や食物繊維、たんぱく質(血管を丈夫に保つ)を増やす
  • 飽和脂肪酸やコレステロールを減らす

これらの、増やす栄養素と減らす栄養素を組み合わせることで、身体から余分な塩分を排出することを促します。

増やす (平均的な食事の約2倍に)

増やす(平均的な食事の約2倍に)

減らす (平均的な食事の約3分の2に)

減らす(平均的な食事の約3分の2に)

日本人向けDASH食の開発

DASH食は、それぞれの栄養素単独では弱い降圧作用しかなくても、組み合わせることで大きな作用が期待できるため、実感性が高いという利点があります。しかし、低脂肪乳製品やナッツ、シリアル、果物・野菜を多用するアメリカ式のDASH食メニューは、日本人にとって必ずしも実践しやすいものばかりではないため、より身近で手軽な日本人向けDASH食の開発に着手しました。

日本人向けDASH食では、主に以下の点をポイントに開発を行いました。 1)和食を中心にメニュー構成。出汁や香辛料を使い、満足できる味付けに。
2)食材と味付けは日本人になじみ深いものを中心に使用する。
3)中高年の方でも無理なく完食できる量、手軽に食べられる形態とする。
4)減塩を組み合わせて、降圧作用を最大化させる。

減塩への高いハードル

より簡単に無理なく続けられる形態へ 1日1食型DASH食の開発

日本人向けDASH食の効果を確かめるため、2012年に山口大学と共同で行った先行研究では、1日3食型のDASH食について降圧効果を検証し、血圧低下に有効であることを確認しました(2)。しかし、1日3食のDASH食摂取は、食事療法を長く継続する観点からすると、利用者への負担が非常に大きいのが難点でした。
そこで、2016年に行った、山口大学、九州女子大学との共同研究では、1日1食型DASH食の効果を検証しました(3)。
その結果、対照群(DASH食を摂取しない)、DASH食摂取群ともに血圧が低下する傾向が見られましたが、介入期間終了時の血圧は、DASH食摂取群の方が低い値でした(図1、2)。また、起床時の家庭血圧の日間変動(4)は、対照群と比較して、DASH食摂取群で変動幅(ばらつき)が小さいことが分かりました(図3)。

これらの結果より、1日1食型のDASH食であっても、高血圧の予防・改善に効果があることが確認できました。
マルハニチロではこれらの知見を活かし、お客さまの日々の健康をサポートするための研究開発に取り組んでいます。

図1 収縮期血圧(SBP)の変化率
図2 拡張期血圧(DBP)の変化率
図3 起床時の収縮期血圧(SBP)変動の推移
  • ※1 当社中央研究所調べ:
       実施時期…2016年4月
       対象者…京浜地区(東京、神奈川、千葉、埼玉)在住の40~60第男女 当社製品ユーザー107名
  • ※2 参考文献:Hypertension Research, 39(11): 777-785 (2016)
  • ※3 発表実績:第40回高血圧学会総会 (2017)
  • ※4 血圧変動:家庭血圧を用いた日間変動が大きい人ほど、臓器障害(心、血管、腎)、心血管病発症、脳卒中などの発病リスクが高いことが知られています。