マルハニチロ

マグロの脂のりについての非破壊測定法の開発

養殖クロマグロの品質で脂のりはとても重要です。
通常、マグロの脂のりは体重と体長から計算される肥満度や尾を切り落とした身の断面の状態から判断されていますが、
マグロを傷つけることなく、簡便かつ迅速に測定する方法として、近赤外分光分析による測定技術の開発を行いました。

近赤外分光分析とは

近赤外(Nir InfraRed=NIR)光とは、およそ800~2500nmの波長域の光を指します。近赤外光はエネルギーが弱いため、試料を損傷することがほとんどなく安全であること、また、物質を透過しやすい性質を持っていることから、近赤外分光分析は、食品などの非破壊測定(※1)に適していると言えます。近赤外光を物質に照射して得られる、吸収または反射スペクトル(近赤外スペクトル)を用いて、対象物の成分量や物性を測定します。

近赤外分光分析とは

光の波長

測定に使用した機器

近赤外分光分析には、ハンディタイプの近赤外分光分析装置(=NIRGUN)を使用しました。

測定に使用した機器
ハンディタイプ近赤外分光
分析装置(NIRGUN)

実際に測定した結果

近赤外分光分析による非破壊測定を行うには、近赤外スペクトルから算出した予測値と、実際にマグロの身を切り出して脂質量を測定した化学分析値との関係式(検量線)を作成しなくてはなりません。魚体の大きさや出荷季節の異なった20尾以上の養殖クロマグロを分析して検量線を作成し、測定を行ったところ、予測値と化学分析値との間に高い相関(r=0.881)が認められ、測定がきちんと行えていることが確認できました。(2)

実際に測定した結果
脂質含量化学分析値とNIRGUNによる
スペクトル測定値の相関

今後は、この技術を用いて、マルハニチロ養殖クロマグロの特徴を把握し、飼育技術の改善、マグロの品質向上などに繋げていくことを目指しています。また、マグロ以外の水産物や食品の選別、評価など、他用途にも応用していきたいと考えています。

  • ※1 非破壊測定とは:検査する対象物を傷つけることなく、内部の状態等を測定する方法
  • ※2 参考文献:日本水産学会誌 82(5),753-762 (2016)