基本的な考え方

マルハニチログループの事業は、調達から生産・加工、販売まで独自のバリューチェーンで成り立っています。地球温暖化が事業活動に及ぼすリスクとして、水産物の漁場移動や農作物の産地移動、生態系の破壊による水産資源の枯渇を認識しています。こうしたリスクへの対応策として、効率的なエネルギー利用や設備投資を通じてCO2排出低減に努めます。

2030年のありたい姿(KGI)と達成目標(KPI)

マテリアリティ 気候変動問題への対応
KGI(2030年のありたい姿) 脱炭素や気候変動に対して業界における主導的地位を確立している
KPI CO₂排出量削減ロードマップ策定(国内グループ) CO₂排出量削減率(2017年度比:国内グループ) カーボンニュートラル達成(グループ全体*)
ターゲット 目標年 2022 2030 2050
目標値 30%以上
2022年度
進捗
進捗結果と
コメント
2022年9月に策定・開示済 CO₂排出量を2017年度比8.8%削減 カーボンニュートラル達成に向け各種施策実施中
自己評価 ★★★★★ ★★★★☆ ★★★☆☆
責任部署 マルハニチロ(株)経営企画部
サステナビリティ推進グループ

責任者メッセージ

マルハニチロ(株) 経営企画部
サステナビリティ推進グループ
グループ長
佐藤 雄介

当社グループは、気候変動問題への対応として、2030年までにCO₂排出量を30%削減(2017年度比)、2050年までのカーボンニュートラル達成をKPIに掲げ、グループ内で各種取組みを進めています。
しかしながら、当社グループは数多くの製造拠点、物流倉庫を保有しており、その中には経年や構造により太陽光発電パネルを設置できない拠点も相当数あります。また、CO₂排出量の削減技術が具体的に確立されていない漁船も保有していることから、KPI達成は容易なことではありません。グループ内でCO₂排出量削減の手法・技術を共有し、できることから取組みを進めるとともに、取組みの意義を全従業員が理解することが必要不可欠と認識し、一丸となって推進していきます。

マルハニチロの取組み

「脱炭素ロードマップ」に沿ったCO₂排出量削減の進捗状況

2022年9月、当社グループ全体のエネルギー使用量の現状(電力および燃料使用量、電力会社の契約内容など)を把握し、加えて各事業所における太陽光パネル設置や再生可能エネルギー切替の実施可能性を分析し、優先順位をつけ、グループ全体の削減計画として「脱炭素ロードマップ」を策定しました。
本ロードマップは2030年度までを3つのフェーズに分けており、2017年度を基準年にフェーズ(2022~2024年度)ではCO₂削減率10% 、フェーズ2(2025~2027年度)にはCO₂削減率20%、フェーズ3(2028~2030年度)は、CO₂削減率30%以上を目標とし、最終的にはカーボンニュートラルをめざしています。
フェーズ1の初年度にあたる2022年度はオンサイト・オフサイト太陽光発電設備の導入ポテンシャルが大きいと特定された工場・倉庫全拠点に現地調査を実施しました。可能な拠点からオンサイト太陽光発電設備の導入を進め、2022年度は基準年2017年度比8.8%のCO₂排出量を削減しました。

第三者保証

開示データの信頼性確保のため、CO₂排出量データ(スコープ1~3)について、検証機関による第三者検証を受けています。
スコープ1~3に関するデータ(オフセット分も除いたGHGプロトコルに準拠したデータ)、第三者保証報告書は以下をご参照ください。
スコープ1~3に関するデータ
第三者保証報告書

サステナブルなエネルギー活用

2022年度の具体的な取組みとして、オンサイト太陽光・オフサイト太陽光導入対象拠点の電力関係資料、構造計算書などの詳細データを取りまとめ、オンサイト太陽光導入対象拠点では、設置業者による現地調査を実施しました。取りまとめたデータ・現地調査結果をもとに、各拠点で具体的な導入検討を進めています。2023年度は、対象拠点のオンサイト太陽光導入について引き続き進めていくほか、オフサイト太陽光についても具体的に導入を検討していきます。これらの取組みにより、3年間で約23,000トンのCO₂排出量を削減する見込みです。

太陽光発電パネルの設置

(株)マリンアクセスでは、2023年1月に太陽光発電パネルを設置しました。購入電力の一部を太陽光発電で賄うことができるようになり、年間約65万kW、約260トンのCO₂排出量を削減見込みです。

マリンアクセス 外観
太陽光発電パネル

マルハニチロ(株)宇都宮工場では、2021年3月、建屋屋上に太陽光発電パネルを設置しました。購入電力の一部を太陽光発電で賄うことができるようになり、年間約192,526kWh、約86トンのCO₂排出量を削減しました。

宇都宮工場 外観
太陽光発電パネル

TCFD提言への賛同を表明・シナリオ分析を実施

TCFD提言への賛同を表明

2021年7月、マルハニチロ(株)はTCFD提言に賛同を表明し、「TCFDコンソーシアム」へ参画しました。同年、環境省が主催する「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」の参加企業に選定され、養殖事業についてシナリオ分析を行い、分析結果が2022年3月環境省HPにて公表されました。2023年度は、水産バリューチェーンを対象にその他の事業(漁業、水産商事、海外、加工食品、食材流通の各ユニット)についてもシナリオ分析を展開し、気候関連の財務情報開示を実施していきます。

ガバナンス

マルハニチログループでは、サステナビリティ戦略を推進するため、2018年に経営会議の直下にサステナビリティ推進委員会を設置しました。代表取締役社長が委員長を務め、マルハニチロ(株)取締役を兼務する役付執行役員、関連部署担当役員、関連部署長を委員、社外取締役、監査役をオブザーバーとして構成されており、グループサステナビリティ戦略全般の企画立案や目標設定、およびグループ各社の活動評価をしています。
「サステナビリティ推進委員会」は四半期ごとに年4回開催されており、マテリアリティ”気候変動問題への対応”を含む各マテリアリティの進捗を各責任者およびプロジェクトリーダーが報告し、積極的な討議を行っています。
サステナビリティ推進委員会で討議された内容は、少なくとも年4回、経営会議を通じて取締役会へ報告されます。2022年度のサステナビリティ推進委員会における、マテリアリティ”気候変動問題への対応”に関する報告、討議内容は以下の通りです。

委員会開催時期 ”気候変動問題への対応”に関する議題 主な討議内容

第1回
2022年4月

第2回
2022年7月

第3回
2022年10月

第4回
2023年1月

各マテリアリティの推進体制について ”気候変動問題への対応”のKPIだけでなく、TCFD、CDP、Scope 3対応含めサステナビリティ推進グループを責任部署として、各部・グループ会社の環境責任者・担当者を取りまとめ
脱炭素ロードマップの完成・進捗報告 ・国内グループ全体のCO2排出量を2030年までに2017年度比30%削減するロードマップの報告と承認
・脱炭素ロードマップに基づくグループ各拠点のオンサイトPV(太陽光発電)導入検討状況の報告
TCFDシナリオ分析の拡大実施 2021年度の養殖ユニットに加え、漁業・水産商事・海外・加工食品・食材流通 各ユニットでTCFDシナリオ分析を拡大実施

戦略

当社グループは、生産・調達から食卓までの水産物を中心とした幅広いバリューチェーンで事業を行っています。気候変動は水産資源や原料調達への影響や大規模な自然災害による事業活動の停止など、グループの事業に影響を及ぼします。
脱炭素社会への移行に伴い、気候変動によりどのような事業リスクが顕在化し得るかについて、TCFD提言に基づくシナリオ分析を行いました。2021年度は養殖事業、2023年度は水産バリューチェーンを対象にその他の事業(漁業、水産商事、海外、加工食品、食材流通の各ユニット)についてもシナリオ分析を実施し、脱炭素への取り組みが進んだ1.5℃、および特段の緩和対策なく温暖化が進む4℃の世界観においてバリューチェーン全体を以下のとおり幅広く分析しました。

※当社のシナリオ分析内容は下記をご覧ください。
2021年度養殖事業のシナリオ分析
2023年度漁業・水産商事・海外・加工食品・食材流通各ユニットのシナリオ分析

リスク管理

当社グループでは、法務・リスク管理部を中心に、マルハニチロ(株)各部署やグループ各社のリスク管理責任者、リスク管理担当者が連携してリスク管理業務に取り組む体制を整えています。
気候関連リスク・機会の特定・評価は、当社グループの直接操業に加えて上流・下流の全てのバリューチェーンの段階に適用され、短期(0~5年)・中期(5~10年)・長期(10年~)といった全ての時間軸を対象に実施しています。
本プロセスではまず、サステナビリティ推進委員会の下部組織である事務局が、当社の各ユニット企画担当や、事業部門およびグループ会社の環境責任者・環境担当者、コーポレート部門と連携し、リスクと機会を特定するための情報収集、状況の把握を行います。サステナビリティ推進委員会では、気候変動課題についても審議され、事務局より報告・提言された気候変動の影響と対応について評価します。

リスクマネジメント体制図
マルハニチログループ リスクマネジメント体制図

指標と目標

当社グループでは中期経営計画「海といのちの未来をつくるMNV2024」でマテリアリティの一つに”気候変動問題への対応”を定め、KGI(2030年のありたい姿)を”脱炭素や気候変動に対して業界における主導的地位を確立している”としています。そのKPIの一つでCO₂排出量を指標とし、2030年度までにCO₂排出量の2017年度比30%以上削減、2050年度までのカーボンニュートラル達成を目標としています。目標達成に向けて、2030年度までの期間を、更に3つの段階に分け、より細かい目標を設定しています。フェーズ1(2022~2024年度)ではCO₂削減率10%、フェーズ2(2025~2027年度)にはCO₂削減率20%、フェーズ3(2028~2030年度)はCO₂削減率30%以上を目標にしており、最終的には2050年度末までにカーボンニュートラル達成をめざし、さまざまな取組みを進めていきます。

冷凍食品のカーボンフットプリントの算定を実施

冷凍食品のカーボンフットプリント

2023年8月に、当社は環境省が主催する「令和5年度製品・サービスのカーボンフットプリント(以下、CFP)に係るモデル事業」の参加企業に選出されました。同モデル事業におけるCFP算定対象製品として、当社の主力製品である「白身魚タルタルソース」を選定し、原材料調達から製品の使用・廃棄まで、一連のライフサイクルにおけるCFPを算定しました。本製品の特長として、環境に配慮したMSC認証のアラスカ産スケトウダラを原材料に使用しています。アラスカ産スケトウダラを用いて算定したCFPは0.93 kg-CO2eqで、一般的なスケトウダラを用いて算定するよりも、CFPを約17%削減することができました。当社は今後、他の主力製品のCFP算定を進めていくとともに、環境に配慮した原材料を用いた食を積極的に提供し、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでまいります。

CFP算定報告書

CDP「気候変動レポート2023」で「A-」認定

当社は、世界有数の環境情報開示プラットフォームを運営する非営利団体である CDP(本部:英国ロンドン)による「CDP気候変動レポート2023」に回答し、「A-」の評価を獲得しました。CDP気候変動の評価は、CDPが全世界で23,000社を超える企業を対象に調査を行い、企業が気候変動問題にどのように効果的に取組み、開示しているかにもとづきAからD-のスコアで評価するものです。当社は、中期経営計画のマテリアリティの一つとして「気候変動問題への対応」に取組んでおり、2023年にはTCFDシナリオ分析の主要ユニットへの実施やスコープ3算定、温室効果ガス排出量の第三者検証実施とそれらの開示を行いました。CDPを通じた情報開示により当社は、金融機関や顧客などのステークホルダーからのさらなる透明性向上への要請に応えられるように備えていきます。

CDP ロゴ

冷凍冷蔵機器の脱フロン化の推進

マルハニチログループでは、冷凍冷蔵機器の脱フロン化対応を進めています。
マルハニチロ㈱直営工場では、2012年度より順次、主要な冷凍冷蔵設備の脱フロン化を進めており、今後新規導入する主用冷凍・冷蔵機器の100%を自然冷媒機器にしていきます。
(株)マリンアクセスでは、2022年度、冷凍・冷蔵倉庫用の高効率自然冷媒冷凍機で冷却するノンフロン設備を導入しました。こちらは、環境省の「脱フロン・低炭素化社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」として採択され補助を受けています。2022年度は、年間247トンのCO₂排出量を削減見込みです。

ノンフロン冷凍機

その他の取組み

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