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海外最新トピック from NY

ラーメンの次は
蕎麦がくる? 新感覚の
ヘルシー蕎麦に注目

2025.7.25

今、世界ではどんなことが話題になっている?
現地在住リポーターが、これからの食と未来の暮らしのヒントとなるような
最新トピックをお届けします。今回はニューヨークからリポート!

100%蕎麦粉で手打ち
「グルテンフリー」の需要に応える

2000年代に入り、アメリカではラーメンが急速に注目を集め、瞬く間に食文化の一部となりました。起爆剤となったのは、日本での修業経験もあるシェフ、デイビッド・チャン氏による独創的なラーメン。米国では高品質な鰹節が手に入らない現実を踏まえ、ベーコンでだしをとるなど親しみやすい味わいを生み出し、大人気を集めました。現在ラーメン店の数は全米で1500軒近くに昇る(2024年時点)*と言われています。

一方、蕎麦の魅力が十分に知られていないことも現状。そんな中、話題の店が次々生まれるブルックリンのグリーンポイントの一角に2023年秋に誕生した「Uzuki(卯月)」は、ミシュランの星候補に挙がる注目の存在です。

オーナーシェフの小谷修一さんは、東京の居酒屋や蕎麦の名店で修業を積み、NYの蕎麦レストランの立ち上げに招かれ2007年に渡米。以来、アメリカでの蕎麦文化発展に尽くしてきました。
この国で求められる蕎麦の姿を追求してきた小谷さんの店づくりには、いくつかのキーワードが見られます。

小谷修一氏:兵庫県出身。22歳で蕎麦の道に入り、東京「権八」「江戸蕎麦 ほそ川」などで修業後、2007年に渡米。荒れ地や痩せた土地でも育つ蕎麦の強い生命力が世界の食糧危機にどう貢献できるか、宇宙での蕎麦栽培の可能性などをハーバード大学で講演するほか活動は多岐に渡る。© Kenji Yamagata

まず「グルテンフリー」。アメリカを含む世界各国で、グルテンを含む食品を避ける傾向が強まっていますが、蕎麦粉そのものはグルテン含有量がゼロ。つなぎに小麦粉を2割ほど混ぜて打つ二八蕎麦が一般的な中、小谷さんは技術的により高度な、100%蕎麦粉で手打ちした「十割(とわり)蕎麦」でメニューのグルテンフリー化を実現。同時に蕎麦本来の風味を最大限に引き出します。

その十割蕎麦に大胆な「トッピング」を組み合わせた蕎麦メニューは全9品。和風ロースト、コンフィ、北京ダック風の3種の調理法で鴨を楽しむ「鴨塩蕎麦」も人気ながら、マグロやホタテ、ボタンエビ、ハマチなどをたっぷりのせた「刺身蕎麦」ほか、魚介をトッピングした蕎麦を求めて来店する客も目立ちます。

Uzukiの「ウニとイクラの冷やし蕎麦」。魚介類をトッピングした蕎麦には抹茶を練り込み、さらに深い味わいに。©Uzuki

ダイナミックな和の解釈で
新たな蕎麦ファンを広げる

米国商務省の海洋大気局(NOAA)のデータによると、2013年から2022年の間にアメリカ人1人あたりの魚介消費量は、8.12kgから8.94kgと10%上昇。背景には健康志向、サステナビリティへの関心の高まりなどが挙げられ、現代の消費の牽引役となる20~30代は、1990年代から一般に広がった鮨人気の中で生まれ育ち、新鮮な生魚を食べることに抵抗がありません。

これまでもニューヨークに質の高い蕎麦店は存在してきましたが、小谷さんは伝統の日本らしさを強調するのではなく、ダイナミックな和の解釈で新たな客層を呼び込むことを意識。もともと車の修理工場だったというインダストリアルな建築に和の趣を美しく融合させ、近隣の住人や若者がふと身を置きたくなる空間を生み出しています。

天井が高く開放感のある店内。話題の店が次々にオープンするブルックリンのグリーンポイントにある。© Kenji Yamagata

その場所で、蕎麦打ちや活け花教室、音楽ライブなどさまざまなイベントを開催し、和の文化の啓発を絡めながら「コミュニティ」を築くことにも注力。オープンキッチンで働くアメリカ人の若者を育成しながら、これからのアメリカ蕎麦文化の繁栄を目指しています。
「これから先、彼らが独り立ちして蕎麦文化をこの国で担ってゆけるよう、どんどん仕事を任せています」

蕎麦打ちクラスには様々なバックグラウンドをもつ参加者が集う。©Uzuki

グルテンフリーで新鮮な魚介も味わえる、新感覚のヘルシーな蕎麦はアメリカの食文化にどう浸透していくのか。「Uzuki」のこれからが期待されます。

◎Uzuki
https://www.uzuki-ny.com/

片山晶子(かたやま・あきこ)

ニューヨーク在住。米国版フォーブス誌コラムニスト。和食文化の価値を世界に伝える英語のラジオ番組・ポッドキャスト「JAPAN EATS!」の司会兼プロデューサー。コンサルティング、市場調査、講演などを通じてグローバル企業、日本政府への支援活動も展開。

アサリはおいしいだけではなく、
海の環境保護にも役立つ

「漁る(あさる)」ようにたくさん採れることから、この名が付いたとも言われるアサリ。餌を食べる過程がフィルターを使ったろ過器と同じ働きをするので、水質浄化にも役立っています。ところが近年アサリの漁獲量は減少傾向にあります。それはいったいなぜなのでしょうか?

もっと詳しく知りたい人はコチラ
▶︎(https://umito.maruha-nichiro.co.jp/article35/

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