
日本のおいしい魚を巡る
お魚ツーリズム04
冬こそおいしい北国の魚を
朝から夜まで
青森県で満喫!
日本を旅する楽しみの一つが、その土地でしか出会えない魚料理であることは間違いありません。知名度が低く流通にのりにくい魚は、新鮮なまま地元でおいしく消費されています。
日本各地を巡り魚食文化を調査する「日本さかな検定協会」代表理事の尾山雅一さんが、
忘れられないローカルな魚料理をご紹介。知られざる魚食文化を体験する旅へいざないます。

尾山雅一(おやま・まさかず)さん
日本さかな検定協会 代表理事。山口県宇部市出身。早稲田大学日本文学科卒後、広告会社に入社。2009年に日本さかな検定協会を社内起業。出題・解説や副読本のコンテンツ執筆のため全国各地の漁港や居酒屋を行脚し取材。魚食文化の発信をライフワークとする。
三方を海に囲まれた、
豊かな魚食文化が息づく青森県
北国の魚は冬こそ旨い! 厳しい寒さのために栄養を蓄えて脂が乗りますからね。そんな冬の魚を満喫できる旅先が青森県です。

西は日本海、北は陸奥(むつ)湾、東は太平洋と豊かな海に囲まれる青森県は、今でこそ1つの県ですが、江戸時代には青森市や弘前市のある津軽地方と、八戸市や十和田市を含む南部地方とで藩が異なり、方言や文化が異なります。
魚介でいえば陸奥湾は、日本でのホタテ養殖の発祥地として知られますが、今回は南部地方の八戸市にクローズアップしましょう。
イカの一大産地・八戸市は
イカ料理も多彩
八戸市といえばウニとアワビのお吸い物「いちご煮」も有名ですが、一番注目したいのは「イカ」。八戸港はイカの水揚げ量日本一を誇り、“イカの値段は八戸で決まる”と言われるほど。

メインのスルメイカが近海で獲れるのは6〜1月。近年は海水温の変動などもあって不漁が続いており、代替としてアカイカの漁獲量が増えています。冬にはヤリイカが獲れますし、旬の時期に船上で急速冷凍されたスルメイカも楽しめます。

以前「ととけん」にも出題したんですが、イカ料理もこんなに豊富なんですよ。「イカのポンポン焼き」は八戸市の郷土料理で、イカの内臓やゲソをネギや味噌と和えてイカの胴体に詰めて焼いたもの。また、ちゃんちゃん焼きはサケを蒸し焼きにして味噌で味を付ける北海道の郷土料理ですが、八戸市の「イカチャンチャン焼き」はイカの肝の濃厚なコクと旨みが特長です。
脂たっぷりのとれたてサバを
味わうなら冬!
イカと並んで八戸市を代表する魚介が「サバ」です。実は八戸市はしめサバの一大産地。全国でもトップクラスの量のしめサバを生産しているんですよ。

また八戸港は日本のサバの主漁場の最北端とされていて、ここで水揚げされる「八戸前沖さば」がブランドになっています。旬は秋〜冬。寒くなり海水温が下がると脂肪を蓄え、旨み豊かなサバになるんです。
今、日本で販売されているサバの大部分はノルウェー産などの外国産ですが、旬真っ盛りにとれたてを味わえるのは産地ならでは。サバ料理専門店もあり、しめサバはもちろん、サバの冷燻やサバしゃぶ、串焼きサバなどのユニークなメニューも楽しめます。
朝から晩まで鮮魚尽くしも
八戸市なら実現
八戸市を訪れるなら、東北最大級の市場「八食センター」は外せません。鮮魚店がずらーっと立ち並ぶ通りをはじめ、肉、野菜、惣菜、酒など約60店が軒を連ねる食のワンダーランド。買った魚介を炭火で焼いて楽しめる「七厘村」も併設されています。
夜は八戸市中心部の「横丁」へ。狭い路地に小さな店が立ち並ぶ、昭和の風情たっぷりの飲食街です。港町・八戸の盛り場として戦後から続いてきた8つの横丁があり、「ロー丁れんさ街(ろーちょうれんさがい)」「たぬき小路」など名前も個性豊か。ついついハシゴ酒しちゃいます。
でも飲み過ぎはダメですよ、翌朝は朝市が待ってるんですから! 平日なら「陸奥湊(むつみなと)駅前朝市」、日曜は「館鼻岸壁(たてはながんぺき)朝市」へ。「陸奥湊駅前朝市」ではごはんと味噌汁を買って、刺身や焼き魚など好みのおかずを選んで充実の朝食が食べられます。「館鼻岸壁朝市」は普段は何もない岸壁に、3月から12 月までの毎週日曜の朝限定で、約800m に300 以上の店が立ち並ぶ日本最大級の朝市です。イートインの店も豊富で、地元の人々と観光客で賑わいます。

「イサバのカッチャ」とは、魚市場のお母さんたちのこと。売り声は「いがったらかれー」。イカ・タラ・カレイではなく(笑)、「よかったら買ってね」という意味のお国言葉です。元気で働き者の彼女たちにも力をもらえて、想い出いっぱいの魚旅になりますよ。