海外最新トピック from Italy

SUSHI人気が
ピッツァに波及?
フィレンツェで話題の
生マグロのピッツァ

2024.9.30

今、世界ではどんなことが話題になっている?
現地在住リポーターが、これからの食と未来の暮らしのヒントとなるような
最新トピックをお届けします。今回はイタリアからリポート!

焼き上がった生地に、
手の込んだ具材を
“後のせ”するグルメ・ピッツァ

近頃、フィレンツェのピッツェリアで生マグロをトッピングしたピッツァが人気だと聞いて、その店へ。「HORTUS(オルトゥス)」という店名には、野菜畑(オルト)からテーブルへという意味が込められ、メニューには野菜を中心にしたオリジナルなトッピングのピッツァが並びます。その中で異彩を放つのが、生マグロ(キハダマグロ)を使ったピッツァ。

©ピッツェリア「オルトゥス」の店内。野菜畑を謳うだけあって爽やかな印象。

「Terra e Mare(大地と海)」と名付けられたそのピッツァは、サン・マルツァーノ・トマトのソースをベースに、3種の下処理をほどこしたタマネギ、オリーブ、イエローミニトマトのコンフィ、生マグロ、ハーブ風味のマヨネーズがトッピングされています。生マグロは細かくカットしてタルタルに、ハーブ風味のマヨネーズとともに焼き上がったピッツァ生地に散らす、いわゆる“後のせ”です。これは、ひと昔前のイタリアでは、ちょっとありえないものでした。

「オルトゥス」の生マグロをトッピングしたピッツァ「大地と海」

イタリアでピッツァと言えば、トッピングも一緒に高温で一気に焼き上げるファストフード。焼いた後にトッピングをのせるひと手間は、スピード提供の観点から外れます。しかし、1990年代末頃からグルメ・ピッツァ、あるいはコンテンポラリー・ピッツァと呼ばれるムーブメントが起こり、生地を長時間発酵させることで食べ心地は軽く、消化もよくなり、焼き上がった生地にサーモンやキャビア、フレッシュチーズなどをトッピングするスタイルが注目を集めました。

コンテンポラリー・ピッツァの先駆けと言われるピッツェリア「I Tigli(イ・ティッリ)」のピッツァ。チーズをのせて焼き上げた生地の上に、あらかじめ調理した野菜や手間をかけたソース、フレッシュチーズのムースなどをトッピング。

その流れを汲むのが生マグロのトッピングというわけですが、よく考えてみると、クラシックなピッツァにオイル漬けのツナとタマネギという組み合わせがあり、イタリア人からすればそう突拍子もない組み合わせではない様子。

SUSHI職人とピッツァ職人が
共に腕をふるう新業態

もう一つ、生の魚を“後のせ”するスタイルは、SUSHIがイタリアで定着したこととも関係があると言えるでしょう。
以前はサッカー中継をTVで見るときにデリバリーで頼むのは、ピッツァと決まっていましたが、ラジオの視聴者リサーチで、「週末のサッカーTV観戦のお供に食べるのはピッツァ? それともSUSHI?」という質問に対し、ピッツァではなくSUSHIと答えた人が2割もいたそう。

さらにSUSHIとピッツァを両方提供する店が、最近ちらほらと出現しています。日本人からすると不思議な組み合わせですが、ピッツァもSUSHIも手軽に食べられて、しかも家では作らないから非日常感が味わえる。こうして“SUSHI&ピッツァ”なる業態が生まれたのかもしれません。

カンパーニア州の「Napò Sushi & Pizza(ナポ・スシ&ピッツァ)」でコンテンポラリー・ピッツァを実践するピッツァイオーロのアニエッロ・メーレ(左)と経営者のファビオ・クルチョ、ジョジィ・カッジャーノ。©Napò Sushi & Pizza

SUSHI職人ロザリオ・サントピエトロは若く、発想が柔軟。新鮮な魚介を使い、味わいはもちろん彩りも際立つロール(巻き寿司)、ニギリ、サシミを提供する。©Napò Sushi & Pizza

イタリア人にとって今やピッツァと同じくらい気軽に楽しまれているSUSHI。ただ、本物志向の専門店は別として、スーパーに並ぶSUSHIはいまだにサーモンがネタの大半を占めるのが現実です。サーモンのオレンジ一色から脱却すれば、イタリアのSUSHIも真に定着したと言えるかもしれません。

フィレンツェのスーパーに並ぶパックSUSHI。サーモン尽くしと言えるほどその存在感が強い。

◎HORTUS
https://www.ristorantehortus.com/
◎I Tigli
https://www.pizzeriaitigli.it
◎Napò Sushi&Pizza
https://www.instagram.com/naposushiepizza

池田愛美(いけだ・まなみ)

出版社勤務を経て1998年よりイタリア・フィレンツェ在住。食を中心に取材活動に従事。ONAOO(イタリアオリーブオイルテイスター協会)所属プロフェッショナルオリーブオイルテイスター。パネットーネの日本での普及促進を目的とする団体「パネットーネ・ソサエティ」の設立メンバー。

ツナ缶のツナってどんな魚?

ツナ缶のツナとはどんな魚を指すのでしょう?
実はマグロだけのことではなく、ツナ(tuna)はスズキ目サバ科マグロ属に分類される魚の総称です。欧米では用途が似ているカツオ(スズキ目サバ科カツオ属)も同じくtunaと呼ぶようになったそうです。日本でも、「マグロ類=ツナ」とまとめて呼んでいるので、ツナ缶の原料にはマグロとカツオ、両方が存在します。

もっと詳しく知りたい人はコチラ
▶︎(https://umito.maruha-nichiro.co.jp/article59/

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