海外最新トピック from Germany
三ツ星レストランの
シェフが探求する
サステナブルな鯉料理
今、世界ではどんなことが話題になっている?
現地在住リポーターが、これからの食と未来の暮らしのヒントとなるような
最新トピックをお届けします。今回はドイツからリポート!
ドイツのイースターの
定番料理
日本でもここ数年、耳にする機会が増えているイースター(復活祭)。キリストの復活を祝う移動祝日で、今年は3月31日(日)がその日にあたります。ドイツでは、春の訪れを感じる祝日でもあるイースター。「聖木曜日(イースター直前の木曜日)」はドイツ語で「緑の木曜日」と呼ばれ、緑色のものがよく食べられます。たとえばフランクフルト周辺では、7種類のハーブを使った名物グリーンソースをゆで卵に添えたり。場所によっても、プロテスタントやカトリックと教派や伝統が異なるため、ドイツのイースター料理は地方色豊かです。
肉を食べない断食の日に、挽肉と野菜を生地で包んでこっそり食べる南ドイツの伝統料理「マウルタッシェン」。
イエス・キリストが十字架にかけられたとされる聖金曜日は、肉を食べない“断食”の日。水の中で生きている尻尾のある生き物は全て「魚」に数えられ、断食の際にも食べることが許されていたため、今も魚を食べることが多いです。南ドイツでは、肉を食べたくなった修道士が編み出したと言われる、パスタ生地で挽肉と野菜を包み隠した料理「マウルタッシェン」もよく食べられます。
イースターのお祝いのハイライト、日曜日にはカラフルなゆで卵や凝った編みパンを並べたブランチが定番。家族や友人を招いて盛り上がるのです。
鯉はエコ食材の
スターになれるか!?
イースターの聖金曜日に限らず、大晦日やクリスマスイブなどの祝日に魚を食べる習慣があるドイツ。現在ドイツで最も多く食べられている魚はサーモンですが、その昔は魚料理といえば鯉でした。北部・中部ドイツでは、丸ごと茹でた鯉。南ドイツでは、衣をつけて焼いたフィレがハレの日の料理として食卓にのぼることが多かったそう。
ミシュラン三ツ星のレストラン「ルッツ」エグゼクティブ・シェフで、“鯉インフルエンサー”のマルコ・ミュラーさん。©RUTZ
しかし、独特のにおいが気になったり、骨が多く食べにくいこともあって、徐々に鯉を食べる習慣は薄れていきました。そこに現れたのが、「鯉インフルエンサー」のマルコ・ミュラーさん。2020年から、ベルリン市内唯一のミシュラン三ツ星を守り続けているレストラン「ルッツ」のキッチンディレクターであり、シェフです。
温度と湿度管理されたレストラン内の庫内に吊るして、ドライエイジング中の鯉。©RUTZ
「今では養殖場の水質や餌も改善されているので、鯉の味や香り、色も格段に良くなっている」と、ミュラーさん。環境面からも、遠く離れた海で獲れた魚を冷凍して輸入するよりも、地元のおいしい鯉を食べる工夫をした方が良いと鯉料理に力を入れています。2022年秋に開催された「ベルリン・フード・ウィーク」では、低温で乾かしながら熟成させるドライエイジング加工を施した鯉を提供し、集まった食通を唸らせました。
ベルリン近郊ミューリッツで、小さな甲殻類を食べて育つ鯉の肉は、みずみずしい赤色。活〆にし、大きな骨を避けて部位ごとに解体して調理する。©Marco Müller, Rutz
骨が多いことが難とされる鯉ですが、「解体して、それぞれの部位に適した調理を施すことでおいしく食べられる」とミュラーさん。背肉は生でタルタルに。腹は大きな骨を生かして骨付きリブのように切り出し、卵巣はカラスミのように塩漬けして乾かす、残った身は麹で発酵させて魚醤にと、丸ごと使い切ります。アイデアは尽きることがありません。
鯉の“骨付きリブ“肉は鯉のガルム(魚醤)とブラウンシュガーで2時間ほどマリネし、さっとグリルする。ガルムにマスタードや卵黄を混ぜたソースをかけて。©RUTZ
環境負荷だけでなく、エネルギー価格高騰による輸送費の値上がりからも、地産地消に再び注目が集まっている今、鯉がエコ食材のスターになれる日は近いかもしれません。
乾燥、熟成させた鯉の背肉の塩麹漬けタルタル、鯉のガルム(魚醤)、卵巣のカラスミ風などをエルダーフラワーのヴィネグレットと共に。©RUTZ
◎Rutz
Chausseestraße 8, Berlin, 10115, Deutschland
https://rutz-restaurant.de/
河内 秀子(かわち・ひでこ)
東京都出身。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学卒。2003年から雑誌のライター、テレビ番組のコーディネーターとして活動。ドイツ、スイス、オーストリアなどドイツ語圏のデザイン、美術、料理から旅まで幅広く執筆、担当している。
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