マルハニチロおさかなポスターについて

「おさかなポスター」は、「おさかなカレンダー」とともに旧大洋漁業時代の1980年頃に誕生し、リニューアルを経て現在にいたります。

魚のイラストは、制作開始当初よりイラストレーターの鈴木勝久氏にお願いし、社員が調達した新鮮な魚をモデルにして、生魚に近い精密なタッチで描き下ろしていただきました。その数は30年の間で約500種。写真よりも魚らしいイラストのポスターは、市場や鮮魚売り場、博物館、また海外からも高い評価を得ています。

スーパーマーケットなどでは一匹そのままの魚を目にすることが少なくなりました。ご家族皆様でこのポスターを眺めながら魚の美しい形や色、おいしい食べ方などを知っていただければと考えています。

「世界においしいしあわせを」お届けするために、マルハニチロはおさかなの魅力をお伝えする活動をこれからも続けていきます。

鰹・鮪シリーズ

古事記や万葉集をひも解くと、かつお(堅魚)、しび(斬昆、鮪)など当時の呼び名でカツオ、マグロが登場します。マグロの価値観や食べ方は時代によってずいぶん異なり、江戸時代は赤味が好まれ、脂のあるトロは下品であるという風潮でした。カツオも鎌倉時代までは上流階級の人々は口にせず、もっぱら庶民の食べ物として、それも干したものばかりで、常備食、旅の携帯食品として用いられていました。

マグロの仲間はみごとな紡錘型の胴体をもち、それでいてスマート。堂々とした半月型の堅い尾びれで水を左右に打ち、かなりのスピードで前進します。ちなみにそのスピードは、マグロで瞬間速度が時速90Km、カジキは時速130Kmといわれています。

鯛シリーズ

タイ(マダイ)は、日本書紀や古事記をはじめとする多くの古文書にその名前がみられます。永い間親しまれてきたのは、赤い色や豪華な印象を与える姿形、味などが、日本人の好みにぴったり合ったからでしょう。なかでもよく食べられるのが、「タイ6種」と呼ばれるマダイ、チダイ、ヘダイ、キダイ、クロダイ、キビレ(キチヌ)です。

タイといえば体型が似ているために、何々ダイという名前がつけられている魚たちも少なくありません。たとえばキンメダイ、イシダイなど。これらは厳密にいえば、タイの本当の仲間ではありませんが、私たちの暮らしに大事な海の幸といえます。

鮭・鱒シリーズ

1980年代後半の世界的なサケの養殖ブームにより、サケは一気に庶民の味方となりました。脂のり、鮮度、赤い身色、手ごろな価格と4拍子そろった養殖サケは生でも焼いてもおいしいため、たちまち市場での地位を確立しました。一方、日本国内でもサケのふ化事業に成功。今ではさまざまな種類のサケたちが、天然あるいは養殖、生あるいは冷凍などいろいろな形態で世界の市場に出回っていて、マルハニチロでもその多くを扱っています。

ちなみに、マルハニチロのさけ缶「あけぼの さけ」の原料はカラフトマス。100年超の歴史を誇り、これまで約39億缶が食された超ロングセラー商品です。

海老シリーズ

エビの体色は非常に微妙です。生息する場所によっても異なり、捕獲後も刻々と変化します。「海老」シリーズに描かれているものは、生きているときに近い状態のものです。エビの仲間は世界中に約3,000種棲息しているといわれ、クルマエビのような“遊泳性”と、イセエビのような“歩行性”とに大別されます。そのうち150~180種ほどが食用されているとみられ、日本にも約100種が輸入されています。

海外のクルマエビ科のエビは、ブラウン、ホワイト、ピンク、バナナなど体の色で名前の付くことが多く、銘柄品はその上に原産地名が加えられてメキシコブラウン、ギアナピンク、インドホワイトなどと呼ばれます。縞模様が強いブラウンの仲間は例外的に“タイガー”と呼ばれ、そのうち特に体色の濃いものにブラックが冠せられました。近年需要が高い“バナメイ”は、ホワイトの仲間です。

蟹シリーズ

タラバガニとズワイガニといえば、冬の味覚の王者。どちらも日本人になじみの深いカニです。タラバガニの漁場はオホーツク海、カムチャッカ半島、ベーリング海、アラスカ沿岸まで広がります。

タラバガニは厳密にはカニの仲間ではありません。ヤドカリに近い種で、エビからカニへと進化する途中の種です。ズワイガニは北海道沿岸から日本海沿岸全域、さらに韓国沿岸に広くつながり、地方によって呼び名もさまざま。鳥取や島根ではマツバガニ、福井ではエチゼンガニと呼ばれます。

青物シリーズ

サンマ、サバ、イワシ、アジなどの「青魚(あおざかな)」、いわゆる背の青い魚を集めました。イワシはニシン目、これほど重宝する魚はめずらしく、ダシをとるのに使われる煮干用の小さなものから、メザシ用の中型、さらには寿司ネタになるような大ぶりのものまで種類も豊富です。サバはスズキ目、新鮮なものは酢でしめて、しめサバにしたり、味噌煮にしたりと、脂ののったうまさは天下一品です。

アジもスズキ目、マアジを筆頭にムロアジ、シマアジ・・・など、たたき、三枚におろしたヌタ、その骨を油にくぐらせた骨せんべいなど、これまた捨てるところのない重宝な魚です。サンマはダツ目、丸々と太った長く青光りした姿を見ると、あゝそんな季節なんだな、と思わず食指が動きます。

赤物シリーズ

文字通り、鮮やかな赤い魚たちを集めました。その代表格がマダイです。マダイというと、かつて瀬戸内海では「浮きダイ」という現象がみられました。春を迎えて、外海から瀬戸内海へ産卵にやってくるタイが広島県能地の地先にかかると、激しい潮流にもまれて体の自由を失い、それに気をとられるため浮き袋の調節ができなくなって浮きダイになります。

明治の終わりごろまで、漁師たちはシーズンになると、それこそ150キロから200キロ、ときには300キロものタイをすくいあげたということです。

烏賊シリーズ

地球には約450種類ものイカ類が棲んでいます。そのなかで食用になるなど、人間にとって役に立ってくれるイカは約100種類。これらは大きく、ずんぐりした団子状の甲イカ類と、細長い形の筒イカ類に分けられます。甲イカ類は身が厚くて甘みがあり、筒イカ類は上品でややさっぱりとしたほどよい甘さがあります。寿司店でしか出てこないような高級な筒イカが、アオリイカ、ヤリイカ、ケンサキイカの3種類です。

日本で一番多く漁獲されているのはスルメイカ。「スルメ」というのは本来イカの干物のことをいいましたが、それにもっても適していることから「スルメイカ」の名がつきました。

鱈シリーズ

世界中におよそ400種余りいるとされるタラ類のうち、日本での代表格はマダラです。でっぷりと腹のふくれた堂々とした体、金粉をまきちらしたような豪華な体色はまさにタラの王様といえます。スケトウダラは、鮮度の低下が早く、水揚げのほとんどがちくわやかまぼこ、魚肉ソーセージの原料「すりみ」に加工されます。

タラコの親は実はマダラではなく、このスケトウダラです。マルハニチロでは主に北米のベーリング海でスケトウダラを漁獲し、すりみ・フィレー(切身)に加工して世界のマーケットに販売しています。

平目・鰈シリーズ

昔から「左ヒラメの右カレイ」と言われていますが、実はこの見分け方でもたくさんの例外があります。淡水にいるヌマガレイなどは眼が左側にあったり、ボウズガレイなどは眼が左か右か定まっていません。ヒラメやカレイが他の魚と決定的に違っている点は、外見上の平べったい体形もさることながら、特に卵から成魚になるまでの成長過程の不思議さにあります。

つまり、小魚のころのヒラメやカレイは、体の姿かたちは他の魚たちと同じで、眼もちゃんと頭の両側についています。これが成長するにしたがって、片方の眼が少しずつ反対側へ移動し始め、ついに両方の眼が、頭の左右どちらか一歩に並ぶようにして位置することになります。

貝シリーズ

日本人ほど貝好きで、多種多様な貝を食べる民族はないそうです。なかでもハマグリは、太古の昔から食されていて、各地の貝塚で発見されています。ハマグリは、貝殻の大きさ、形が一つずつ異なり、そのちょうつがいを外すと、何万何千と貝があっても、もとの貝としか合いません。合わせてピタリと重なるのが一対だけということから夫婦和合の象徴となり、今日でもおめでたいものとして、正月、結婚式、ひな祭りなどにはハマグリの吸い物が登場します。アワビも古くから日本人に親しまれ、「魏志倭人伝」にも「倭人は好んで魚鰒(アワビ)を捕え」というくだりがあります。慶事の進物につける「のし」の風習は、アワビを熨(の)して乾燥させたものに由来します。

北方物シリーズ

太平洋、日本海、オホーツク海の3つの海に囲まれた北海道周辺、さらにはベーリング海域で獲れる魚たちを集めました。ニシン、タラ、カレイ、ホッケ、カジカ、ヤナギノマイ、コマイ、アカエイ、ハッカクなど、多士済々の個性派たちが季節を告げるように水揚げされます。ほかにも、キンキ、ハナサキガニ、シシャモ、シマエビなど、北の海特有の荒波にもまれてキリリとボディーをひきしめた、味な個性派が勢ぞろい。

北の海の魚の賞味は“野趣”をもって最高とするのは昔も今も変わりません。ルイベ、軍艦焼、石狩鍋といった料理法はそのヒビキ自体に、繊細なグルメ感を圧倒する、母なる味覚の存在感を漂わせます。

以西物シリーズ

黄海・東シナ海で操業する底びき網の漁業を「以西底びき網漁業」といい、「以西物」というのは、以西底びきで漁獲される魚介類のことです。東シナ海と黄海は、中国大陸、朝鮮半島、九州、沖縄列島、台湾に囲まれた水域で、揚子江など多くの河川により多量の栄養分が流れ込む豊かな海です。また、全体の70%が水深200m以下と浅いうえに、海底のほとんどが砂泥質のため底びき漁業に適していて、マルハニチロでもかつてこの漁業に従事していました。

全盛期の昭和30年代には年間30~40万トンもの水揚げを誇った以西物ですが、その後の沿岸国の規制強化などにより、今では漁獲量も大きく減少しました。

養殖物シリーズ

マルハニチロでは持続的な水産資源の活用をめざし、クロマグロ、カンパチ、ブリ、ナマコなどの養殖に取り組んでいます。なかでも、国際的に資源枯渇が懸念されているクロマグロは、その養殖技術に高い関心が集まっています。マルハニチロは30年以上にわたって、国内クロマグロ養殖に取り組んできました。人工ふ化させた卵から育てる「完全養殖」にも挑戦し、2015年から商業出荷を開始。その翌年には完全養殖クロマグロの新ブランド「BLUE CREST」が誕生し、本格商業出荷が始まりました。

今や日本の食卓に欠かすことのできない養殖魚。いつ、どこで、誰が育てた魚なのか、生産履歴がはっきりとわかる安全で安心な魚たちです。

黒潮シリーズ

黒潮に乗ってやってくる南の魚を集めました。その代表格はなんといってもホンガツオです。カツオは季節によって味わいが変わります。春に出てくる初ガツオは、脂が少ないのでたたきがおすすめ。秋に出てくる戻りガツオは皮を引いて刺し身にするのが一番です。カツオ節の原料でもあり、伝統ある日本のダシ文化継承にカツオは欠かせません。

他に「黒潮」シリーズに連なるのは伊豆七島の周辺で獲れる魚たちです。色とりどりではあるものの、どこか日本的な顔立ちをしています。

江戸前シリーズ

東京湾を代表する魚たちを集めました。江戸時代、江戸前とは文字通り、「江戸の前方、つまり“江戸の前面にある海”を指す言葉で、江戸の近海で獲れる新鮮な魚介類を“江戸前”と称した」そうです。また、食の風味や人の性質など江戸の流儀全般を「江戸前」と呼んでいたそうです。日本の文化を象徴する言葉のひとつとして、今では「江戸前」は国際単語にもなっています。

マルハニチロは2011年から東京湾に面する「豊洲」に本社を構え、いわば江戸前が地元です。「活き」で「粋」な「江戸前」シリーズをお楽しみください。

淡水魚シリーズ

古くから、日本の食文化において淡水魚は重要な役割を果たしてきました。平安時代に著された「延喜式」には朝廷への貢物として、アユ、フナなどの川魚のすしを納めさせたという記録があります。ご飯と一緒に魚を漬け込み、乳酸発酵を起こす、いわゆる熟れずしで、日本のすしのルーツといえるものです。

また、海から離れた京の都では、琵琶湖の魚たちが重宝しました。その料理法は姿形を変えながら日本中に広まってゆき、日本独自の繊細な食文化をつくり上げました。

ポスター内おさかな掲載例

「マルハニチロおさかなポスター」では下記のような情報を掲載しています。

~「マルハニチロおさかなポスター 『鰹・鮪』」より抜粋~

別称 ホンマグロ、メジ・マメジ・ヨコワ(若魚)、シビ(マグロ類全般を指す古語)
分類 スズキ目 サバ科 マグロ属
体長 3m
分布域 北海道以南の日本近海。北太平洋および北大西洋(地中海を含む)
特徴 目が小さい点、胸鰭が短い点から、他のマグロ類から区別できる。体重は約700kgに達するが、これはカジキ類と並んで硬骨魚類最大級である。英名のBluefinは、生時には鰭に青みがあるため。和名の「クロマグロ」は死ぬと体が黒くなることから。5~7月にかけて、沖縄・台湾近海で産卵し、日本近海で育った若魚は太平洋を横断して北米西岸に達し、成長しながら再び日本へ戻る回遊を行う。
料理法 牛のように、体の部位ごとに名前がつけられており、それぞれ味や用途が異なる。また、最高の味を引き出すために、決まった温度帯で「熟成」を行う点も同様。赤身は鮮紅色で、甘みと酸味のバランスの取れた味とあいまって、まさに江戸前寿司の華的存在である。また、脂の乗った「トロ」は、戦後日本人の味覚が変わって人気が出たものという。

~「マルハニチロおさかなポスター 『海老』」より抜粋~

別称 ホンエビ(山口)、マダラエビ(愛知)、マエビ(広島)、ハルエビ(石川)
分類 十脚目 クルマエビ下目 クルマエビ科 クルマエビ属
体長 オス19cm、メス22cm(最大28cm)
分布域 北海道南部以南の日本。その他、韓国、中国、東南アジア、北オーストラリア、インド、アラビア半島、東アフリカ、地中海西部など
特徴 体を丸めると車輪のように見えることからこの名がある。尾扇は、赤・青・黄に彩られ美しい。西部太平洋からインド洋の暖海域に広く分布するが、日本以外での産量は少ない。内湾の浅い砂地に好んですみ、昼間は砂底に潜り、夜出てきて活動する、雑食性で、小さな動物から藻類まで幅広く餌とする。6~9月にかけて産卵し、水中に保たれた卵は半日で孵化し、脱皮を繰り返しながら約10日間のプランクトン生活を送った後、親と同じ姿になって着底する。寿命は1年半から2年半。天然物は春~夏に多く、養殖物は、瀬戸内、九州、沖縄、中国などから周年入荷する。
料理法 姿・味・加熱後の発色共に良く、寿司、刺身、天ぷら、塩焼きなど、日本料理の最高の素材とされる。型の大小にかかわらず味は良い。また、天然物と養殖物とで価格の違いもない。市場では20g以下(10cm以下)をサイマキ、20~40g(10~15cm)をマキ、それ以上をクルマと呼び、さらに100g以上(20cm以上)の大型を特にオオグルマ(大車)と呼ぶ。

~「マルハニチロおさかなポスター 『烏賊』」より抜粋~

別称 ゴトウイカ(九州)、アカイカ(関東)、ケンザキイカ
分類 青森以南の日本各地。東南アジア~オーストラリア北部に広く分布
胴長(外套長) 50cm
分布域 北海道南部以南の日本。その他、韓国、中国、東南アジア、北オーストラリア、インド、アラビア半島、東アフリカ、地中海西部など
特徴 ヤリイカに似るが、本種の方が胴は太めで、足も太くて長い。また、スルメイカより暖かい海域を好む。一方、本種の別タイプのブドウイカと較べると全体的に細めで、また大型になる。また、ブドウイカが秋から冬にかけて出現するのに対して、本種は春から夏に大群で現れ、海底の砂地に、200~400個の卵が入った10~20cmのカプセル状の卵嚢(らんのう)を1尾が50本位産む。釣りや定置網で漁獲され、九州西部と五島列島で特に多産する。生時は透き通るような白色で、水揚げ後強い赤味が現れる。
料理法 身には強い甘みと適度な歯ごたえがあって、味は極上。刺身が一番だが、天ぷら、煮付けも美味。また、本種のするめは「一番するめ」「五島するめ」と呼ばれ、イカ類の中で最上のものとされる。

イラストレーターのご紹介

鈴木勝久氏

プロフィール

1942年東京都世田谷生まれ。文化学院大学部美術科卒業(油彩、水彩、エッジング、木版画、デザイン、イラスト、陶芸、彫刻を学ぶ)。広告イラスト・ポスター・カレンダー・カタログ・パンフレット・出版など幅広いジャンルに制作発表している。

日本ワイルドライフアート協会会員。マルハニチロ(旧大洋漁業)では1980年から、お魚図鑑ポスター・カタログ・カレンダーを制作発表。

マルハの社員が全国から取り寄せた新鮮な魚をモデルに、時には生きたまま水槽で泳がせながら観察し、独自の魚イラスト表現を確立。リアルで味のあるタッチを残しつつウロコの数まで忠実に描き続け、現在までに約500点近い作品を制作。1991年、鳥羽水族館にて初のポスター・カレンダー原画展開催。1998年モナコ海洋博物館にて"ILLUSTRATIONS SCIENTIFIQUES DESSINS NATURALISTES"(イラストレーション・サイエンティフィック・デザイン・ナチュラリスト)展に招待出品。

鈴木勝久氏
受賞歴
モダンアート展6年連続入選(油彩)、日本新聞広告賞グランプリ(寛文五年堂)・優秀賞(エーザイ)、日本産業広告賞シリーズ部門 一席(富士通)、読書推進運動協議会読書週間ポスター 優秀賞、郵政公社国際交流親善切手デザインコンクール佳作
イラスト提供
「お魚食材図鑑(つり人社)」「釣魚大全(アスキー刊)」「おさかな食材絵辞典(PHP)」「しぜんシリーズ『うなぎ』(フレーベル館)」「ナショナルジオグラフィックス 『くじら』『さめ』」、広辞苑第5版・6版/CD-ROM刊行/挿図制作に参加、他多数
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