少量でも高栄養な「おいしさ」を求めて

マルハニチロのメディケアコントラクト営業部で、介護食の企画・普及・販売促進に取り組む儀間詩織(管理栄養士)。「おいしさ」と「少量高栄養」、そして「誰でもつくれる」をテーマに日々奮闘中。介護の現場やイベント、学会にも足しげく通い、そこからさまざまな課題を抽出、実勢に即したソリューションを心がけている。自社製品を使ったメニュー提案なども数多く行う。
「これ、おいしい! ! その一言が私たちの原動力です」
介護食*。その商品開発とマーケティングを担う、メディケアコントラクト営業部スタッフの声である。
*当社のシリーズ名は「メディケア食品」。
介護食だからこそ「おいしさ」にこだわりたい。それは、完食して欲しいから。
必要な栄養素をきちんと摂って欲しいから。そして、食事そのものを楽しんでもらいたいから。
だが高齢化が進み、いまや独居老人宅や老々介護世帯が急増。また介護施設の厨房なども人手不足に陥っている。
おいしいゴハンを、丁寧にこしらえてくれる人手が、絶対的に足りない。
一方で高齢者は1人ひとり「かむ力」が異なる。やわらかいものしか食べられない人には、料理を砕きペースト状にしたうえで提供するという配慮が要る。
だが、ミキサーにかける際には水を加えなくてはならないので、量が増え、味気もなくなり、結果、完食してもらえない。必要な栄養を摂取できない。
在宅を含め、介護の現場では、こんなジレンマを長年抱えてきた。
2000年代より、「骨なし魚」などを病院向けに開発・製造・販売し、グループを挙げて介護食に取り組みだしていた当社。担当スタッフは各々、病院・介護の現場を訪ね、利用者の生の声に耳を傾けていった。現場での試食やヒアリングを重ね、これらの評価や意見を工場に持ち込んで試作・落とし込み・生産確認を繰り返す。
そして2005年、「やさしい素材」シリーズを発表。魚ムース・肉ムース・野菜ムース・野菜ゼリーなどを世に送り出した。以後、ラインアップを拡充し、現在では総勢170品目、施設向けの冷凍介護食シェアは20%を超えトップを走っている。が、まだまだ課題も少なくない。在宅向けの販路は、まだ街中の店舗で買いにくいのが実情だ。あるいは「料理は手づくりに限る」という人々の、既製品への偏見も払拭していかねばならない…。
超高齢社会を目前に、プロジェクトは、緒に就いたばかりだ。



「やさしいおかずセット」(写真①)は、病院や施設での深刻な人手不足の手助けに、高栄養かつ残さず食べていただける美味しさ、簡便性を追求した商品である。「たんぱく21シリーズ」(写真②)は高齢者に不足しがちなたんぱく質を商品100g中に21g以上含有。常食とほぼ同等のたんぱく質を摂取できる。
この他にも見た目はそのまま、おどろきのやわらかさの「New素材deソフト」、加熱してもとけない「やさしい素材 とけないゼリー野菜」、盛り付けるだけでなじみの小鉢の一品ができる「やさしいおかず 惣菜ムース・ゼリー」などを販売している。
- 容易に
かめる - 歯ぐきで
つぶせる - 舌で
つぶせる - かまなくて
よい
高齢・病気などでかむ力が弱くなった人向けに加工された食品。日本介護食品協議会が規格を定め、食品のかたさや粘度に応じて上記の4段階に区分。 適合した商品には「ロゴマークと区分」が表示される。
2022年6月時点の情報です