もっとわかるヒストリーvol.5 【マルハニチロ】
震災を乗り越え、石巻の地で再び。未来をつなぐ新石巻工場

マルハニチロの冷凍食品事業の基幹工場として操業していた旧石巻工場は、2011年3月11日の東日本大震災によって甚大な被害を受けました。
深刻な状況の中、復興へ向けて、マルハニチロは新石巻工場の建設に取り組み、幾多の困難を乗り越えた結果、
現在では震災前を超える規模で生産しています。震災発生から現在まで、石巻工場のあゆみをお伝えします。

東日本大震災発生、被災した石巻工場は「希望の光」に

旧石巻工場は、旧ニチロが1946年に開設した冷凍食品事業の基幹工場です。
天ぷらの揚げ方などの熟練の従業員によって支えられる生産が特長で、
「いかの天ぷら」、「白身魚タルタルソース」など主に弁当カテゴリーの主力生産工場であり、
地元に根差した工場として、地域の皆さんに親しまれてきました。

ところが、2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災が発生し、旧石巻工場を激しい揺れが襲いました。
すぐに従業員約200名は裏山へ避難しましたが、地震発生から約1時間後には、工場の屋根のすぐ下まで津波が到達。
夜になると、工場周辺では火災が発生し、地域は炎に包まれました。
幸いにして工場自体は火災を免れたものの、がれきやヘドロが埋まり、3棟中2棟が全壊。
かろうじて1棟だけ骨組みが残っていたという状態でした。

甚大な被害により生産ができないという厳しい状況の中、どのように対応すべきか。
協議の結果、マルハニチロは「今いる人たちの仕事場をなくしてはいけない。
できる限り雇用を守り続けていかなければ」と石巻の地で復興を目指すことを決めました。
こうして復興にかける強い想いと多くの方々の温かい支援を受けて、震災からわずか5ヵ月で旧石巻工場は再稼働を果たします。
周囲は何もない状態で、夜間に旧石巻工場が放つ照明は、地元にとって復興の象徴となる「希望の光」と言われるようになりました。

しかし再稼働を果たしたとはいえ、その生産規模は震災前の約4分の1。
旧石巻工場が立地する門脇町は、国の復興計画によるスーパー堤防計画地の中にあり、事業継続が困難となりました。
そのため、石巻工場に代わる新工場建設の検討が始まりました。

旧石巻工場夜景(日和山(ひよりやま)より2011年8月9日)
2017年2月に稼働を終了した旧石巻工場(2015年、日和山(ひよりやま)から撮影)
日和山展望台設置の案内板:2011年3月11日 マルハニチロ従業員が日和山に避難した際の写真とともに東日本大震災について記載されています。

70年にわたって支えられてきた、地元・石巻に貢献し続けたい

新工場の建設地として、石巻市以外にも色々な候補地が検討されました。
石巻市に消極的な意見としてもっとも大きかったのが、リスク管理上、被災した場所にもう一度建てることへ難色を示す声でした。

しかし、長年にわたって支えられてきた石巻で引き続き操業し、雇用創出などを通じて地域社会に貢献することがマルハニチロにとって最良の選択であり、
また震災により各地への異動を余儀なくされていたグループ従業員を地元へ復帰させたいという想いがありました。

さらに、国内の工場でトップクラスと評価されていた石巻工場の生産性の高さは熟練の従業員によって支えられていたことから、
石巻の地で生産を継続したいという想いもありました。こうした中、津波の被災リスクが少ない、
石巻市内陸部の農地(須江地区)を産業用地にする計画が持ち上がりました。社内では何度も議論を重ね、最終的には、
「70年間工場があった場所でマルハニチロを心から愛して働いてくれる人(ひと)を大事にしたい。復帰できる場所をつくろう」
という強い考えにより、石巻に決定しました。石巻にはマルハニチロが誇れる人財があったこと。
その人たちを大事にしたいというのが最大の理由だったのです。

作業が多い工場のため、従業員の技術は大きな財産です。従業員の存在が新石巻工場建設の大きな理由となりました。

未来へつなぐ冷凍食品の基幹工場として、進化を続ける

新石巻工場は内陸に約10キロメートルの距離にある石巻市須江地区に建設され、機能・生産能力を大幅に増強した、最新鋭の工場です。
無人搬送車やロボット等の省人化設備や、ICタグやバーコードによる自動認識技術を活用した新生産管理システムなどを導入し、
エネルギーの見える化など環境に最大限に配慮された設備で、マルハニチログループ内における最新のモデル工場として2017年4月に稼働しました。

多くの関係者の熱き想いがひとつに結集して完成した新石巻工場。当時の従業員約240人には、
旧石巻工場から継続して勤務している従業員のほかに、帰還した方、新規採用の方が含まれていました。
山形県にあるマルハニチロの別の工場から復帰した従業員は「絶対戻るという気持ちがあったから、知らない土地でも頑張れた」と当時を振り返ります。

新石巻工場が稼働して5年以上が経ち、生産量は徐々に増加している状況です。直線的な生産ラインは効率的で生産性が高く、
現在は家庭用冷凍食品のフライ・天ぷら、業務用冷凍食品の味付けタラコなどを製造しています。
かつてない困難を乗り越え、再び冷凍食品の基幹工場として成長を遂げている新石巻工場。
従業員一人ひとりの技術と情熱が復興を支え、未来へ向けて力強く進んでいます。

2022年9月撮影 日和山より旧石巻工場敷地(石巻市の下水道施設が建設中)
新石巻工場エントランス・見学者ホール

現在の新石巻工場の主力製品

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