
海外最新トピック from Spain
クリスマスの風物詩
“ウナギの稚魚”は
高嶺の花に。庶民が祝祭に
口にする、定番の魚とは?
今、世界ではどんなことが話題になっている?
現地在住リポーターが、これからの食と未来の暮らしのヒントとなるような
最新トピックをお届けします。今回はスペインからリポート!
“黒い腹”が鮮度の証
普段から家族や友人と集まり食卓を囲む習慣のあるスペイン。クリスマス時期の市場やスーパーはまさに戦場です。12月に入るとお財布とにらめっこしつつ、何日に誰が家を訪ねてくるかを考えながら、食材を買い求める人々でごった返す日々がクリスマスシーズンの終わる1月6日まで続くのです。

三ツ星レストランのシェフからも熱い支持を受ける老舗鮮魚店に並ぶ高級魚たち。
クリスマス時期になると必ずメディアで取り上げられる風物詩が“アングラス”、ヨーロッパウナギの稚魚です。高級魚として知られ、1キロ1,000〜1,400ユーロ前後で小売りに出ます。漁ができるのは10月末から3月初旬まで。海に近い河口に網を使って採捕し、一定期間水槽で育ててから出荷されます。
スペインで生ハムと言えば、“パタ・ネグロ(黒い爪)”のイベリコ豚が最高とされますが、アングラスの場合、“ロモ・ネグロ(黒い腹)”が上物の証。アングラスは活けで採捕して、水槽で成長するうちに腹がうっすらと黒く色づきますが、漁の際に死んでしまうものは腹が透明なまま冷凍されて流通に回るため、鮮度を示す基準となっているのです。

魚介への深い知識と経験を有し、オープンと同年にミシュランの星を獲得したレストラン「Desde 1911」でもアングラスは主役級の一皿。
とはいえ、新鮮だからと生きたまま調理すると、ウナギ特有のヌルヌルとしたぬめりがあり、おいしく仕上がりません。ぬめりを取るために特別な下処理を施してから売り場に並びます。
調理法はニンニクとオリーブオイル、唐辛子少々でアヒージョにするのが定番です。

アングラス自体は淡泊な味なので、最高級のオリーブオイルを使うことがおいしいアヒージョの秘訣。
コロナ以降のインフレもあり、このところ一般のスーパーや鮮魚販売店ではほとんど見かけなくなってきましたが、あるところには、ある!
首都マドリードで1911年創業の歴史ある水産総合企業「ペスカデリアス コルニェサス」が経営する魚屋には、毎年クリスマス時期になるとアングラスを求める人々が足を運び賑わいます。堪能するには1人あたり100〜150gが適量ですが、スペインのクリスマスでは家族全員集まると10〜20人ということも珍しくなく、めまいがしそうな額に! それでも「女房を質に入れても初鰹」と同じく、アングラスがないとクリスマスが始まらないというリッチな人々もいるのです。

ペスカデリアス コルニェセス社が経営する鮮魚店内は高級ブティックのよう。店員の接客からもサカナ愛が伝わってくる。

同社は、市内に5店舗もアングラスを楽しめるレストランを経営。クリスマス時期はそれを目当てにくる客がひきもきらない。
クリスマスの食卓を盛り上げる
定番すり身製品
そして一般庶民の強い味方が、アングラスを巧妙に再現した「ラ・グラ」と呼ばれるすり身製品。こちらはタラが主原料ですが、イカスミを使って“ロモ・ネグロ(黒い腹)”も絶妙に再現されています。なんといっても魅力なのは、本物の約60分の1の値段で食卓を飾れること。こちらもクリスマス時期の鮮魚売り場を賑わす、風物詩のひとつかもしれません。

クリスマス時期になると「ラ・グラ」のテレビCMが多く流れるように。「本物よりこっちのほうが好き」なんていう人も。

スーパーの鮮魚売り場の特設コーナー。「PACK AHORRO」は「お得パック」の意味。「ラ・グラ」も、クリスマスの前菜に出ると皆がよろこぶ人気商品。
◎Pescaderias Corñesas
https://www.pescaderiascorunesas.es/
◎Desde 1911
https://desde1911.es/
◎ LA GULA DE NORTE
https://laguladelnorte.es/

小林由季(こばやし・ゆき)
1995年よりスペイン在住。ライター、TV番組やイベントコーディネーター、ビジネス通訳、同時通訳もこなすスペインよろず屋。スペイン料理学会マニア、生鮮市場マニアを自負。いろいろな観点からスペインの食のバリューチェーンの観察を続ける。
海の色は何色?
海水そのものは、無色透明です。海の色には、太陽の光の色が深く関わっています。太陽が放つ虹の七色(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)のうち、青色の光が一番よく海の中を進み、他の色の光は海水に吸収されてしまいます。特に赤色は光の中でも変化が大きく、海の中では灰色がかって見え、周りに溶け込み目立たなくなります。マダイやキンメダイ、深海性のエビなど赤色の生物は、外敵から身を守りやすく、捕食もしやすいのです。
もっと詳しく知りたい人はコチラ
▶︎(https://umito.maruha-nichiro.co.jp/article118/)