「和食=日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、近年世界的な和食ブームとなっています。これによってクロマグロをはじめとするマグロ類の消費量は拡大を続けており、海洋生態系崩壊への懸念から、複数の国際管理機関によるマグロ類の漁獲量規制は年々強化されるようになってきました。
この状況に対応するため、マルハニチロではクロマグロの安定供給に向けて、長年にわたり「完全養殖マグロ」の実現に向けた挑戦を続けてきました。2016年からは完全養殖マグロ『BLUE CREST』ブランドとして、本格出荷体制を確立しています。
奄美大島南部、対岸に加計呂麻島を臨む、大島海峡は入り江に囲まれ、潮通しもよく、きれいな海水の通り道でマグロ養殖には最適な場所です。
この奄美大島の地で、マグロ養殖のパイオニア「マルハニチロ」は1987年より、クロマグロ完全養殖の研究を開始しました。
以降、さまざまな困難を乗り越え、2010年人工種苗で育った親マグロが産卵し、ついに完全養殖を民間で初めて成功させました。
奄美大島では、クロマグロは6〜8月に産卵期を迎えます。
現在、3基の大型生簀の中で、100〜150kgの親マグロを飼育しています。
産卵行動は通常日没後から真夜中にかけて見られ、一尾のメスを複数のオスが追いかけながら放卵・放精を行います。
この産卵行動で生まれる卵は1日に数千万粒以上、卵は海面に浮かんでくるので網ですくい集め、隣接するふ化場へと運ばれます。
自然の海では何十万粒の卵から、ほんの数尾しか生き残ることができません。人工種苗によりこの割合を大きく改善することが、完全養殖の最大のポイントです。
ふ化場に送られた卵(受精卵)は約1ヶ月間、6cm程度の種苗になるまで大切にふ化場内のプールで育てられます。
この陸上での飼育には、これから解決していかなければならない問題もたくさん残っています。
マルハニチロは、東京海洋大学・甲子園大学とともに、たくさんの丈夫な種苗を育てるための研究に取り組んでいます。