くだものデザートの果肉品質向上技術

カンキツ類の酵素剥皮技術を利用した高品質くだものデザートの開発

1.より高品質な果物入りカップゼリー

当社のデザート商材には、果物入りカップゼリーのラインアップ があります。その中で「旬生(しゅんなま)」は、“生の果実の歯ごたえ、香りが生きている”ことをコンセプトとし、非加熱の果肉を美味しさそのままにゼリーにとじ込めた、季節限定の商材です。「旬生」シリーズには、りんご、和梨、白桃などのバリエーションがあります。

2.カンキツ類の皮剥きと酵素

果物全体の中でカンキツ類は、果実の外側と内側にそれぞれ果皮を持ち、また果肉の部分と皮の部分の境目がはっきりしている点で特徴的な構造です。カンキツ類の皮の剥きやすさは種類によって様々ですが、皮の剥きにくいものの一つとしてグレープフルーツがあります。そこで手軽にグレープフルーツを食べられる加工品として、グレープフルーツ果肉入りカップゼリーが挙げられます。このゼリー中の果肉について、従来は原料果実の外皮を手剥きで処理したのち内皮を酸アルカリ処理などで剥き、加熱殺菌を施した缶詰果肉を使用していました(図1左)。この缶詰果肉は、保存性はあるのですが生の果実ならではの風味や食感が損なわれてしまっていること、また外皮と内皮の剥皮が別々の二段階の工程であることが課題と考えられました。そこで、剥皮工程の効率性と果肉品質の両方を向上できる皮剥き方法の開発が期待されました。
グレープフルーツの外皮と内皮の主要な構成成分はペクチン質です。このペクチン質を選択的に分解できる酵素に着目して検討を進め、酵素を利用した一度の処理で外皮と内皮の両方の剥皮を容易にする方法を確立しました(特許出願中)。

3.従来製法と比較した酵素剥皮法のメリット

従来の缶詰果肉を使用したカップゼリー製法では、果肉は缶詰の殺菌時とゼリーの殺菌時の2回の加熱処理を受けます(図1左)。酵素剥皮法では、非加熱の酵素剥皮果肉をそのままゼリーに使用することで、果肉の加熱履歴を1回に減らすことが可能となりました(図1右)。

図1. カンキツ類果肉とそれを使用したカップゼリーの加工工程

この果実剥皮方法の違いによる赤肉のグレープフルーツ(GF)果肉の品質について、官能評価、物性測定、栄養成分分析による比較検証を行いました。
官能評価においては、酵素剥皮法で処理した果肉は、味(甘味、酸味、苦味)や匂い(香り、フレーバー)が従来法で処理した果肉と比べて損なわれないだけでなく、外観の張りが強く、また赤みが強く黄みが弱いという赤肉のGFらしい色みで、見た目がより生の果肉に近いものでした。さらに食べた際、酵素剥皮処理の果肉は、果肉全体の張りが強く、果肉を構成している一粒一粒の「さじょう」とよばれる部分のツブツブ感、ジューシー感、およびシャキシャキ感が強く感じられたことから、食感においても品質が高いことが示されました(図2)1)

図2. 従来製法と酵素剥皮法による処理果肉の官能評価結果

さらに果肉の物性(硬さ)について機器を用いた測定を行いました。その結果、果肉房全体を均等に押しつぶす圧縮応力、果肉房を縦(長軸方向)に切るせん断応力において、いずれも酵素剥皮果肉が有意に高い結果が得られました。このことから従来法で処理した果肉と比べて酵素剥皮法で処理した果肉は、物性面で有意に硬く、これは官能評価における果肉全体の張り感、さじょうのツブツブ感、ジューシー感、およびシャキシャキ感が強く感じられたことを裏付けるものと考えられました(図3)1)

図3. 従来製法と酵素剥皮法による処理果肉の物性測定結果

また、栄養成分では、従来法処理と比べて酵素剥皮法で処理した果肉中のビタミンCが有意に高いことも確認されました。
これら一連の結果から、酵素剥皮法によって処理された果肉は従来法と比べて、果肉の色みや食感、一部の栄養成分において品質が向上することが示されました。酵素剥皮法は、果肉をより自然な状態のまま品質を落とさずに剥皮加工できる方法と言えるでしょう。

4.商品への応用

2012年度発売「旬生グレープフルーツ」

この新製法の酵素剥皮法で処理したグレープフルーツ果肉を使用した「旬生グレープフルーツ」を2010年から期間限定で上市しています。2012年度製品(右写真)は、225gの内容量に対し果肉が65gと、果物の美味しさをより感じられるボリュームです。ゼリー部分は、果肉との一体感を感じられるように果汁を添加し、また果肉の存在感を際立たせるために少し柔らかめに作られています。

5.今後の展開

グレープフルーツ以外のカンキツ類についても、酵素剥皮法が適用可能であることを確認しています。今後は、果肉品位の高い国産カンキツ類の果肉を酵素剥皮法で加工することで、これまでにない高品質な果物入りデザートを開発、上市していきたいと考えています。

参考文献

  1. 國永史生ら、「酵素剥皮によるグレープフルーツ果肉の品質改善-2.カップゼリー中果肉の食感および物性に与える影響-」日本食品科学工学会第59回大会講演集. p88. 2012

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