食事内容と代謝の違いの解析

食べ物はヒトの口に入った後、消化・吸収をされて、体を構成する成分やエネルギー源に変換され、最後に老廃物として排泄されます。このように体内で変化された物質のことをまとめて「代謝物(メタボライト)」と呼びます。したがって、食べ物の体への影響は、代謝物を把握すればよいことになります。メタボリック・シンドロームは、糖や脂質の代謝がうまくいっていない状態なので、病気の状態を詳細に理解する上でも代謝物を把握することは大事になります。先述のとおり、食品は様々な成分の混合物なので、生じる代謝物もバラエティに富んでいることは容易に想像できます。したがって、代謝物の把握にもMPの手法が活用できます。
そこで、食事内容の違いが健康に及ぼす影響について動物実験を通じて調べました。実験動物としてマウスを用いて、現代人の食生活を模した高カロリーな高脂肪・高糖質食を与えた時に魚食を基本とした餌と蓄肉食を基本とした餌とで違いが見られるのかを検討しました。具体的には、通常の飼育飼料を改変して、カロリーが同じになるように調整しながら、主成分であるタンパク質・脂肪分をそれぞれ畜肉または魚肉に置き換えた3種の餌を用意しました。これらの高カロリーな食事摂取に伴って生じる健康状態と代謝物への影響を、昔から行われてきた計測方法(体重測定、臓器観察など)と共にMPの手法で評価しました。
その結果、従来の計測方法において、魚食と蓄肉食との違いが体重変化(図2)、肝臓への脂質の蓄積状態(図3)、あるいは血液生化学値(図4)の違いとして現れることが分かりました。すなわち、同じカロリーを摂取していても体重推移、脂肪肝の有無、あるいは血糖値や脂質代謝に影響を与えることが見いだされました。これらの違いは、食品代謝物の出口の一つである尿を用いたMPでも把握することができました(図5)。そして、尿中に含まれる物質をさらに詳しく調べることによって、その変化の主な要因となる化学物質群を把握することに成功しました。このような食と代謝に関わる基礎的データを蓄積することで「バランスの良い」食事を論理的に組み立てられるようになると考えています。
このように、MPを活用して食品の性質や機能などを科学的に捉えることができることが分かってきましたので、皆さんにおいしくて健康に良い食品をお届けするために、今後もこの技術を蓄積して食品開発に活かしていきたいと考えています。
本研究は(独)産業技術総合研究所 根本直主任研究員、(独)医薬基盤研究所 内尾こずえ研究員との共同研究として実施しました。

図1 動物におけるメタボリック・プロファイリングの流れ
図2 体重推移データ
高カロリーカゼイン群、高カロリー畜肉食群、高カロリー魚食群、通常食群)
図3 剖検時肝臓の様子
図4 tuna_il003.gif血液生化学検査
図5 尿のメタボリック・プロファイリング

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