プロタミン

プロタミンとは

図1 サケ白子

プロタミンは、サケ白子の主成分である精子にDNA(遺伝子)と結合した形で存在しているタンパク質で、32~33個のアミノ酸で構成されています。このうち2/3以上は種アルギニン(アミノ酸の種類)である強塩基性タンパク質です。分子量4,000~5,000程度の比較的小さなタンパク質で、アルギニンが数個連続したブロックと同じくアミノ酸の一種であるセリンやグリシンなどの中性アミノ酸が交互に並んだ構造をとっています。
弊社ではこのプロタミンをサケの白子(精巣)より抽出精製し、機能性素材として開発を進めています。

プロタミン分解物のオーラルケア素材への応用1)

図2 カンジダ菌に対する生育阻害試験

プロタミンは微生物に対する抗菌性を有しています。天然物由来の安全な食品保存料として既存添加物リストにも収載されており、広く食品に利用されています。
このプロタミンは微生物の中でもかびや酵母といった真菌に対しては抗菌力が弱いことが知られていました。ところが、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)で処理した「プロタミン酵素分解物」は、酵母の一種であるカンジダ菌に対する抗真菌活性が増大することが認められました(図2)。そこで、プロタミン酵素分解物中に存在する種々のペプチドの中から、抗菌力を強く示す「活性ペプチド」の探索を行いました。その結果、14個のアミノ酸からなるペプチドVSRRRRRRGGRRRRであることが分かり、このペプチドは抗真菌力を示す新規のペプチドであることが判明致しました。(特許第4520477号「抗真菌ペプチドまたはそれを含有するペプチド組成物とその製造方法」)。

図3 プロタミン、プロタミン酵素分解物によるPMMA上でのC.albicans JCM1542に対する生育阻害活性

カンジタ菌が引きおこす口腔カンジタ症状は義歯(入れ歯)の方によく見られる疾患として知られており、これから高齢化社会を迎えるにあたりますます問題になると考えられます。そこで、義歯床素材ポリメチルメタクリレート(PMMA)上でのプロタミンおよびプロタミン酵素分解物の抗カンジダ活性について、水晶発振子マイクロバランス法によりカンジダ菌の初期吸着量およびバイオフィルム形成量を評価しました(図3)。その結果、プロタミン酵素(サーモライシン、ブロメライン)分解物では、初期付着量及びバイオフィルム形成量がともに有意に低下することが明らかとなりました。このことから、プロタミン酵素分解物は義歯床上で抗カンジダ活性を示すことが示唆されました。
プロタミン分解物は、カンジダ菌だけではなく、歯周病原菌(Porphyromonas gingivalis)に対しても抗菌活性が認められています。プロタミン酵素分解物は食品(天然物)由来であることから安全面においても優れており、お年寄りでも安心して使用できるオーラルケア素材としての応用が期待できます。

現在、この活性ペプチドの抗真菌メカニズムについても研究を進めており、2012年11月の第56回日本医真菌学会総会において、福岡歯科大学との共同研究「サケ由来プロタミンペプチドの病原真菌Candida albicans形態変換阻害活性」が優秀演題賞を受賞致しました。

プロタミンの脂肪吸収抑制効果2,3)

図4 コーン油負荷試験における血中中性脂肪の吸収抑制効果

プロタミンは、脂肪を分解する消化酵素であるすい臓のリパーゼに対してその働きを阻害する作用を示すことが確認されています(IC50=1.2μg/mL)。また、ラットにコーン油を摂取させた試験においても、プロタミンの投与(500mg/kg)により、血中中性脂肪の上昇が抑制されることを確認しています(図4)。2)
これらの結果をふまえ、ヒトに対する脂肪吸収の抑制効果を検証しました。健常男性被験者(プラセボ群7名、プロタミン群6名)に対し、高脂肪食(脂質として56g含む)と0.5gのプロタミンを同時に食べて頂き、経時的に採血して脂質代謝に関する血液検査を行いました。その結果、プラセボ群と比較して、プロタミン群は血中中性脂肪の増加量を有意に低下することを確認しました(図5)。また高脂肪食負荷後6時間までの血中中性脂肪の合計増加量は、プラセボ群に対して40%以上少なく、顕著な脂肪吸収抑制効果が確認されました(図6)。3)

以上のことから、プロタミンを0.5g摂取することで、高脂肪食を食べた場合に脂肪の吸収が抑制されると考えられ、メタボリックシンドロームの予防に対する有効な素材と考えられます。

図5 高脂肪食摂取後の血中中性脂肪濃度の推移
図6 血中中性脂肪の増加量のAUC(脂肪の吸収抑制効果)

参考文献

  1. 庵原啓司ら:アミノ酸研究 Vol.4, No.1, 79~81 (2010)
  2. Takahashi Y et al. Fisheries Sience 77, 1045-1052(2011)
  3. 星野躍介ら, 「サケ由来プロタミン摂取時における脂質吸収抑制効果」日本食品科学 工学会誌55巻8号,360-366(2008年)

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