医療用素材(検討中の素材)

コラーゲン・エラスチン

医療用素材の開発の背景

マルハニチロではサケ缶をはじめとして様々な形態にサケを加工し、皆様に提供して参りました。その歴史は100年にも及びますが、加工工程の副産物である内臓や皮の大部分は未利用のまま処分されています。このような「未利用資源」の一つ「白子(精巣)」について、マルハニチロの中央研究所では、約30年近く前から活用検討を行い、プロタミンDNAといった素材を開発、食品用・医薬品用原料として提供して参りました。特にDNAは食品用と別に、より生体内の状態に近い形(高分子状態)で抽出する技術を持ち、その特性を活かして医療・歯科用材料としての検討を進めています。
また、近年では「心臓」を原料に「エラスチン」を、「皮」を原料に「コラーゲン」を抽出し、その用途開発を進めております。エラスチンやコラーゲンは皮膚等を中心とした体の構成成分であることから、成型性や配合を工夫し医療用素材として開発検討を進めています。

サケの恵みを余すことなく活用したいという思いから始まった「未利用資源を原料とした素材開発」。その応用展開の一例である、「医療用素材の開発」についてご紹介致します。

コラーゲン・エラスチン

未変性コラーゲンは医療用素材として製品化されていますが、その多くは哺乳類由来です。しかし、近年、BSE(牛海綿状脳症)問題が顕在化したことで、哺乳類由来のコラーゲン製品により、人間に対し病原体が感染する危険性が懸念されています。こうした背景のなか、マルハニチロはサケ皮からアテロコラーゲン、サケ心臓から水溶性エラスチンを抽出し、再生医療材料を成型する技術を開発しました。

※抗原性のあるテロペプチドを除き、より安全性を高めたコラーゲン

再生医療材料への応用

成型について

アテロコラーゲン、水溶性エラスチンの医療用材料への応用のため成型方法を検討し、紡糸、製膜、多孔体の調製方法を開発しました(図3、4)。化学架橋剤を用いた架橋の他、化学架橋剤を用いない手法でも、水に不溶な成型品を調製する技術を開発しました。これらの素材の特性を生かした再生医療材料の応用研究が期待されます。

図3 コラーゲン/エラスチン多孔体

図4 多孔体のSEM画像(200倍)

物性

図5 エラスチン含量と物性

コラーゲン、エラスチンの配合比を変えた多孔体を調製し、その圧縮試験(含水状態)を行いました。エラスチンを添加することで、ゲルの柔軟性を示す値である破断距離が長くなりました(図5)。また、比較対照として哺乳動物由来のコラーゲンを使用した市販されている人工真皮を上記と同じ分析条件で測定したところ、強度が弱く破断距離は測定できず、マルハニチロの多孔体は強度が高いことがわかりました。

ラット皮膚欠損創(皮膚の一部を切り取った傷)への移植試験

コラーゲン/エラスチン複合多孔体を、ラット皮膚欠損創へ埋入しました。試験は、移植材なしのOpen wound群、市販人工真皮を移植材として用いたコントロール群、コラーゲン/エラスチン複合多孔体を用いたサンプル群で比較しました。

試験の結果、死亡・感染は確認されず、Open wound群の創面は術後の早期から急速に収縮を始めたのに対し、サンプル群およびコントロール群では拘縮(急速に創面が縮み傷口が引きつった状態)を生じることなく緩徐に創面が塞がり、術後14日目には再生上皮が伸展しました(図6)。この結果は、市販人工真皮と同様であった(図7, 8)ことから、コラーゲン/エラスチン複合多孔体の人工真皮としての有用性が示唆されました。

図6 ラットへの埋入試験(術後14日目)

図7 創の面積の推移(術直後の創の面積を100%とした)

図8 コラーゲン/エラスチン多孔体群(術後14日目)の治癒面の組織生検

術後14日目;下床組織は肉芽・瘢痕組織で、その上部の皮膚断端(緑矢印)より再生上皮が伸展していた(水色矢印)。潰瘍底部(赤矢印)は細胞成分・毛細血管に富み、深層部位は細胞成分が減少し瘢痕が成熟しつつあった。またOpen wound群と比較し、コントロール群と同様に肉芽・瘢痕の体積は多かった。

参考図 Open wound群の治癒面の組織生検

術後7日目の生検では、肉芽組織が認められた。14日目には再生上皮(水色矢印)により治癒している。創縁断端(緑矢印)の下床は瘢痕組織が認められた。

第18回日本形成外科学会基礎学術集会(2009年10月, 東京)にて発表しました。

第31回日本バイオマテリアル学会大会(2009年11月, 京都)にて発表しました。

主な共同研究先
札幌医科大学
四ツ柳 高敏 教授、 松本 佳隆 先生
弘前大学
須藤 新一 教授

素材を用いた最終製品の共同開発パートナーを募集しております。

お問い合わせ
中央研究所 管理課 まで (TEL:029-864-6700)
サンプルのご要望等もこちらで承ります。

ページトップ