DHA

DHAとはドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic Acid)の略で、"私達の体に必須の脂肪酸(栄養素)"です。脂肪酸とはいわゆる"油"を構成するモトになるものです。
体内ではほとんど合成されないため、食事を通じて摂取する必要があり、魚介類にはDHAが豊富に含まれています。

DHAの化学式

DHAの血中脂質低下作用

図 長期摂取時の中性脂肪低下作用

DHAの継続的な摂取は中性脂肪の低下を促します。血中脂質の低下は血液の粘性を下げ、虚血性心疾患等の予防に効果的に働きます。なお米国では、DHA等のω-3脂肪酸を含む食品に対して冠動脈心疾患のリスク低減表示を行うことが認められています。
マルハニチロは日本で初めて、DHAを関与成分とするトクホ「DHA入りリサーラソーセージ」を開発しました。また、そのシリーズ品であるハンバーグタイプやハムタイプについてもトクホを取得しました。

DHAの脳機能改善作用

DHAは脳機能の改善や神経系の発達に対して良い影響を与えるといわれており、既に乳幼児用の粉ミルクに配合される等の応用がなされています。
マルハニチロは、島根大学医学部、島根県立大学、社会医療法人仁寿会加藤病院と共同で、2008年11月から2年間、食品を利用したDHAの認知機能など、健康・長寿に及ぼす影響を調査する臨床試験を実施いたしました。試験食には、食品としての食べやすさや馴染みの深さなどを考慮して、フィッシュソーセージを用いました。
研究の結果、高齢者の認知症予防に関する有益な知見が得られました。食品を利用したDHA摂取に関する被験者100名規模での臨床試験は、我が国では初の試みであり、健常在宅高齢者での効果が検証できたのは初めてとなります。

(1)試験実施者

島根大学医学部 橋本 道男 准教授
島根県立大学出雲キャンパス 山下 一也 副学長
社会医療法人仁寿会加藤病院 加藤 節司 理事長
株式会社マルハニチロホールディングス(現マルハニチロ株式会社)(試験食提供)

(2)試験参加者

島根県川本町在住の認知症と診断されない平均年齢73歳の高齢者111名

(3)試験期間

2008年11月~2010年12月

(4)試験概要

1年目は、リサーラソーセージ(DHA 850 mg含有、マルハニチロ製)を摂取する群と、オリーブ油を添加したフィッシュソーセージ(プラセボ)を摂取する群の2群で試験を行いました(二重盲検試験)。各ソーセージはそれぞれ1日2本ずつ食べてもらいました。
2年目は、両群共にリサーラソーセージを摂取してもらいました。
半年に一度、認知機能や記憶力に関するテストおよび血液等の検査を行い、認知機能に及ぼすDHAの効果を比較しました。認知機能や記憶力のテストは、質問形式のミニメンタルステートテスト(MMSE)や、前頭葉機能試験(FAB)を行いました。

(5)試験結果

1年目の試験では、リサーラソーセージ摂取群において、6ヶ月目にFAB「反応の選択」課題のスコアが、12ヶ月目にMMSE「図形模写」課題のスコアがそれぞれ有意に改善されました(図1, 2)。
両群共にリサーラソーセージを摂取した2年目では、両群においてMMSE「計算課題」をはじめとした幾つかの課題でスコアの改善が確認されました(図3)。
さらに、12ヶ月目の層別解析の結果では、赤血球膜のDHA濃度とMMSE総合点の変化値との間で有意な相関が確認されました(図4)。

図1 前頭葉機能試験課題「反応の選択」スコアの変化(1年目の結果)
図2 MMSE課題「図形模写」スコアの変化(1年目の結果)
図3 前頭葉機能試験課題「反応の選択」スコアの変化(2年目の結果、※両群ともリサーラソーセージ摂取)
図4 MMSE総合点の変化スコアと赤血球膜DHA変化量との関係(12ヶ月目の結果)※P<0.05で相関関係に有意差あり

(6)結論

今回の臨床試験の結果から、DHAの継続的な摂取は赤血球膜の脂肪酸組成を変化させ、加齢に伴う短期記憶や認知機能の低下を抑制する効果があると考えられました。本研究成果は、DHAを含む食品を利用した認知症予防の可能性を示唆するものであり、予防医学の観点からも健康長寿社会の実現に向けた波及効果が大いに期待できます。

(補足)認知機能テストの項目

ミニメンタルステートテスト(MMSE)
<質問項目> <点数>
(1)今日は何月ですか?何日ですか?何曜日ですか?何年ですか?季節は何ですか? 5点
(2)ここは何県ですか?何市ですか?何地方ですか?ここはどこですか?何階ですか? 5点
(3)3つの言葉を聞かせて、繰り返してもらう。 3点
(4)100から順に7を引いていく。5回できれば5点。間違えたら終わり。(計算課題) 5点
(5)3.の3つの単語を言ってもらう。 3点
(6)時計と鉛筆を見せて、名称を答えてもらう。 2点
(7)次の文章を繰り返す。「みんなで、力を合わせて綱を引きます」 1点
(8)紙を渡し、「右手に持って下さい」「半分に折って下さい」「私に下さい」と指示を出して、従ってもらう。 3点
(9)「目を閉じてください」と書いた紙を見せて、従ってもらう。 1点
(10)何か文章を書いて下さい。 1点
(11)重なった2個の五角形を見せて、模写してもらう。(図形模写課題) 1点
総合点 30点
前頭葉機能検査(FAB)
<質問項目> <点数>
(1)バナナとみかんはどこが似ていますか? 3点
(2)「か」からはじまる言葉をできるだけたくさんあげて下さい。 3点
(3)私の手のひらをグー・チョキ・パーの順番で叩いて下さい。 3点
(4)私が指で1回ポンと叩いたら、自分の指で2回ポンポンと叩いてください。私が2回指でポンポンと叩いたら、自分の指で1回ポンと叩いて下さい。(反応の選択) 3点
(5)4.を、1回ポンと叩いたときは1回、2回ポンポンと叩いたときは叩かないというルールでやってもらう。 3点
(6)「私の手を握らないでください」と言って、ゆっくりと両手を近づけていく。 3点
総合点 18点

参考文献

  1. Hashimoto M et al., Beneficial effects of daily dietary omega-3 polyunsaturated fatty acid supplementation on age-related cognitive decline in elderly Japanese with very mild dementia: A 2-year randomized, double-blind, placebo-controlled trial. The Journal of Aging Research and Clinical Practice, 2012, No3, in press
  2. Tamai T et al.,Biol Pharm Bull., 2007,30(12), 2381-8.
  3. Itoh T et al., Bioorg. Med. Chem., 2006, 14, 98-108.
  4. Yamamoto K et al.,Bioorg Med Chem Lett., 2005, 15(3), 517-22.
  5. Fujita S et al.,Br J Pharmacol., 2001, 132(7), 1417-22.
  6. Nishikawa M et al., J Physiol., 1994, 475(1), 83-93.
  7. 玉井忠和ら.ドコサヘキサエン酸含有魚肉ソーセージの血中脂質に及ぼす影響(I)ドコサヘキサエン酸用量の設定試験、および過剰摂取安全性の検討試験.日本臨床栄養学会雑誌.2004;25(4):293-302.
  8. 玉井忠和ら.ドコサヘキサエン酸含有魚肉ソーセージの血中脂質に及ぼす影響(II)3ヶ月間の摂取による効果確認試験と安全性の確認試験., 日本臨床栄養学会雑誌., 2004;25(4):303-311.
  9. 大和田潔ら.DHA摂取による高脂血症治療効果.日本予防医学会., 2007;2(1):27-32.
  10. 橋本道男.DHA・EPA協議会 日本水産油脂学会主催 第11回公開講演会「DHA・EPAによる疾病予防」
  11. 橋本道男.多価不飽和脂肪酸と疾患2 中枢神経系,. 治療学., 2009;43:838-844.
  12. Hashimoto M et al., J. Pharmacol. Sci., Review, 2011 ;116:150-162.
  13. 橋本道男ら.DHAの生体での機能とその医療応用~認知症への予防効果~., 養殖., 2012;49(3):22-26.

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