SALMON MUSEUM サーモンミュージアム

ニジマス

ニジマス

形態1成魚

全長 約40cm

背びれ約11軟条、尻びれ約10軟条、胸びれ約14軟条、腹びれ約10軟条、側線鱗数約140。

背部は灰青色あるいは茶褐色で、体側から腹側は灰黄色がかった銀白色。頬やえらぶたは薄桃色で、体側の中央部には美しい紅紫色の虹条が走り、レインボートラウトと言われるゆえんです。体の背部、背びれ、あぶらびれ、尾ひれには黒点が散在します。頭は小さく固いので、降海するものはスチールヘッドと言われています。

形態2卵・仔稚魚

卵は球形で、直径約4mm。卵黄は黄色のものやオレンジ色のものがあります。
稚魚には小さなパーマークが約9個あり、ほぼ側線上にあります。体長が12cmほどになると、パーマークは消え(薄く残るものもあります)、レインボーカラーの薄いピンクの縦条が現われてきます。

形態3産卵期

産卵期になるとオスメスともに体全体が黒ずみ、体側の虹色縦帯は赤味を増します。とくにオスはいっそう鮮明な紅色が現れ、あごが伸び、曲がってきます。
降海型は、海洋生活中は虹色のピンクの縦帯は消えますが、産卵期に再び川に遡上する頃、体側や腹部も赤く婚姻色に染まります。

生態1産卵

産卵の時期は、原産地の北アメリカ西部の渓流では、春4月すぎから6月下旬にかけて最盛期を迎えます。日本では12月から8月で、北の地ほど遅く北海道の摩周湖では5月から7月くらいになります。
繁殖は、川底の砂礫にメスが産卵床を掘り、掘り終わると、見張りのオスと産卵放精します。産卵の後、シロサケなどは力尽きて死んでしまうのですが、ニジマスの場合はオス、メスとも生き残り、次の年にも産卵・放精することもあります。同一個体が5回も産卵した例も確認されています。

生態2体内卵数

体内卵数は、ニジマスで約7000個、一つの産卵床には約900個が生み出されます。

生態3仔稚魚の生活

受精後約25日(水温12℃)で孵化し、孵化後15日ほどで浮上。摂餌期には水生昆虫を主食にしていますが、他にもエサとなる動物を捕食しています。

分類:サケ科サケ亜科サケ属
学名:Oncorhynchus  mykiss (Walbaum)
英名:rainbow trout(陸封型), steelhead trout(降海型), kamloops trout(湖沼型) 
地方名:
陸封型・・・ニジマス(全国)
降海型・・・スティールヘッド

*海面養殖のニジマスは、サーモントラウト、トラウトサーモンと呼ばれています。
*ニジマスは以前、アトランティックサーモン、ブラウントラウトとともにニジマス属(1988年からはニジマスがはずれたため、今はニジマス属とは呼ばず、サルモ属としてます)に入れていましたが、1988年以降、形態学的、遺伝学的見地からサケ属に入れるようになりました。ニジマスを今でもニジマス属の魚としている人もいますが、これは誤りです。

鮭の住んでいる所

ニジマスは北米西部の太平洋にそそぐ渓流が原産地とされています。「ニジマスつりのメッカといえば、カナダはスー川の急流ということになるだろう」と、ヘミングウェイが言うように、天然のものが生息しているのは、アラスカからカナダ・アメリカのロッキー山脈西側、メキシコ北西部地方。ロッキー山脈東側ではマッケンジー川の支流ピース川・アサバスカ川。カムチャッカ半島の河川や湖沼です。日本ではアメリカから明治10年(1877年)前後に移入され、青梅、日光、醒ヶ井(さめがい)などで養殖。その後、全国各地で放流されるようになりました。世界的にはアメリカ北部、カナダ南部、ニュージーランド、オーストラリア、タスマニア、南米、アフリカ、南アジア、ヨーロッパ全域に移入され、養殖が行われています。

生態4成魚の生活

川の上流や中流域の清流に住むニジマスは、水温約15~20℃の所を好み、なわばりを作ります。湖沼のニジマスは深くて冷たい沿岸部を好むといわれています。ニジマスは怪力で、貪欲で、激しい性格の持ち主です。アーネスト・ヘミングウェイは著書「最高の虹鱒釣り」で「鉤にかかるや3,40ヤードの糸を一気に引き出してしまう。その怪力をもって岩の下に居座りでもしたら、それこそ梃子でも動きはしない。超大物級になると、勝負は2時間にもわたることがある。スー川での虹鱒釣りは素晴らしい。しかしそれは、凄みのある悪夢のような素晴らしさだ。スー川の釣りの激しさを凌ぐものといえば、カタリナ島沖のマグロ釣り以外、まず考えられない」と書いています。
ニジマスは昆虫、浮遊動物、ヨコエビなどの甲殻類、貝類、小魚を貪欲に食べます。湖水のニジマスの腹を割いて見るとなんとニジマスの稚魚が入っていたこともあるそうです(まさに共食いです)。
ニジマスのうち海に下る降海型の魚をスチールヘッドと呼びますが、冬に降海するグループと、夏に降海するグループがあります。また、カナダでは冬に産卵のために川を遡上するスチールヘッドを「ウインターラン」、夏に遡上するものを「サマーラン」といいます。一般的にウインターランのほうが数量が多く、釣りやすいので冬の釣りとして人気が高いそうです。

生態5成長過程

ニジマスは、河川にずっと残留するものは3~4年の寿命ですが、降海するものは6~8年も生きます。河川での期間は1~4年とばらつきはありますが、降海し海で過ごした期間が1~4年によって、体長は大きく成長していきます。海洋生活が1年のもので体長約50cm、2年のもので約70cm、3年のもので約80cm、4年のもので約100cm。最大で120cmになるものもいます。

加工・食物としての利用

サケ属の中では、比較的高水温に対応することで育てやすく、人工採卵が容易で何度も産卵することから世界的に広く養殖されています。品種改良も盛んで、ワシントン大学のドナルドソン博士により品種改良された、成長の早い養殖品種「ドナルドソンニジマス」は有名です。加工・食物としては、燻製、ルイベ(冷凍さしみ)、塩焼き。
釣り・・・スポーツフッシングとして人気のため、湖沼や渓流釣り場で放流が盛んです。

栄養成分(可食部100g当たり)

エネルギー226.0Kcal(海面養殖)/エネルギー 127.0Kcal(淡水養殖)

エネルギー 226.0/127.0Kcal 各サケの脂質の差がエネルギーの差になっています。牛肉や豚肉より断然ライトでヘルシー。健康食品として良質なエネルギー源です。
タンパク質 20.8/19.7g サケのタンパク質には、栄養素として重要な必須アミノ酸が多く含まれています。必須アミノ酸はイソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリンの8種ですが、FAO/WHO/UNU(1985)の基準ではヒスチジンも加え9種としています。
脂質 14.7/4.6g サケの脂質には、生活習慣病に予防効果のあるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)、が多く含まれています。
脂肪酸EPA 0.44/0.14g 血液をさらさらにして血栓の生成を抑え、脳血栓や心筋梗塞を予防します。血中コレステロールの低下作用・血圧低下作用・血糖値低下作用が認められています。
脂肪酸DHA 1.76/0.55g 子供の脳の発達に必要で母乳にも含まれています。また、老人性痴呆症予防や網膜反射機能の向上にも効果があることが分かってきました。
アスタキサンチン 0.6/0.4mg サーモンの身が赤いのはアスタキサンチンが豊富に含まれているからです。アスタキサンチンとはベータカロテンと同様、天然色素で健康の味方です。体内の活性酸素を抑え、動脈硬化を防止し、ガンの予防にも効果があるといわれています。※ニジマス(海面養殖・淡水養殖)のアスタキサンチン量は餌により変動することがあります。
※参照:北海道大学名誉教授 羽田野六男氏のデータより/『サケを食べれば若返る』(鈴木平光著/たちばな出版)157ページ表20、各サケのアスタキサンチン含有量(『活性酸素に攻め勝つアスタキサンチン』板倉弘重氏ハート出版より)
ビタミン類
ビタミンA
〔レチノール〕
67/17μg 胃腸や気管支などの粘膜を正常に保ち、皮膚の状態を整えます。不足すると視力低下や肌荒れ、また風邪にかかりやすくなります。
ビタミンB2
(リボフラビン)
0.09/0.10mg ホルモンを正常化する働きがあります。最近では肌荒れにも効果があると言われています。B2の欠乏症は口唇炎や口角炎です。
ビタミンB12
(シアノコバラミン)
5.7/6μg B12は鮭に多く含まれていてるビタミンです。B12が不足すると、正常な赤血球が減って、巨赤芽球という正常でない赤血球ができてしまい、悪性貧血という病気を引き起こします。
ビタミンD
(カルシフェロール)
11/12μg ビタミンDは骨のビタミンとも言われ、カルシウムの吸収を助ける働きがあります。
ビタミンE
(トコフェロール)
5.8/1.2mg Eは老化を防ぎ、若さを保つビタミンとも言われています。不足すると血行障害や老化現象が進み、 極度の冷え性になったり、動脈硬化が進んだり、妊婦は流産しやすくなります。
ミネラル類
カルシウム 12/24mg カルシウムCaは骨や歯を作るだけではなく、みずみずしい肌には欠かせないものです。Caは吸収しにくいミネラルで、Caの吸収のためにはビタミンDが必要です。
リン 240/240mg 体内ではリン酸カルシウム、リン酸マグネシウムの形で骨や歯の主成分となり、血液中ではリン酸塩として血液に酸やアルカリを中和する働きをします。
0.2/0.2mg 鉄Feが欠乏すると、血液色素のヘモグロビンが減少して貧血症になります。動物性食品に含まれる鉄は体内への摂取率がよく、摂取量の15~20%が体内に吸収されます。
亜鉛 0.5/0.6mg 亜鉛Znは広く細胞全体に存在し、DNAやタンパク質の合成に関与しています。不足すると、免疫機能が低下します。食べ物を食べても、味を感じなくなる味覚障害、これも現代人のZn不足が原因している場合があります。

※ただし、EPA、DHAは試料肉100g当たりの重量です。

漁法

釣り/養殖