SALMON MUSEUM サーモンミュージアム

芸術的にも美しいサーモン専用の疑似餌「サーモンフライ」。ヨーロッパの河川で釣るアトランティックサーモン用。魚がその釣り針にかかったときの、あの身のはじけそうなまでに充実した瞬間を、釣り人は夢見ながら全身全霊で疑似餌を作るのである。(つるや釣具店提供)
We Love SalmonFishing!!
『忠類川サーモンフィッシング12年の歩み』藤本靖
釣り人は、採捕従事者カードの発行を受けてからサケ釣りを楽しむ
忠類川の変遷
忠類川でサケ釣りが開始されたのは、平成7年から・・今年のシーズンインで14回目を迎える。この間には、様々な試みがなされている。中でも大きいのが「ルアー/フライ(*1)区間の設置」と「再放流区間(今年より名称をリリース(*2)区間に改訂)」の設定だろう。
用語解説
(*1) ルアー(lure)とフライ(fly)は、釣りに使用する疑似餌のこと。ルアーは金属、木、プラスチック、ビニールなどでできた本体と針からなる。フライは毛針とも呼ばれ、針そのものに羽毛などで装飾を施したもので、ルアーと区別される。
(*2) リリースとは、釣った魚を殺さないで再び水の中に戻してあげる行為(再放流)のこと。キャッチ&リリースとも言います。
 「ルアー/フライ区間」の設定
ここでは、シングルフック(一つ針)のルアーを使用せねばならない。
ルアー/フライ区間の設定に至る経緯として数種類の釣りが混在し釣り場が混み合う中で、フライキャスティング時(*3)に歩いている人にキャストしたフライが刺さる事故が数件あった事が一番の起因になった。フライフィッシャー同士であれば、独特のキャストを知っているためにポイントの後ろを通過するときに気を遣うが、違うジャンル、特に年配者が多いエサ釣りの人は、関係なくキャストしている人のエリア内を通過してしまう。この事で衣服や肌にフライフック(毛針の針部)が刺さる事故が何件か発生してしまった。またエサ釣りの場合、一つのポイントに長時間に渡り留まることが多いために他の釣り人からの苦情も絶えなかった事も設定に踏み切る要因になったと言える。
用語解説
(*3) キャストとは、釣り針を狙ったポイントに正確に投げ入れること。フライキャスティングは、ラインを操って目的の場所へフライ(疑似餌の毛ばり)を落とすこと。
 「再放流区間」の設定 ※キャッチアンドリリース区間の設定
キャッチアンドリリースされるシロサケ
開始当初から平成12年までは、釣り上げたサケマスをリリースする事が認められなかった。釣り上げた魚は、すべて持ち帰り、また魚体計測を実施しデーターを取ってきたが、平成13年のシーズンから忠類川下流部の第1管理棟区間が「再放流区間」(※以下リリース区間)として設定された。このリリース区間の設定は、人が集中する下流部の混雑緩和が、大きな目的であった。下流の第1管理棟区間でサケマスをリリースする事により上流部への遡上を促進させ、より多くの流域でサケ釣りが出来るようにと言う目的である。この結果、サケが上流部へも遡上し下流部の混雑緩和にも大きく役立ち、より広い流域で魚影が多く見られるようになっている。ただし、その年の河川水量により上流部まで遡上しないこともあり、推移を見守る必要がある。リリース区間の設定で、大きな副産物が生まれつつある。それは、サケ回帰数の増加だ。忠類川では毎年500万匹のサケ稚魚を放流している。釣果を見ると、初年度から平成15年までは、サケの釣果が2000尾内外で推移している。
忠類川を遡上するサケ
しかし平成16年の釣果数がそれまでに比べ倍の伸び、そして平成17年には、3倍にも伸びている。今の段階では、あくまでも仮説でしかないが平成13年からスタートしたリリース区間設定により自然産卵が助長され3年魚の回帰年である平成16年にサケの回帰が増え、平成17年の4年魚回帰の年には大きく伸びた可能性が高い。一定の稚魚放流だけであれば釣果数などが平成14年、15年と同数になっても良いはずなのである。現段階では、伸びた要素が「リリースによる自然産卵の増加」ではないだろうかと言う段階だ。今年の忠類川での釣果結果により因果関係が、より鮮明に出てくる可能性がある。※カラフトマスに関しては、データーとして増加傾向が現れていない。これはカラフトマスの産卵期がサケよりも早い9月に多く、その産卵後に台風の通過による増水などが多く発生することから産卵後のダメージが大きく孵化率が低い可能性が高い可能性がある。
リリース区間設定以後、サケ回帰数が伸びている
藤本靖氏プロフィール
Yasushi Fujimoto
日本で初めてサケ釣りが出来るようになった北海道東部標津(しべつ)町-忠類川でそのシステム創設当初から関わり、現在も川と向き合う日々が続いている。釣りという趣味を通じて、様々な視点や人脈から環境創り、地域創りに関り続けている。
(社)北海道スポーツフィッシング協会・会長、NPO法人-南知床ヒグマ情報センター・事務局長
標津町在住 1961年生まれ。
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