介護食への挑戦

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介護食への挑戦 おいしいしあわせをすべての人に届けたい

2003年夏

介護食に新たな風を吹き込め。

 2003年晩夏、平林桂子が病院給食会社を訪問した時のこと。商談中、病院給食会社の商品開発部長が、あるプロジェクトの話を持ちかけてきた。 

 「普通の食べ物を噛んだり飲み込んだりするのが困難な方々が、病院や介護施設にはたくさんいる。しかし、そこでの食事の現状は、ただ栄養を摂るためだけの、見た目・味ともにひどいものだ。今までの食品に替わるものを作ることが出来れば、多くの人に食べる喜び、生きる元気を感じてもらえる」。食品メーカー数社に声を掛けているという。
 その視点は今までどのメーカーも持っていないものだった。

完成したらすごいことになる…と鳥肌が立ちました。(平林)

数々の困難を乗り越え完成、そして販売へ

 平林と一年上の社員二人が担当についた。ライバルは30社にものぼり、開発期間もかなりタイトなものだった。また、社内には、介護食という未知の分野に参入するリスクに見合うだけの売上見込みがあるのか疑問視する声も存在していた。通常、新商品の開発ではプロジェクトチームが編成されるのだが、社内の賛同が得られないままであった平林たちにはそれが叶わなかった。

 二人だけで試行錯誤し、考え出したコンセプトが以下である。

コンセプト

 誰もが納得のいくコンセプトが完成したものの、実際にそれを実現するのは困難を極めた。「舌でつぶせるやわらかさ」を実現しようとして食材をミキサーにかけると、どんな食材も茶色くなってしまう。かといって色を良くし、栄養を強化するため添加物を加えれば、素材本来の味が消えてしまう。また、ミキサーだとやわらかくなり過ぎてしまうことにも課題があった。やわらか過ぎるとまとまりにくく、かえって食べにくいのだ。何度も何度も試作を繰り返し、その足で病院給食会社を訪問して栄養士に見せ、食べてもらう毎日だった。

 本来の営業業務を行う傍らでの商品開発。他社が次々と商品を仕上げていく中、思い描くような商品ができずに焦る二人を支えたのは、完成すれば必ず売れる、売ってみせる、という確信にも似た強い思いであった。毎日病院給食会社に出向き、熱意を伝えた。
 この地道な活動が後に功を奏する。病院給食会社の担当者が採用枠を空けて待っていてくれたのだ。

全米進出への第一歩

 平林、そして社内の協力者の声で、会社も動いた。開発開始から半年がたった2004年1月、満を持してプロジェクトチームが発足。日本介護食品協議会から「ユニバーサルデザインフード 区分3(舌でつぶせる)」の認定を受け、この病院給食会社に採用されただけでなく、その商品を元に、同年4月に16品のNB※(ナショナルブランド)商品としての立ち上げが決定。こうして新ブランド『やさしい素材』がスタートを切った。

 ブランド立ち上げ後も順調だ。現在30品目を揃え、売上高も年々右肩上がりで推移している。マスコミにも、介護食という“新しい”ジャンルの画期的な食品として取り上げられ、介護食市場で確固たる地位を築くブランドとして認知され始めている。

※NB(ナショナルブランド):メーカーが商品につけたブランドのこと。固有名詞としての商品名を持ち、通常全国的に展開されるため、国民的な(ナショナル)ブランドと呼ばれる。

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