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特集1 海の生態系を守りながら、新鮮でおいしいマグロを食卓へ 完全養殖マグロの可能性。

世界的な日本食ブームの広がりなども相まって、マグロ類の消費量が年々拡大するなか、「海洋資源の保存」と「マグロの安定供給」という相矛盾する社会の要請にこたえるために、マルハニチロは、完全養殖マグロの普及・拡大に向けた挑戦を続けています。

2015年6月、民間企業初の完全養殖マグロの商業出荷を開始。

世界的な人口増加のなか、冷蔵施設の整備が進む新興国では良質なたんぱく源として、先進国では健康食として魚食需要が高まっています。なかでも、日本食ブームなどを背景にマグロ類の消費量は年々拡大しており、資源管理が世界的な課題となっています。また、漁獲競争によって海洋生態系が崩れる懸念もあることから、近年は複数の国際管理機関によるマグロ類の漁獲量規制が年々強化されています。

こうした情勢を受けて、日本においては1990年代から、マルハニチロを含む複数の事業者によって、生後3ヵ月以内のヨコワ(幼魚)を仕入れ、生け簀で一定期間育てて出荷する天然種苗(ヨコワ)養殖事業が始まりました。しかし、ヨコワの漁獲競争が激しくなるなか、天然資源に頼らず安定的にクロマグロを供給する手段として“完全養殖サイクルの確立とその商業出荷”に期待が寄せられていました。

こうしたなか、マルハニチロは、1987年に完全養殖への挑戦を開始。ところが当時、クロマグロの生態はその大部分が未知の世界であり、さまざまな試行錯誤を重ねたものの商業的な出荷に足る数の成魚を育てることができず、1996年にプロジェクトをいったん終了することとなりました。しかし2000年以降、天然クロマグロの資源量が急激に減少したことを受け、将来にわたってクロマグロの安定供給責任を果たしていくためには“完全養殖”の実現が不可欠と考え、2006年にプロジェクトを再開。その4年後の2010年に民間企業として初の完全養殖に成功し、2013年には事業規模での大量生産に成功しました。

そして2015年6月、完全養殖マグロの商業出荷を開始。大きな注目を集めた完全養殖マグロの出荷・販売開始は、30年近くに及ぶ試行錯誤の末に結実したのです。

天然資源に負荷をかけない養殖で、計画的な“育てる漁業”を。

「完全養殖」とは、人工ふ化させたクロマグロを親魚に育て、その親魚が生んだ受精卵を、ふ化~稚魚~成魚まで育てることを指します。マルハニチロが2010年にクロマグロの完全養殖に成功した当時、親魚から採取した約100万個の受精卵から稚魚(人工種苗)まで成長したのは数百尾程度であり、最大の課題は、人工ふ化によって生まれた人工種苗の生存率の向上でした。この課題の解決に向けてマルハニチロは、生育環境の改善や餌の工夫などを積み重ね、着実に人工種苗の生存率を高めていきました。

クロマグロの完全養殖サイクル

しかし、これら人工種苗の育成も、まだまだ天然種苗(ヨコワ)養殖に比べて実用性は低いのが現実です。一方で、天然資源保護の観点から、2015年にはマグロ未成魚(30kg以下)の漁獲量規制が強化されるなど、天然種苗を取り巻く環境が厳しくなっていくことも事実です。マルハニチロは、今後も人工種苗の生存率向上と品質安定化に向けて知見を積み重ね、天然資源への負荷軽減と稚魚の安定確保による計画的な事業運営に努めていきます。

2018年、天然養殖と人工種苗合わせて年間4,400トンの生産量をめざして。

2016年度からは、鹿児島県(奄美)や三重県(熊野)で育てた完全養殖マグロの本格出荷を開始する予定です。

また、今後のさらなる生産力増強に向けて、ブリ養殖場の「アクアファーム」(大分県佐伯市)に、クロマグロ人工種苗専用の養殖場を新たに開設。2015年春、奄美の養殖場で約5kgまで育てた完全養殖の幼魚2,500尾を放ち、育成を開始しました。順調に育っており、2016 年1月末現在、クロマグロは約18kgにまで育っています。2016年度中に、生け簀を増設し、今後50~80kg程度まで育て、2017年より出荷を開始する予定です。

このアクアファームでの生産が軌道に乗る2018年には、マルハニチログループ全体で天然養殖と人工種苗を合わせて国内養殖マグロの約3分の1を占める4,400トンになる見込みです。

マルハニチログループは、これからも、海洋資源の保全を図りながら、日本の、そして世界のお客さまにおいしい魚を安定的にお届けしていきます。

In Focus

品質・海洋資源保全・環境保護・・・
さまざまな観点からの徹底した餌へのこだわり

これまでのマグロ養殖では、日本近海で漁獲されたサバなどの小型魚をマグロの餌として用いてきました。しかし近年、これらの魚の漁獲量が減少傾向にあり、さらには食用として利用されるようになってきたことから、養殖で用いる餌においても海洋資源保全への配慮が求められています。

マルハニチロは、さまざまな種類の魚にビタミンなどを配合した粉末飼料を加え粒状に成形した「モイストペレット」と呼ばれる飼料への切り替えを進めています。また、マグロの品質向上に向けて、協力会社である林兼産業(株)と共同で、栄養バランスの良い配合飼料の開発にも取り組んでいます。2015年秋から利用を開始した改良版の「新型ツナフード」は、おまんじゅうのように中身を薄皮で包み込んだ二重層で成形されたもので、ソーセージのようなフィルムに包まれていた旧タイプに比べてマグロの食いつきが非常に活発になり、消化もしやすくなりました。

配合飼料の利用には、マグロの品質向上はもとより、水質や海底への環境負荷を減らし、流通や保管に必要な輸送エネルギーも削減できるというメリットがあります。今後さらに新型ツナフードに改良を加え、稚魚から一貫して利用していくことで、「配合飼料で育てた完全養殖マグロ」として、海洋資源・環境に配慮したマグロの生産・販売をめざしていきます。

新型ツナフード

給餌の様子


社会・環境

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